2018年8月16日

日本一周自転車旅 仙台-盛岡編

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<前回まであらすじ>
ふと思い立ち、トラベラーズバイクで北へ
向かってみようと旅立ったのが2014年の夏休み。
トーキョーバイクのコンセプトに従い
よりみちしたり、休憩しながらのんびり走ったから、
白河までの180キロで時間切れ。
翌年の夏休みに続きを再開し、3日間かけて
白河から仙台まで走った。
すると何年かかるか分からないけど、
このまま夏休みだけの自転車旅で日本一周を
目指してみるのもいいかな、そんな小さな野望が
頭に浮かんできた。

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一昨年は不覚にも病院で夏休みを過ごすことに
なったし、昨年はみんなで岡山へ旅をしたりして、
しばらく中断していたトラベラーズバイクでの
日本一周自転車旅、今年の夏にやっと再開。
要は他に予定がなかっただけなんだけど。

まずは出発地点の仙台まで18切符で移動。
出発地点が遠くになるにつれて、輪行バッグに入れて
自転車を担いでの移動もだんだん辛くなってくる。
朝8時30分上野発の宇都宮線に乗り、
何度か乗り換えて仙台に着いたのは、夕方16時。
自転車を組み立てると、まずは牛タン定食を食べて
腹ごしらえをして、北へ向かった。
初日は足慣らしということで、古川までの40キロ。
日が沈み薄暗くなってくると、今の東京では
想像できないような冷たく心地よい風が流れてくる。
暗い道を自転車の心許ないヘッドライトを頼りに
なんとか古川までたどり着いた。

思いがけず種類がたくさんあったビジネスホテルの
朝食バイキングで、朝からカレーライスをたっぷり
食べて、8時にホテルを出発。

車が高速でびゅんびゅん走る1桁国道はなるべく
避けてローカルな道を選んでゆっくり走る。
車も人もほとんど誰も通らないのどかな農道で、
ふと思い立ちハンドルにセットしたiPhoneの
小さなスピーカーからお気に入りのプレイリストを
流してみた。
音量を最大にすると、静かにアコースティックギター
のコードストロークが聴こえてくる。
うん、いい感じだ。のどかな田園風景が
異国のカントリーロードのように感じる。

昔に何度も車で通り過ぎていながら
立ち寄ることがなかった中尊寺と毛越寺をはじめて
見物してみたり、温泉に立ち寄ったりしながら、
この日のゴールは北上。

そして、最終日は北上から盛岡までの約50キロ。
足が重くなってくる頃だけど、昼食に盛岡冷麺を
食べるのを目当てに、最後の力を振り絞った。
なんとか12時をちょっと過ぎた時間に盛岡に
たどり着き、汗をたっぷりかいてクタクタの状態で
食べた冷麺は美味しかったなあ。

そんなわけで、コマ切れだけど5年の歳月をかけて
なんとか東京から盛岡までたどり着いた。
次は盛岡-青森かな。
距離は今回とほとんど一緒だけど、
山道が多いから大変そうだな。
で、その次は北海道は後回しにして青森-秋田
だったら夏休み中にクリアできそうか。

生きているうちに達成できるかどうか分からないけど
こんな日本一周の旅も楽しいですよ。


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2018年8月 6日

ハービー・山口さんのトークイベントのこと

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毎年この時期は、お盆前の入稿ラッシュで
みんなてんてこまいの日々を送っている。
来月発行のトラベラーズタイムズもそのひとつ。
取材で急遽岡山に出張したり、原稿を書いたり、
さらにデザイナーの橋本もコンテンツをまとめたり、
レイアウトしたりで、フル回転でがんばっている。
今この時点においては、まだ終わりが見えないけど、
きっとトラベラーズらしい紙面ができあがるはず
なので、ぜひ楽しみにしてください。

そんな中、先週の土曜日は、中目黒の
トラベラーズファクトリーでハービー山口さんの
トークイベントがあった。

ハービーさんは、とても気さくなお話好きの方で
お会いすると、いつも心に響くような素敵な
エピソードとともに楽しいお話をしてくれていたので
トークイベントもとても楽しみにしていた。
この日は、ゲストとして元南極観測隊員で
火星有人探査計画のMA160に日本人として
唯一選ばれた、局地建築家の村上祐資さんにも参加
いただいた。

トークイベントでは、ハービーさんによる村上さん
の紹介からはじまり、前半は南極基地での暮らしや
火星探査計画のための訓練のことなど、村上さんから
貴重な経験を聞くことができた。
常に危険と隣り合わせで、少ないメンバーとともに
閉鎖的な空間で長期間過ごす局地での暮らしは、
僕らの想像を超えるようなストレスがあるようで、
そんな中での悩みや平静を保ち生き抜くコツなど、
経験者ならではのエピソードとともに話してくれた。

村上さんの話を聞きながら、
気になったフレーズがあるとその都度ご自身の
トラベラーズノートにその言葉を書き留めていた
ハービーさん姿も印象的だった。

後半からは、今回ハービーさんとともに写真展を
開催していただいているご子息の大輝さんも参加。
ハービーさんが大輝さんの年齢だった時に、
観光ビザを裏技を使って延長しながらイギリスで
カメラマンになろうと必死で暮らしていた時のこと
などを楽しく心に響くお話をたくさんしてくれた。

