2017年1月16日

おいしいコーヒーを飲もう

20170116a.jpg


先月のアメリカへの旅では、いろいろな場所で
コーヒーを飲んだ。
以前と比べると、アメリカでもエスプレッソを
出してくれるカフェが増えたけど、
普通のダイナーやグロサリー、ホテルの朝食で
飲むコーヒーは、まさにアメリカンコーヒーと
言いたくなるような、薄めのすっきりした味の
コーヒーが多い。
これを飲むと、アメリカにいるなあと、
しみじみと思うことができる。

映画『バグダッド・カフェ』の冒頭シーンを
思い出す。
ラスベガスとロサンゼルスを結ぶ砂漠地帯に
あるモーテル兼カフェ。
なぜかカフェにとって大事な商売道具である
コーヒーマシンが壊れている。
客からコーヒーのオーダーを受けると、
道端で魔法瓶を拾ったのを思い出し、その中に
入っていたコーヒーを入れて、常連客に出す。
すると、客は苦いと思わす吹き出してしまう。
そして、たっぷりお湯を足して、
うん、これだと言いながら飲む。

その魔法瓶はドイツ人の旅行者が置いていった
もので、アメリカとヨーロッパの文化の
ギャップを感じさせるシーンだ。

ヨーロッパは、濃いエスプレッソが主流。
エスプレッソをお湯で薄めたアメリカーノも
飲めるけど、ドリップコーヒーと比べると
おいしいものでもないし、現地でもちょっと
邪道扱いだったりする。

アメリカの薄いコーヒーも、ヨーロッパの
エスプレッソも、旅慣れてくるにつれて、
だんだんその魅力がわかってきて、
おいしく飲めるようになってくるのだけど、
日本に帰って、深煎りのコーヒー豆を挽いて
ハンドドリップでいれたコーヒーを飲むと、
やっぱりこれがおいしいなあって思うのは、
長年飲み続けているからだろうか。

今週末、アアルトコーヒーの庄野さんが
トラベラーズファクトリーにやってきて、
コーヒーを淹れてくれるイベントを開催する。

いつもイベントの準備が終わると、
オープン前に庄野さんがコーヒーを淹れてくれる。
僕はこのコーヒーが好きだ。
焙煎したての豆で庄野さんが淹れてくれるから
おいしいにきまっているんだけど、
窓から明る光が差し込むトラベラーズファクトリー
の2階で、徳島からやってきてくれた庄野さんと
お互いの近況などを話しながら飲む。
そんな状況が、コーヒーの味をさらにおいしく
させてくれるような気がする。

今回は、徳島のアアルトコーヒーのカフェ14gの
パンやお菓子も持ってきてくれるし、ちょっと
特別なパンを試作中とのことこちらも楽しみ。
ぜひ、遊びにきてください。

昨年『コーヒーと小説』も出版したところでも
あるので、ぜひ、コーヒーを飲みながら、
本やコーヒーの話も楽しんでいただけたら
嬉しいです。

20170116aaa.jpg

2017年1月10日

やっぱり革が好き

20170109a.jpg


4回目の年男を迎えて、いよいよそれが必要に
なったらしい。
最近、急に細かい文字が見にくくなった。
特にノートに細かい字や絵を描こうとすると、
焦点が定まらず、手探りで描いている気分になる。
そんなわけで、お店で見かけて、試しに老眼鏡を
かけてみたら、なるほどよく見える。
旅先だったけれど、そのまま衝動的に購入した。

老眼鏡の場合、常にかけているわけではないので
普段はケースなどに入れて持ち歩く必要がある。
しばらくは、付属品の塩ビ製のケースに入れて
いたけど、やはりちゃんとしたモノが欲しくなり、
いろいろ探してみた。だけど、なかなか丁度良い
ケースを見つけることができなかった。
市販品のケースは、大小さまざまなサイズの
メガネに対応しなければいけないのでちょっと
大きめに作られている。
僕が手に入れたのは、スリムなサイズのメガネ
なので、それらでは無駄に大きなケースに
なってしまうのだ。
そこで、お正月休みに自分で作ってみようと思った。

