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手紙の達人コラム 切手デザイナーインタビュー 玉木 明さん

切手デザイナーインタビュー 玉木 明さん

前回にひきつづき、今回も郵便局(日本郵便株式会社)に在籍する切手デザイナーさんに話を伺いました!今回は、現在5名いる切手デザイナーのうちの主任デザイナー/玉木明さんです。

Q.切手デザイナーになったきっかけを教えてください。

1991年に旧郵政省に技芸官(デザイナー)として入省しました。2013年の今年で23年目になります。

子どもの頃から絵を描くのが好きでした。中学生の頃はバスケットボール部に所属していて、そのユニフォームをデザインしたこともあります。

芸術系の大学に進学後、漠然と将来は広告関係の仕事に就くのかなと思っていたところ、恩師の紹介で現職を知りました。

いわゆる紙媒体のデザインの中で、ポスターや広告、商品パッケージなどのほとんどのものが商用品であるのに対し、切手はそれ自体が有価証券。そういうものはお札のほかにあまりありませんから、そこがおもしろいなと思いました。

これまでに手掛けた切手は400種類近く。主なものに、切手趣味週間、国際文通週間(東海道五十三次シリーズ)、国土緑化、ふるさとのシリーズ、東日本大震災寄附金付切手があります。

Q.長いキャリアの中で、特に印象に残っているのはどんなことですか。

切手デザイナー/玉木 明さん今でこそ年間、十数種類のペースで担当していますが、最初の頃は大変でした。
入省して最初の2年間、コンペ形式でのデザインで4回、惨敗が続きました。描いたものが否定されるのはつらいものです。「なんでダメなんだろう?」「どうすればいいんだろう?」そう悩み、苦しみました。
だから、93年発行の「農業試験研究100年記念切手」で初めて自分のデザインしたものが採用されたときは、本当にうれしかったですね。

その切手はイネの花をモチーフにしたシンプルなデザインなのですが、今見てもとても素直に描かれていると感じます。「採用されたい」「認められたい」といった邪心がすべて取り払われた、悩み苦しんだ末の素直さが表れているようで、このとき何かひとつ胸のつかえが取れたように感じました。

Q.特に思い入れのある切手について、教えてください。

2011年6月発売「東日本大震災寄附金付」切手の画像2011年6月に発売された「東日本大震災寄附金付」切手です。
この切手は3月11日の震災発生後、寄附を募るために、急遽発行が決まりました。
通常2~3ヵ月かかるデザインを1週間で決めなければならない中、何が何でも売れるものにして多額の寄附を集めなければならないプレッシャーと、時間がないという焦り、あれだけの大震災の後、人間にとっていちばん大事なものは何なのかという究極の問いを投げかけられているような気もし、それを表現せねばと、もう無我夢中の状態でした。

制作にあたっては、とにかく「やさしい」「温かい」切手にしたいと思いました。
被災した方々の心の受け皿になるような、究極のやさしさというか、癒しというか、赤ちゃんが食べても大丈夫なくらいだれも傷つけないし傷つかないデザインにしたいと……。
夢中で想いを巡らせていると、ふとペンを持つ自分の手がノートにハートのモチーフを描いていました。それをスキャンした後、色を付けたり重ねたりして花の絵を構成し、最終的に5種類のデザインを仕上げました。

Q.デザインする上で、心がけていることはどんなことですか。

まず自分が欲しいと思う切手をデザインすること。当たり前のようですが、自分で買いたいと思わない切手はデザインしたくないですね。
それから、昔からよく言われている言葉に、「切手は小さな外交官」というものがあります。
どういうことかというと、切手を通してその国の文化や教育や国民性や品格や心の豊かさなどそれら全てが透かして見える、つまり切手は国やわたしたち日本人の名刺になりうるものだということです。

考えてみると、切手のデザインには学校で習うもの全てが含まれているんですね。
日本の風土を表すものも歴史も、文化も、スポーツも、食べ物も、動植物も、芸術や国際交流や乗り物や歌やアニメや、もう本当にありとあらゆるものがデザインされています。
つまり、切手から社会の全てを学ぶことができるんです。
見る人にとって、切手を通して知らなかった世界を知るきっかけになればいい、切手が知識の入り口になればいいと思っています。

*インタビューを終えて

取材途中、玉木さんから、「ニンジンの旬がいつか知っていますか?」と質問されました。わたしは「え? 冬ですか?」と答えたのですが、正しくは秋とのこと。2013年にシリーズ化される「野菜とくだものシリーズ」の話題からこの質問になったのですが、たしかに、知らないことが山のようにある中、切手からその植物や食べ物の旬を知ったり、切手を通して知識が広がったり、何かに興味を持ったりすることは、意外と多くあります。
趣味で俳句をされているという玉木さん。切手デザインと俳句の共通点は、「すべてを言い切らないこと」だと言います。過不足なく端的にデザインすることが切手デザインの醍醐味というものなのでしょう。

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