自分自身の視点と持つこと、
生きる希望を与えるようなものを作ること、
その時々の出会いを大切にすること、
2時間のトークイベントは、そんな様々な気づきを
与えてながら、盛り上がりとともに終わった。

イベント終了後は、トラベラーズファクトリーの
2階でささやかな打ち上げを行った。
お酒が進んでいくのとあわせて、ハービーさんは
トークイベントの第2ラウンドのように、名調子で
語ってくれた。

飛行機の機長のモノマネからはじまり、
ジェットストリームのDJ風に語ってくれたり、
親交のある福山雅治氏のモノマネとともに
面白いエピソードを話してくれたり...。
僕らはゲラゲラと声を上げて笑いながら、
楽しい打ち上げは終電ギリギリまで続いた。

68歳の大御所写真家なのに、
尊大さのかけらもなく、むしろ謙虚さを感じる
くらいに僕らに気さくに優しく温かく接してくれて、
笑わせながらたくさんの気づきを与えてくれる。

ハービーさんは、トークイベントの中で
68歳で一般的には人生の折り返し地点を過ぎている
はずなんだけど、そんな気はぜんぜんしなくて、
まだまだ挑戦したいことがいっぱいあるんだよね、
と話していた。

きっとハービーさんは今でも、20代の頃に
ジョー・ストラマーに出会って感動しながら、
写真を撮っていた頃と、生きる姿勢はまったく
変わっていないのかもしれない。

49歳の僕にとっては、歳をとったらこんな人に
なりたいと思える憧れの存在がまた一人増えたのも
嬉しかった。
歳をとったら素敵じゃないか。
そう思える存在が身近にたくさんいることは、
まさに生きる希望を与えてくれる、嬉しいことだ。

ハービー山口さんと山口大輝さんの写真展は、
本日8月6日まで。その後、8月7日からは、
トラベラーズファクトリーでは、水縞さんの
イベントがはじまります。
コラボレーションリフィルも登場しますので
こちらもぜひお楽しみに!


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2018年7月30日

我輩はノートである。

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我輩はノートである。名前はまだない。
トラベラーズノートという我々全体を示す名前は
あるようだけど、我輩個体の名前はない。
......我輩なんて使い慣れない言葉を使うと、
そのうちボロが出そうだからやっぱり私でいく。

私の持ち主である男が、なにかの拍子に、
私の体にペンキで「2」という数字を描いてからは、
たまに「2号」なんて呼ばれたりするけど、
呼ばれる方としては、妾みたいでおもしろくない。
そもそも同じ日に生まれた兄弟の黒と茶から、
黒の私を選んだ理由が、私に人気がないので、
自分が使ってたくさんの人に見てもらえれば、
もう少し他の人からも私を選んでもらえるかも
しれないと思ったからだというのも、
なんだか気分が良くない。

それに男が使うようになってからも、
私の人気は相変わらず低く、最近はキャメルや
ブルーなどの後から誕生した弟たちにもすっかり
水をあけられている。
男だって、私を使うのをやめて、キャメルや
オリーブを使っていた時期があったし、
今は仕事で使っているメインのノートは
ブルーに切り替えていて、私は画用紙をセットし
絵を描くためのサブのノートになっている。

だけど、キャメルやオリーブの時と同じように、
そのうち私がメインのノートに戻るような気がする。
一番付き合いの長い私に愛着があるはずだし、
なんだかんだ言ってもやっぱり男は、
私の黒い革の色や手触りが気に入っているのだ。

この男との付き合いは、もう12年になる。
長い間触られたり、あちこち連れていかれたせいで
私の体には、男の汗や脂がたっぷりしみこんで、
ところどころ艶が出ていたりする。
さらに、この男の性格は粗雑で、
雨に濡れた道路の上に平気で私を置くし、
なぜか食事中に私をテーブルに置いて写真を
撮ったりするから、雨にコーヒーやお酒、さらに
食べ物の汁がついて、シミになっていたりもする。
その上モノがいっぱい詰まったカバンに
そのまま無造作に私を放り込むから、
身体中傷だらけだ。

だけど、なぜか男はそんな汚れてくたびれた
私のことを味があると言って喜んでいる。
さらに男だけでなく他の人も、
いい味が出ていますね〜、なんて言ったりする。
私は最初は嫌味か冗談でそんなことを言っている
のかと思っていたけど、
どうやらそういうことでもなさそうで、
本気でいいと思っているらしい。
その影響で、今では私も自分の傷だらけの体を
ちょっと誇らしく思うようになった。

思えば、男とは一緒に世界中いろいろな場所へ
旅をした。
もともと男は旅が好きだったみたいだけど、
私と一緒に過ごすようになってから、
旅をすることが増えていったようだ。
私の生まれ故郷であるタイのチェンマイには
何度も行った。
生まれた時のことはほとんど覚えていない。
だけど、チェンマイの穏やかな空気に触れると、
私の体が喜び、生命力を取り戻してくるのと同時に
懐かしさを感じるのは、やっぱり生まれた時の
記憶が蘇ってくるからなのかもしれない。