革は、もちろんトラベラーズノートの革。
メガネのサイズにあわせてカットし、
縫い合わせて、ホックをつける。
2〜3時間革と格闘した後、完成した。
何度も出し入れしたり、触ったりして使い心地を
確かめる。うん、なかなかいい感じ。

当然、自分のメガネにぴったりのサイズだし、
トラベラーズの革だから、使うほどに味もでる。
それだけで、持ち歩いて使うのが楽しくなった。
やっぱり革っていいなあ。

そういえば、トラベラーズファクトリーで発売
したばかりの、文庫用のブックカバーもそう。
もともと本にカバーを付けて読むなんてことは
しれなかったんだけど、トラベラーズらしい
ものができたと、すっかり気に入って、最近は
いつもカバーに付けて本を持ち歩くようになった。
それだけで本を開く時は、トラベラーズノートを
開くような気分になれるし、日々革に味が
出てくるのも嬉しい。
本を読む時間が今まで以上に楽しくなった。

僕らが道具に求めていることって、そんな気分
なのかもしれない。もちろん使い勝手や機能性も
大事だけど、同時に、何かを書き留めたり、
本を読んだり、そんな日々の何気ない行為が
ちょっと楽しくなったり、嬉しくなったりする。
そんな道具に囲まれて暮らしていきたい。
それがさらには、日々の生活や旅をもっと楽しく
素敵にしてくれるのだと思う。

コンピューターやエネルギーの技術革新のように、
僕らの生活や行動に大胆な変化をもたらすような
モノではないけど、ささやかながらも、心に沁みる
温かみや、わくわくするような高揚感とともに、
生活にポジティブな変化をもたらしてくれる。
ノートというアナログのプロダクトを中心に
持つ僕らは、そんな気分をなによりも大切にして
いきたいな。

20170110b.jpg

2017年1月 2日

Happy New Year 2017

20170102a.jpg


昨年10周年を迎え、トラベラーズノートとともに
迎える新年も11回目となった。
(ほんとうは発売の前年にサンプルとして作ったの
を持っていたから12回目なんだけどね)

「10年ひとつのことを持続すればどんな奴でも
まあ、一丁前になる」と吉本隆明氏が言っていた
そうだけど、最近になってちょっとだけ、
その意味がわかったような気がする。

文房具や雑貨などの業界では毎年ほんとうに
たくさんのプロダクトが生み出されている。
そんななか、同じモノが10年以上残っていくのは、
けっこう難しいことだったりする。
そのためには、作り手や、それに代わる誰かが
強い意志と深い愛情とともにそのプロダクトに
寄り添っていくことが大事だと思う。

トラベラーズノートがここまで続いてきたのは、
作り手である僕らだけでなく、愛情を持って
このノートに関わってくれる人たちや使ってくれて
いる人たちがたくさんいたからに他ならない。
もし今、トラベラーズノートが一丁前と呼ばれる
ようなものなれたとするならば、そうやって 
10年もの間たくさんの人たちに愛されて使われて、
鍛えられていったからだと思う。

47歳の僕にとっては、10年はあっという間に
過ぎていったような気がするけど、
10年前には、スマホやSNSはまだなかったし、
今の日本の電気メーカーの劣勢や、逆に日本に
これだけ多くの外国人観光客が訪れている状況は、
想像できなかったような気がする。
なにより、5年前にはあの大震災があって、
今でも多くの人たちに大きな傷を残している。
また、10年の間には、子供がうまれたり、
転職したり、恋をしたり、失恋したり、それぞれの
人生の中で記憶に刻まれて転機になるようなことが
あった人も多いと思う。

そんな中で、たくさんの人たちの生活に寄り添い
続けてきた10年間の歴史こそがトラベラーズノート
の宝であり、他にはまねできないなによりの強みだと
思う。

次の10年に向けて、抱負や展望を聞かれることも
多いけど、今までだって、トラベラーズノートが
導いてくれる流れに身を任せて、風の吹くまま、
気の向くままに直感を信じて進んできただけだし、
これからもそれは変わらないような気がする。
何より作り手である僕ら自身がトラベラーズノートに
飽きることなく、その仕事を楽しむことができたら、
これからも可能性は広がっていくと思っている。
今だって、今年の旅を想像してワクワクしている。

さて、2017年。今年は僕は年男で、偶然、
デザイナーのハシモトも周回違いの年女。
だからというわけではないですが、チーム一同、
いつも以上にがんばりますので、
今年もトラベラーズノートをよろしくお願いします。
それでは、2017年もよい旅を!

