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手紙ごころ、日々のいろ 第16回 手紙を読書する

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秋から冬へ。部屋でゆっくりと読書を楽しみたい季節が続きますね。
今回は、ちょっと目先を変えて、読書案内です。

手紙の特集なのに読書案内?
じつは、小説、随筆といった読み物のジャンルのひとつに、書簡(=手紙)があります。

「往復書簡」は、二人の筆者による手紙のやりとり。発表することを前提に書かれる場合が多く、手紙の形式をとった対談集のようなものです。

「書簡小説」は、手紙の形式で書かれたフィクションなので、ここでいう書簡とは別のもの。語り口の技法として手紙をとり入れています。

本当に個人的に書かれた手紙を読むことができるのは、「書簡集」です。
古今東西、何世紀も前に生きた哲学者や芸術家から、近現代の文学者まで、多くは没後に発見された手紙が一冊の本に編まれています。

書簡には、作品からは読み取れない、その人の交友関係や暮らしぶりがにじみ出ているので、プライベートを覗き見するような、ちょっと後ろめたいおもしろさがあるのも事実。

たとえば、とても人気のある夏目漱石の書簡集。
漱石はたくさんの手紙を残していて、これほど読み応えのある手紙もなかなかないだろうと思わせるくらいの長文でも有名です。

親友だった正岡子規に宛てたもの、仲間の文学者たちや門下生宛の手紙も多く収められていますが、何度も読み返したくなるのは、留学先のロンドンから妻の鏡子に宛てた手紙の数々。

船旅の途中で初めて出合った異国の風景や、西洋人と日本人の違いについて。
慣れないロンドンでの一人暮らしで身支度をするのも厄介だ、などという愚痴から、
劇場で観た芝居の素晴らしさ、当時の日本人はまだ知らなかっただろうクリスマスのこと(日本の元日のように大事な日、と書いている)など。

勝手な想像ですが、自分が目にしたものすべてを妻にも見せてあげたいという気持ちが書かせた手紙だったのかもしれません。
産後の体の管理や育児について気遣う文面もたびたび見られます。
ときには、返信があまりにもいい加減なのでうんと腹を立てている、という手紙をわざわざ送ったりもしていて、読みながら思わず笑ってしまいそうに。

文豪の意外な一面や素直な心情に触れられる書簡集を読んでいると、
あらためて手紙の温もりを感じます。
漱石の手紙ほどの長文ではなくても、誰かのために手紙をしたためてみませんか。

参考:『漱石書簡集』(三好行雄 編、岩波文庫)

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