去年のアメリカへの旅もそうだったけど
最近は旅に行くと、私の仲間によく出会う。
旅先に、たくさんの人たちが私の仲間を手にして
やってくるのだ。
男は、旅先でそうやって、茶やキャメル、ブルー、
オリーブ、そして黒のたくさんの私の仲間たちに
出会うと、とても嬉しそうだ。
手入れをされてピカピカになっているものに、
かっこいいステッカーで飾られていたり、
あえてなにも飾らずシンプルなままでいたり、
その姿もさまざまだ。
私もそんな仲間たちに出会うのは楽しい。
私の汚れて傷がたっぷりの体が、
私を使う男が粗雑であることで示しているように、
その佇まいがそれぞれの使い手の人柄を
感じさせてくれるのも楽しい。
昔はきれいに手入れしていたり、美しく飾られた
仲間を見ると羨ましく思うこともあったけど
今はあんまり気にしていない。
12年も付き合うと、私も慣れてくるし、
男に対して多少は情が湧いてくるのだ。

ずっと一緒にいれば、楽しい時ばかりではなく、
悲しかったり、辛い時も一緒に過ごしている。
汗や脂、コーヒーや雨水に加えて、私の体には
ちょっぴり男の涙が染み込んでいるのを知っている。

だけど、じっくり紙面に向かって絵を描いて
うまくいったのか、男がニヤッっと笑顔になった
時は私も嬉しいし、
男が私を手にしてどこかへ旅に出ようとする時は、
私だってワクワクする。
そもそも男は粗雑な上に、けっこう自堕落で
ウジウジした性格だから、私がちょっと引っ張り
背中を押してやらないとダメなのだ。

12年経ち、ずいぶん年をとったような気もするけど、
この前みたいに、体に付いているゴムを変えれば
まだまだ問題なく使える。
まあこれからもいろいろあると思うけど、
よろしく頼むよ。


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2018年7月23日

ALPS BOOK CAMPへの旅

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なんだか、この感じ久しぶりだな。
夜の湖畔で、ランタンの灯りのもとで、
みんなで話をしながらそんなことをふと思った。

7月21日、22日に開催したALPS BOOK CAMP
お誘いを受けたのが、2週間前。
準備期間はあまりないけど、その2日間は
たまたまみんなフリーで参加できないこともない。
それに、NAOTの宮川さんやイラストレーターの
落合さん、PAPER SKYのルーカスさんなど、
僕らと繋がりのある仲間も参加しているし、
ここに出ることで久しぶりに彼らとゆっくり話しを
したり、新たな繋がりができるのもいいなと思った。
そして何より湖畔のキャンプ場での本のイベント
というのが面白そうだし、結局参加することを決めた。

そんなわけで、流山工場で荷物を積み込んで、
出発したのは、イベント開催日前日の午前10時。
珍しく少し余裕を持って、出発した。
早めに着いたら久しぶりに松本に立ち寄って、
本屋さんや喫茶店などを巡ってみようと考えた。

快晴の高速道路を快調に飛ばして、群馬あたりを
走っていた頃、急に車のエンジンが止まってしまった。
アクセルもブレーキも踏んでも反応しない。
ゆるやかな下り坂だったので、なんとか路肩に
寄せて、サイドブレーキで車を止めた。
とりあえず携帯電話でレッカー移動を依頼し、
車の中で待つことにした。

昨今の猛暑に、エアコンの効かない車の中。
脇には高速で走る車がびゅんびゅん通り過ぎる。
暑い車内で汗をたっぷり流しながら、
このままイベントに参加できるのだろうか、
と心配になりながらも、結局バタバタしながら
ギリギリで間に合うのかな、と今までの
トラベラーズ的な展開を思い出しながら、
そんなトラブルを楽観的に楽しんでいるような
ところもあった。

1時間ほど待ち、いよいよ体もぐったりした頃に、
レッカー車がやってきた時は、まさに救いの神様
のような気分だった。
暑くて危ない高速道路上で、テキパキと段取り良く
車を荷台に積んでいく様は、かっこよかったなあ。
その後、一番近くのトヨペットに行き、
車を見てもらうことに。そして、祈る様な気持ちで
整備士の方が車を見終わるのを待った。
すると、故障原因を突き止め修理してくれるとのこと。
なんとか旅を続けられそうだ。
どうにもならなかった僕らに救いの手を
差し伸べてくれたレッカードライバーと整備士の方の
プロフェッショナルらしい技と心意気に感動した。
ほんとうに素晴らしいなあ。

それでもレッカー待ちから修理が終わるまで
6、7時間ほどロスをしてしまい、当然、松本を
ゆっくりまわる時間もなく、宿についたのは、
夜遅い時間だった。

翌朝はALPS BOOK CAMP 会場に入り、
無事ブース作りも終えて、イベントがスタート。
本や雑貨にコーヒーなど、様々なブースが
湖畔に集まり、それをお客様がのんびり楽しむ。
ブースの近くにある特設ステージからは
アコースティックの心地よい音楽が聴こえてくる。
想像していた通り、素敵なイベントだった。