20170102cc.jpg


2016年12月26日

路上の旅

20161226c.jpg


サンフランシスコを出る頃に降っていた雨は、
ハイウェイを南に走るにつれて雨足を弱め、
サンノゼを過ぎると、晴れ間が見えてきた。
朝食をとらずに急いでホテルを出たため、
空腹を感じてきた。
ここまで走って、日本の高速道路には頻繁に設置
されているサービスエリアのような休憩施設を
一度も見なかったため、適当な出口でハイウェイを
降りてみる。

すると、映画で見るような、典型的なアメリカの
ダイナーがすぐに目についた。
早速車を止めて中に入った。
映画だと、よそ者が入ってきたな、という感じで
店内から冷たい視線を浴びるんだけど、
だれも僕らのことを気にとめる様子もない。
ほっとしながら、これも映画や写真集でよく見る
直角のボックスシートに座り、メニューを開いた。
僕の中で勝手にパンケーキと並んで、
ダイナーの定番メニューのひとつだと思っている
フレンチトーストとコーヒーをオーダーした。

店内は、きっと普段はそっけないほど飾り気が
ないのだろうけど、今はクリスマスシーズン
ということで、安っぽいツリーと窓に簡単な
飾り付けがされていた。
だけど、そのチープさが逆に、手作りの温かさを
感じさせてくれた。

しばらくすると、南ヨーロッパあたりに
ルーツを持ってそうなガタイのいいマスターが、
コーヒーを持ってきてくれた。
真ん中がくびれているどっしりとしたマグに入り、
味は薄くてさっぱりの正しいアメリカンコーヒーだ。
続いて、厚めの白い皿にざっくりと盛り付けられた
フレンチトーストも出てきた。
キツネ色の焦げ目が付いたフレンチトーストに、
フライドエッグとソーセージが2本添えられて、
ピッチャーには、たっぷりのメイプルシロップ。
さしずめ日本で言えば、白いご飯にお味噌汁、
塩鮭に焼き海苔、そして、生卵が小鉢に入った
朝定食といったところだろうか。
これぞアメリカン・ブレックファストって感じで
僕は思わず笑顔になった。
早速、メイプルシロップをたっぷり注いで食べた。

旅先では、朝食がおいしい。
特に、地元の人たちが日常的に利用するカフェや
食堂で彼らに紛れ込んで食べるのがいい。
ニューヨークでは、小さなデリで食べたベーグルの
サンドイッチが美味しかったな。

さて、お腹を満たすと、再び車に戻り、ハイウェイを
南に向かって走った。
途中何度かハイウェイを降りて、風景を楽しんだり、
コーヒーや食事をとりながら、101号線をひたすら
南へ下った。
アクセルを踏むことで、メーターの走行距離が
増えていき、今いる場所からどこかに向かって、
確実に進んでいく。
まっすぐ続く道を進みながら、やはり旅の醍醐味は
移動にあることをあらためて実感した。

ロサンゼルスが近付くにつれて、陽が沈んできた。
道路灯がほとんどないため、真っ暗の道を
進まなければならなかった。
ガソリン切れのサインが光るなか走り続け、やっと
見つけたガソリンスタンドは、エドワード・ホッパー
の絵のように、ぼんやりと孤独を感じさせる光を
放っていた。
ガソリンを入れ、うんざりするようなトイレで
用を済ますと、再び車を走らせた。

ロサンゼルスに着く頃には、走行距離は640キロに
なっていた。640キロと言えば、東京から徳島まで
の距離とそう変わらない。

ロサンゼルスでは、トラベラーズノートを
扱ってくれているお店のバイヤーが、僕らの到着を
待っていてくれた。
早速、僕らをグラフティアーティストのアトリエに
連れていってくれた。
工場街にある倉庫を改造したアトリエに入ると、
600キロの長い旅の疲れも忘れ、あたらしい出会い
に胸をときめかせていた。

移動して、誰かに出会い、そしてまた移動する。
あたらしい出会いは、さらにあたらしい旅へと
誘い、旅は永遠に終わることがなく続いていく。
トラベラーズノートを手にしてから10年、僕らの
旅は、そんな風に広がってきた。

さて、トラベラーズノート10周年を迎えた今年は、
4月の台湾からはじまり、香港、上海、そして
ニューヨークでトラベラーズカンパニーキャラバン
の旅をすることができたし、さらに、チェンマイ、
北京、アメリカ西海岸へと旅をした。
なんだか夢のような1年だったけど、
皆様にとっても、素敵な旅をすることができた
1年であれば嬉しいです。

あと1週間でまた2017年という、あたらしい旅が
はじまります。
まだ何も書かれていない2017年ダイアリーを
セットをしながら、今年の旅に想いを馳せ、
新しい旅のことを想像する。
忙しい季節に毎年繰り返すこの習慣は、けっこう
好きな時間でもあります。
それでは、皆様よいお年を、そしてよい旅を。


20161226a.jpg

20161226b.jpg

20161226e.jpg

20121226aaa.jpg


2016年12月20日

Merry Christmas 2016

20161220b.jpg


ウェス・アンダーソン監督が制作したH&Mの
クリスマス動画がYouTubeにアップされているの
だけど、これが素晴らしい。

ウェス・アンダーソン監督と言えば、
『ダージリン急行』『ムーンライズ・キングダム』
『グランド・ブタペスト・ホテル』などで知られる
僕も大好きな監督のひとり。
動画では、わずか4分弱の映像で、電車のなかで
おこるクリスマスの素敵なシーンが描かれている。

雪の中を走る寝台列車の窓が開き、エイドリアン・
ブリュー演じる車掌が憂鬱気味に外を眺める。
映像に映るカレンダーが、その日はクリスマスで
あることを教えてくれる。
深くため息をついて、車内放送の用のマイクを
持つと、悪天候と機械トラブルで到着が大幅に
遅れることを乗客に伝える。
それは、本来なら家族や恋人とクリスマスの夜を
過ごすはずだったのが、間に合わなくなってしまう
ことを意味する。
誰かに渡すはずのプレゼントを持って、到着を
心待ちにしていた乗客たちの表情も曇っていく...。

後は、下にリンクを貼っておいたので
実際の映像を見ていただきたいのですが、
最後のシーンで、クリスマスっていいなあと
幸せな気分になれるのです。

ミニチュアの世界のような映像の作りこみ方、
ちょっとおかしな味わい深いキャラクター、
思わず胸がきゅんとなるシーン転換など、
4分弱のコマーシャルフィルムなのに、
ウェス・アンダーソンの世界がぞんぶんに表現
されていて、見終わると、感動するのと同時に
ふつふつと刺激を受けた。

そんなわけで、単純な僕らは、クリスマス間近に、
トラベラーズファクトリーで行われる
tico moonさんのライブでは、2階をいつもより
クリスマスっぽく装飾してみようと思った。

ちょうどサンフランシスコのお店で、
あの映像に出てきたような雪の結晶のモビールを
見つけて、これだと思って購入。
帰国後、お店が閉店するのと同時に飾り付けを
はじめた。
だけど、付けてみたらぜんぜんボリュームが
足りなくて、もっとたくさん買ってくれば
よかったと後悔。
そこで急遽、近くの100円ショップでいろいろ
買い足して、さらに壁にチョークで飾り書体で
メリークリスマスと描いた。
静かなクリスマスソングをBGMに、誰かの笑顔を
想像しながら作業をするのは、思いのほか楽しくて、
あっという間に時間は過ぎていき、終点の時間が
気になる頃にやっと完成した。
最初にイメージしたものとはちょっと違うけど
それはそれで手作りの味わいがあるクリスマスの
空間になったと思った。

その装飾が少しは功を奏したのかは分からないけど、
tico moonさんの素晴らしい演奏で、ライブは、
とてもクリスマスらしい心が温まる素敵な時間に
なった。

tico moonさんの奏でるハープとギターの音色に
うっとりと耳を傾けながら客席の方を眺めてみると、
笑顔だったり、穏やかな表情だったりで、みなさん
幸せそう。
あの日のあの時間にトラベラーズファクトリーの
2階に集まってくれた人たちは、きっとみんな
心温まるハッピーなクリスマスのひとときを
過ごしていたはずで、それをみんなで共有することで、
あの空間に幸せのハーモニーが生まれたような気分
になった。
そして、あらためてクリスマスっていいなあと思った。