夜は、ブースの前にテントを張ってそこでキャンプ。
片付けと設置が終わって、一息つくと、
湖からの涼しい風を浴びながらレトルトカレーと
カップラーメンのささやかなディナーを楽しんだ。
その後、隣のブースのNAOTの宮川さんも加わり、
ランタンのぼんやりした灯りのもとで、
お酒やコーヒーとともに、話は尽きることがなく
続く。

そうそう、この感じ。
これこそ、トラベラーズなんだよなあ。

お客様と話したり、あたらしい仲間と出会ったり、 
トラブルも楽しむくらいの心意気で、
新しい旅先へ向かう。
旅は僕らを甘やかさずに試練を与えるけど、
決して裏切らずに、最後には、喜びや感動ともに
次への道筋を教えてくれる。
そんな僕らの旅の原点みたいなものを思い出させて
くれたような、そんなイベントだった。

足を運んでくれた皆様、
新参者の僕らを快く迎えてくれた他のブースの皆様、
そして、栞日の菊地さんはじめ、素敵なイベントを
運営してくれた皆様、ありがとうございます!


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2018年7月17日

ハービー・山口&山口大輝写真展開催中!

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ハービー・山口&山口大輝写真展の搬入の日。
ハービーさんと大輝さんが、
トラベラーズファクトリーの2階にやってくると、
まずは写真をテーブルにずらりと並べてくれた。

クラッシュのジョー・ストラマーをはじめ、
セックス・ピストルズのジョニ・ロットン、
カルチャークラブのボーイ・ジョージ、
ジャパンのデビッド・シルビアン、
エコー&ザ・バニーメンのイアン・マッカロクに
若き日のU2などなど、写真に写っているのは
みんな思春期の頃からずっと憧れ、聴いてきた
ヒーローたちだ。

カルチャークラブは洋楽を聴き始めた中学生の頃、
FMで「君は完璧さ」がガンガンかかっていたし、
ちょうどその頃ジャパンにはまっていた朝日奈くん
という友人がいて、彼の部屋でそのアルバム
「ブリキの太鼓」を何度も聴いた。
朝日奈くんは、ジャパンのベースシスト、
ミック・カーンの真似をして眉毛を剃って学校に来て、
先生に怒られるくらい、このバンドが好きだった。
今でもたまに「ブリキの太鼓」を聴くと、
彼の4畳半の部屋に射し込む夕方の強い日差しと、
彼の部屋に全巻揃っていたあだち充の「タッチ」を
聴きながら読んでいたのを思い出す。ジャパンの
ダークな音楽とは全くそぐわなかったけど。
ちなみに朝日奈くんとは、中学を卒業してからは
成人式の時に一度会ったきりで、それ以来
会っていない。元気かなあ。

エコー&ザ・バニーメンは、高校時代に
密かに好きだった女の子が大好きなバンドで、
彼女に録音してもらったカセットテープを
繰り返し聴いていた。
その女の子とは結局何もなかったけど、
そのうち、そんなことも関係なくお気に入りの
バンドのひとつになった。

ジョー・ストラマーにジョニ・ロットンは、
今更言うまでもなく、自分の価値観を作るのに
大きな影響を受けたアーティストだ。

ハービーさんは、ほんとうに気さくな方で、
「ジョーはさあ......」なんて感じで、
その時のエピソードを昨日のことのように
話してくれる。
僕はもうそれだけで胸がいっぱいになってしまう。

ハービーさんは大学を卒業すると、
写真家を夢見て就職もしないでロンドンへ行き、
まさに全盛期だったパンクムーブメントや
ニューウェイブの始まりに遭遇する。
そこで出会ったミュージシャンたちの写真や
時代の変化の渦中にいたロンドンの人たちを撮影した
写真をきっかけに一人の写真家として大成する。

駅で偶然出会ったジョー・ストラマーに言われた、
「撮りたいものはすべて撮れ、それがパンクだ」
というエピソードもそうだけど、
ハービーさんは、まさにパンクを体現するような形で
写真家になった方だ。

トラベラーズファクトリーの2階で、
ハービーさんは、それらを包み隠さず、
生き生きとした言葉で僕らに伝えてくれた。
ハービーさんが撮るミュージシャンたちの写真には、
みんな温かな優しさを感じるのだけれど、
きっとそんなハービーさんの人柄が、被写体となる
アーティストたちからの信頼と愛情を得ることで、
滲み出てくるのかもしれない。

今回は、ハービーさんのご子息、大輝さんとの
親子展として開催してるのだけど、大輝さんの
写真もまた今のロンドンの市井の人たちへの
温かな視線を感じさせてくれる。

そんな写真がずらりと並び、
トラベラーズファクトリーの2階が旅と音楽を
感じる空間になっています。
8月4日にはトークイベントを開催しますので、
そちらもお楽しみに。

また、今週7月21日・22日は、長野県木崎湖湖畔で
開催するALPS BOOK CAMPに参加します。
こちらはキャンプ場で、本や雑貨、音楽が集まる
素敵なイベントです。お近くの方はぜひ!


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2018年7月 9日

Global Gathering 2018

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先週は、毎年恒例となっている
海外でトラベラーズノートを販売してくれている
代理店の方々が一堂に会するGlobal Gathering
というイベントがあった。
イギリス、オランダ、フランス、スペイン、
アメリカ、メキシコ、オーストラリア、韓国、
中国、台湾、香港と、総勢11カ国から集まって
くれて、さながら小さな国際会議のような1日と
なった。
さらに、その後も各国の方々との個別の
ミーティングをしたりして、忙しい1週間だった。

現在、トラベラーズノートの売り上げの半分は
海外で計上されている。
それは、トラベラーズノートを使ってくれている方
の半分は日本以外の国に住む人たちということで、
そのため、何かを作ったり、発信したりする時に
日本国内へはもちろん、海外の人たちを意識する
ことは必然になっている。

海外の方と話をすると、もっと英語をしなければ
と思うのだけれど、これらの人たちのおかげもあって
自分の英語力に関わらず、トラベラーズノートは
少しずつではあるけど確実に世界に広がっている。

このようなミーティングで、何よりも嬉しく
誇らしいと思うのが、みんなビジネスとして
トラベラーズノートを販売しながらも、同時に
トラベラーズノートに対し深い思い入れを持った
ユーザーでもあり、その世界を広げることを
とても楽しんでくれているということ。
それは当然販売してくれているお店にも伝わる。
ミーティングでは、深い思い入れとともに
それぞれのお客さんにトラベラーズノートを
伝えてようとしてくれているお店の存在も
共有することができた。

Global Gatheringで大きなテーマになったのは
世界中で少しずつ増えてきている、これらの
トラベラーズノートを愛情を持って販売してくれる
お店を繋げてきたいということだった。

例えば、パリやアムステルダム、マドリッドに
台北、香港、ロサンゼルスにニューヨークなどに
そんなお店があって、そこに行くと、トラベラーズ
ファクトリーのようにオリジナルスタンプがあって、
さらにパリ・バージョンやマドリッド・バージョンの
ようなオリジナルリフィルがある。
また、中目黒マップのように、それぞれの街の
おすすめスポットが掲載されているマップがある。

例えば、日本からトラベラーズノートとともに
旅をしてそのお店を訪れたら、まずはその街を
テーマにしたデザインのリフィルを手に入れ、
最初のページにスタンプを押して、旅の始まりを
そこに記す。そして、ショップオーナーと話を
しながら、行くべきお店や名所を決めたりする。
さらに、お店に集まる、その街のトラベラーズノート
ユーザーとノートの使い方やカスマイズのことを
話しながら繋がり、日本に来た時は、街を案内するよ、
なんて感じでつながっていく。
トラベラーズノートが好きという価値観を共有する
から、そこには同じことに興味を持つ仲間が
自然と集まってくる。

世界中にそんなお店があったら
トラベラーズノートとの旅がもっと楽しくなるはず。
トラベラーズノートと過ごす毎日がちょっと素敵に
なるはず。

そんなことを、世界中から集まってくれた
みんなに話をしていると、目を輝かせて
わくわくしながら一緒にやっていこうと、
応えてくれた。

13年前のちょうど今頃、トラベラーズノートの
原型ができあがった。
それから13年間、トラベラーズノートは
僕らを新しい旅へと導いてくれた。
時には厳しい登り道だったり、前人未到の荒野
だったりして、決して楽な旅路ではなかったけど、
でもその分、たくさんの楽しみと喜びを僕らに
与えてくれた。
そして、トラベラーズノートは、休む暇も与えす、
さらに新しい旅へと僕らを導いていく。
まだまだ旅は終わりそうにない。
とりあえず、もうちょっと英語を勉強しないと...。


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2018年7月 2日

Tokyobike Rentals Yanaka

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連日暑い日が続くと思っていたら
東京では短かった梅雨が終わっていた。
あわせて2018年も半分が終わり7月になっていた。
トラベラーズノート週間ダイアリーを使っていれば、
後半に差し替えることで、半分が過ぎたことをより
実感できる。

あっという間のような気もするけど、
今年の前半もいろいろなことがあったから、
1月のことを振り返ると2、3年前の出来事の
ようにも感じてしまう。

2018年前半の最後の仕事は、
Tokyobike Rentals Yanakaで開催する
トラベラーズファクトリー Pop Up Storeの陳列。
谷中にある創業300年の酒屋だったという
歴史と風格を感じる建物をリノベーションして
できたTokyobike Rentals Yanakaは、
自転車のレンタルショップでありながら、
コーヒーにホットドックなどの軽食に加え、
日本酒も飲むことができるバーカウンターが
あったり、靴やバッグに上質な日用雑貨が
セレクトされたショップにもなっている。
この場所を起点に、トーキョーバイクに乗って
東京巡りをするという素晴らしい1日を提案して
いる。

ここではオープン以来、
お店のロゴを箔押ししたスパイラルリングノート
ペーパーポケットをレンタルしたお客様への
お土産として使っていただいている。
巡った場所のショップカードを入れたり、
感じたことを書き記すことで、より自転車の旅を
楽しくしてほしいというスタッフの方々の思いから
はじまっている。

今回ポップアップとあわせて
トーキョーバイクさんにゆかりがある方々が、
谷中や蔵前などをテーマにイラストを描いたり、
切り絵を貼ったり、写真をポケットに入れて
カスタマイズしたスパイラルリングノートが並ぶ
『留メル展』も開催。
思わず見入ってしまう素敵なノートがたくさん
並んでいる。
さらにウィンドウには、チョークボーイさんが
素敵なイラストを描いてくれている。

この場所がまだレンタルズとしてオープンする前、
トーキョーバイクのキンちゃんこと、金井社長に
ここで自転車のレンタルができるようにして、
さらにバーカウンターや自分たちがセレクトした
商品も販売するという考えを伺った時、
トーキョーバイクさんらしい素敵な空間に
なりそうだなあと聞いていた私たちもワクワクした。
トーキョーバイクのコンセプト、TOKYO SLOWを
東京に住む人のみならず、旅人たちも気軽に体感
できる。
僕らは、かつてACE HOTELで宿泊者用に置いて
あったトーキョーバイクでロンドンの街を走った時
の胸の高まりを思い出した。

トーキョーバイクの自転車は、
いわゆる高級なスポーツバイクではない。
だけど実用本位の低価格の自転車では感じることが
できない、走りやすさや楽しさ、手にする喜びを
存分に感じさせてくれる。

僕がトーキョーバイクを手に入れたのは、
以前コラボレーションを開催した2013年のこと
だけど、あれから5年間、日常を旅する相棒として
毎日の通勤から、輪行しての長距離ツーリングまで
新しい旅をたっぷり味あわせてもらっている。

そんな僕らも愛用する大好きなモノを
作っている場所にトラベラーズノートが並ぶのは
それだけで嬉しいし、今回のポップアップストアで、
そんなトーキョーバイクファンの方や、
海外や地方からトーキョーバイクに乗って
東京の街を走ろうと訪れた方に僕らのプロダクトを
手にとってもられたらなおさらです。
ぜひ、谷中まで遊びに行ってみてください。
遠方の方であれば、自転車を借りての東京ツーリング
もおすすめです。

同じ想いや価値観を共有できる人たち。
ビジネスやお金はもちろん大事だけど、
それ以上に楽しかったり、美しくあることを
大切にしようとする人たち。
自由に誠実であるために、覚悟を持って
たくさんの不自由を背負い奮闘する人たち。
心から尊敬できて大好きだと思える人たち。
僕らの作るものを好きだと言ってくれる人たち。

もう余計なことに惑わされず
それだけに目を向けて進んでいきたいな。
そうすれば、さらにいつか好きになってくれる
かもしれない人たちや、新しい仲間とも出会える
ような気がする。
そんなことを思った、2018年前半の最後の夜だった。


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2018年6月25日

半径2キロの旅

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なんとなくパソコンでネットを眺めていたら
誰かの個人ブログで、旅先としてうちの近所を
散策しているのを書いたページを見つけて、
思わず見入ってしまった。

植木鉢がずらりと並ぶ長屋の玄関口、
その家の窓に吊り下げられるように干してある布団、
商店街のはずれにあるお店の色あせた看板、
路地にかかった踏切を渡る子どもたち。

そこにアップされていた写真は、
僕も朝の通勤時に自転車で走りながら
いつも見ている風景なんだけど、
旅人である撮影者の視点であらためて
自分の住む町を見ることで、新鮮な美しさを
感じることができたし、そこでの暮らしの
愛おしさがが沸き起こってきた。

僕が住んでいるのは、東京の下町で、
曲がりくねった路地が多く、何年も住んでいるのに
適当に自転車で走っていると、迷って知らない場所に
出てしまうことがある。

そんな建物の間を縫うように、
東武亀戸線という2両編成のローカルな電車が走り、
その沿線にうちはある。

木造の長屋に、古くからある町工場や
賑やかな商店街が今でも残っていて、
近くにスカイツリーができたこともあってか、
ここ数年でずいぶんと新しくなった建物も多いけど、
古い建物と新しい建物が渾然一体となった風景が
ちょっとした魅力になっている。

スカイツリーができても、町自体はあまり注目
されることもないから、観光客が歩くことは少なく、
町は相変わらず、静かな下町の風景が保たれている。

そんな自分の住む町をあらためて見てみようと、
晴れた日曜日、自転車で近所を散策してみた。
いつも通り過ぎてしまうお店で立ち止まって中を
のぞいて見たり、袋小路の中まで足を踏み入れて
みたりすると、絵になる風景が多いことに気づく

裏路地の家には、植木や花を賑やかに飾ってある。
紫陽花が咲いているのを見つけた。
だいぶ花の色があせてしまっているけど、
むしろそれがトタンの壁によく似合っている。
隣の家の前には、水槽がいくつも重ねられて
置いてある。
太陽の光をたっぷり浴びて光合成を繰り返している
せいか、すっかり緑色に変色している水槽の中には、
金魚やメダカが元気に泳いでいる。
さらに走ると、トラベラーズファクトリー中目黒と
同じ匂いがする無骨な町工場を見つける。
飾り気がいシンプルなモルタルの壁が美しい。

今でも賑やかなキラキラ橘商店街を抜けて、
曳舟駅を超えて、永井荷風『濹東綺譚』の舞台に
なった玉の井まで足を伸ばした後、
東向島珈琲店でコーヒーとサンドイッチを食べて
しばらく休憩しながら、このブログを書く。
トラベラーズノートに絵を描き終えると、
ふとこの後、押上にある銭湯、大黒湯に行こう
と思い立つ。
まだ明るいうちにそこの露天風呂に入って、
旅気分の贅沢な時間を過ごすのも悪くない。

なんてことない日曜日の午後だけど、
自宅の半径2キロ圏内で過ごす、
こんな休日の午後もけっこう気に入っている。

6月30日より、トーキョーバイクさんが運営する
レンタルバイクを中心としたコンセプトショップ
Tokyobike Rentals Yanakaにて、
トラベラーズファクトリーのポップアップストア
登場します。
ぜひ、この機会に、下町の谷中を起点に
自転車でのワンデイトリップを楽しんでみるのも
おすすめです。
トラベラーズノートやスパイラルリングノートに
絵描きたくなるような素敵な風景にもきっと
出会えるはずです。

Tokyobike Rentals Yanakaのこちらのサイトには
谷中周辺のおすすめスポットも紹介しているので
ぜひご覧になってください。


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2018年6月18日

Radio Ga Ga

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先週、久しぶりにFMラジオを聴いた。

それは、去年読んで感動した小説
「ボクたちはみんな大人になれなかった」の作者、
燃え殻さんが出演する番組で、
深夜にひとり布団に入りながら、イヤホンから
聞こえてくるお話や音楽に耳を傾けていると、
ずっと引き出しの奥にず仕舞ってあったような、
懐かしい感覚がふわっと蘇ってきた。

中学生の頃、よく勉強をするふりをして、
机で深夜ラジオを聴いていた。
今まで聴いたことがなかった音楽に出会ったり、
まだ見たことがない世界のことを知ったり、
ラジオから流れる新しい情報にワクワクしながら
耳を傾けた。
だけど、久しぶりに聴いたFMラジオは、
あの頃僕らがラジオに夢中になったのは、
それだけじゃないもっと切実な理由があったのを
思い出させてくれた。

深夜の誰もいない部屋。
未来には希望よりも不安がたっぷりで、
この先、世の中でうまく立ち回っていく自信なんて
これっぽっちもない。
いつも頭の中には、憂鬱と孤独感が霧のように
漂っていた中学生の僕は、ラジオを聴くことで、
世の中と繋がっているような感覚を得ることができた。

ラジオで話すディスクジョッキーは、
そんな不安や孤独を見下すことなく、
だからと言って解決してくれるわけでもなく、
ただ自分も同じように不安や孤独を抱えながら
それでもなんとか生きてきたから大丈夫だよと
当たり前のこととして肯定してくれた。

そして、リスナーから送られたハガキを紹介する
ことで、今この瞬間、同じ周波数に合わせて
ひとり耳を傾けながら、共感している仲間が
この世界にたくさんいることを教えてくれた。

マイクに向かってディクジョッキーが話している
深夜の閑散としたスタジオの灯り、
寝静まった街の片隅で眠りにつくことも、
外に出かけることもなく、ひとりでラジオに
耳を傾けているリスナーの部屋の灯り。

それらは、北極星とその周りでかすかに光る星座
のように、見えない線でつながっているような
気がした。

今はSNSやLINEなどで、もっと分かりやすく
誰かと繋がることができるのかもしれないけど、
深夜ラジオが感じさせてくれるのは、
ちょっとでも力をいれて引っ張れば切れてしまう
細い糸のような心許ない繋がりだった。
だけどその分、人の温もりが感じられる優しさと
ともに、僕はひとりじゃないっていうことを
教えてくれた。

久しぶりに聴いたラジオで、リスナーに対する
愛情たっぷりの燃え殻さんとアナウンサーの
秀島さんのお話に何度も共感をし、同じように
この国のどこかで共感している知らない誰かの
ことを想像し、中学生だった頃と同じように、
ささやかな希望を感じた。
やっぱりラジオっていいな、そんなことに
あらためて気付かされた。

実は、久しぶりにラジオ番組を聴いてみようと
思ったもうひとつの動機に、FMまつもとという
長野県松本市のコミュニティーFMの番組で、
ボイスメッセージという形で出演するという機会を
いただいたということがあったから。
Hickory Sound Excursionという番組の
パーソナリティの久納ヒサシさんが、
トラベラーズノートのユーザーということもあって、
そんな経験がまったくない私に声をかけてくれた。
もうボイスメッセージの録音は終わっていて、
番組の1コーナーで数分お話して、曲を1曲紹介する
だけなんだけど、ラジオが友達だった僕にとっては
嬉しくて感慨深い体験だったなあ。

そんなわけで、6月21日(木)の19時30分から
FMまつもとで放送するHickory Sound Excursion
にちょっとだけ登場します。
お聞き苦しい点もあるとは思いますが、
お聞きできる方は耳を傾けていただけたら
嬉しいです。
松本市以外の方は、後日こちらのサイトでも
聞けるようです。


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2018年6月11日

生活のたのしみ展に行ってきた

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先週のこと。
「ほぼ日」さんが開催している、
生活のたのしみ展に行ってきた。

実はほぼ日さんとは、以前から何度かお話しを
する機会を持たせていただいていて、
去年の生活のたのしみ展では、
ほぼ日さんのCINE&TRAVELのコーナーで
コラボレーションしたスパイラルリングノートを
販売していただいたりもしている。
その時は、残念ながらちょうどACE HOTELの
イベントと日程が重なり行くことができなかったので、
今回は楽しみにしていた。

この日は、梅雨がはじまったばかりだというのに
見事な快晴で、気持ちの良い空の下にたくさんの
素敵なお店が並んでいて、なんだか海外の蚤の市に
来たようなワクワクした気持ちになった。

それぞれのお店が魅力的なのはもちろん、
お店の人たちも笑顔で楽しそうに説明をしてくれるし
ふと気がつくと、思わず見入ってしまうような
カードマジックがはじまったり、糸井さんも
笑顔でお客さんと写真に撮られていたりして、
多幸感に満ちた空間だった。

トラベラーズファクトリーでもイベントを開催
してくれている、G.F.G.S.の小柳さんやNAOTの
宮川さんも参加していて、久しぶりにお話しが
できたのも楽しかった。

何よりも素晴らしいのは、ほぼ日スタッフの方々で
僕らとほぼ日をつないでくれたHさんは、
日焼けした額に汗をかきながら、それでも笑顔で
会場を走り回っていたし、前回の生活のたのしみ展で
コラボを提案してくれたもう一人のHさんも、
「準備は大変でしたよ、
でもやっぱりお客さんに喜んでもらいたいから、
つい限界までがんばっちゃうんですよねー」
と、笑顔で言っていた。

スタッフ全員が、おもてなしの心と、できる限り
楽しいイベントにしたいという気持ちに満ちている
から、みんな忙しそうに駆け回っているんだけど、
でもそれがとても楽しそう。

僕は、メルヘンのフルーツサンドにコーヒーを
いただき、お目当だった出版されたばかりの本、
「古賀史健がまとめた糸井重里のこと」を買った。

糸井さんといえば、1969年生まれの僕らの
世代にとっては、コピーライターという職業と
ともに知った、時代の寵児のような存在だった。
中学生か高校生だった僕にとって
コピー1行100万円とか1000万円とか言われた
その仕事にまずは驚いたし、
(この本では実際にはそこまではなかったと
言っている)。
さらに、NHKのYOUに、徳川埋蔵金の発掘、
釣りなどでしばしばテレビにも登場し、
まるで遊ぶように仕事をしているその姿を
羨望の眼差しで眺めていた。

そんな糸井さんの名前を再び意識するように
なったのは、ほぼ日手帳の出現だった。
手帳やノートを作る会社で働いた自分にとって、
やっぱりその出現は衝撃的だったし、
素直にすごいなあと思ったけど、
まったく畑違いのところが作った手帳が
大きなヒットを生み出してしまうことに、
それなりに歯がゆい思いをした。

その時に、なんとなく名前だけは知っていた、
ほぼ日のサイトをあらためて読んでみると、
とても面白くてそれからは定期的にチェックする
ようになった。

ちょうどその頃、ポータルサイトとなるのを
目指して、様々な企業が新しい情報サイトを
立ち上げていた頃だったと思うんだけど、
ほぼ日には、それらのサイトとは一線を画す、
人の温もりや、誠実さを感じるようなところが
あって、それが魅力だった。
もちろん今でも、ほぼ日のサイトは定期的に
チェックしていて、最近では、燃え殻さんの
小説をここで知って読んで感動したし、
ついこの前まで連載していた孫泰蔵さんとの対談も
とても共感できることが多くて面白かった。

この本は、そんな糸井さんの少年期から
今に至るまでをライターの古賀史健さんが、
糸井さんの話し言葉のような文体で綴っている。
そういえば、ほぼ日で読むことができる文章は
この話し言葉の文体が多くて、それが読みやすさと
温かさを感じさせてくれて、お昼休みの会社の
パソコンでついつい読み入ってしまう。

この本もまた帰りの電車から家に着いて
お風呂に入るまでの間に一気に読んでしまった。
少年時代からの歴史を語りながら、
その価値観を作るに至った様々な経験を率直に
語ってくれているのが面白い。
そこには、僭越ながらも同じものづくりを生業と
する僕らにとって、金言のようなメッセージが
たくさん詰まっている。

「考えたふり」がいちばんよくないですよ。

ぼくがコピーに求めていたのは「うまい」
じゃなくって、「うれしい」なんです。

手帳もハラマキも、根っこにある動機は
「おれがほしい」ですから。

運命をともにする同士の信頼感、
「沈んだらおしまいなんだ」という緊張感、
だからこそ助け合おうとする心のあり方......

ちょっとだけ引用し羅列させてもらったけど、
これらはすべて僕らもとても共感できるし、
仕事をする上で忘れてはいけないこととして、
心に留めておきたい言葉でもある。

この本では、各章のタイトルが、
ビートルズの曲名になっていて、それがそのまま
その頃の糸井さんの気分を示唆している。
ビートルズ世代の糸井さんだからこその
そんなセンスもまたかっこいいなあと思う。

ほぼ日手帳とは用途も近くて、ともすれば
ライバルみたいな存在として見られることもある
かもしれないけど、糸井さんが見ると、
トラベラーズノートやトラベラーズファクトリーが
どんな風に見えるのか、もしいつかお会いできたら
聞いてみたいな。


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店長のプロフィール

(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。