あと少しでクリスマス。
トラベラーズファクトリーでは、トラベラーズノート
をはじめ、クリスマスプレゼントにおすすめのモノを
たくさんご用意しています。
クリスマスの日、たくさんの場所で湧き起こる
笑顔のハーモニーのためにささやかなお手伝いが
できたら、僕らも幸せです。

Merry Christmas and Have a nice Trip!


20161220a.jpg


20161220c.jpg

2016年12月16日

アメリカで考えたこと

20161216a.jpg


ブルックリンを歩いていると、イギリスでも
訪れたラフトレードのニューヨーク店を見つけた。
倉庫のような広い店内には、アナログレコードが
いっぱいで、思わず胸をときめかせながら、
棚を見て回った。
1枚1ドルの特価コーナーから、定番の名盤に、
最近リリースした新譜まで、CDよりレコードに
多くのスペースをとっている。
さらに、最近密かにブームになっているという
カセットテープコーナーもしっかりあった。

レコードが復活してきたのを聞いたときには、
一過性のブームのようにも思ったりしたけど、
あれからけっこう月日が経っているし、今では
かなり市民権を得ているのかもしれない。

最近は、Apple MusicやGoogle Play Musicなど
定額の音楽サービスが充実して、それはそれで
便利で素晴らしいことなんだろうけど、
今の気分にあったプレイリストをコンピューターが
揃えてくれるなんてサービスは、音楽好きにとって
最高の楽しみを奪ってしまうものだと思うし、
お店の棚のレコードをぱらぱらとめくりながら、
ジャケ買いでお気に入りの音楽を見つけるのは、
やっぱり最高の新しい音楽との出会い方だ。

僕だってiPodで音楽を聴くし、ダウンロード
サービスもよく利用するけど、同じように
ジャケットを眺めながら、パチパチとノイズが
するレコードに耳を傾ける時間も大好きだ。

アメリカで街を歩いていると、他にも小規模だけど
音楽愛がたっぷり感じられるレコード屋さんを
いくつか見つけることができた。

同じように本への愛を感じられる素敵な本屋さんも
たくさんあったなあ。
アマゾンの本拠地であるアメリカでは、本屋の数は
近年激変しているんだけど、その一方で
街のランドマークのようになっている本屋が
まだいくつかあって、その店内がとても賑わって
いるのが印象的だった。

ニューヨークの老舗書店ストランドブックストアに、
サンフランシスコにあるビートジェネレーションの
聖地シティライツはやっぱり素晴らしかった。
そんな本屋で最も印象的だったのは、ロサンゼルス
にあるラストブックストアだった。
その佇まいから老舗書店だと思って調べてみたら
2011年にこの場所にオープンした新しい本屋で
アマゾンやデジタル書籍によって本屋が滅びる運命
にある時代の流れに逆らって、皮肉をこめて
最後の本屋という名前でオープンしたそうだ。
広い店内を埋め尽くすように本やレコードが
置かれた空間は、まさにアナログのテーマパーク
みたいで、そこにいると、懐古趣味ではなく、
むしろ未来を感じたのが、嬉しかった。

あわせて巡ったトラベラーズノートを販売して
くれているお店にも同じ匂いを感じた。

バークレーにあるキャッスル・イン・ジ・エアは
紙やインク、ペンにクラフトの材料などが、ウェス
アンダーソンの映画のような空間に並んでいるお店。
店主と話をすると、本当に紙や描くことが大好きで
カリグラフィーやペーパーフラワーのワークショップ
を定期的に開催し、その楽しさを伝えているんだと、
熱く語ってくれた。

さらに、ロサンゼルスの最もホットなストリートの
ひとつアボットキニーで、日本のプロダクトを中心に
セレクトし、そのストーリーを丁寧に伝えながら
販売しているトータスジェネラルストア。
スタッフみんながトラベラーズノートユーザーで
その楽しさを愛情たっぷりに伝えながら販売して
くれているバウムクーヘン。
美術館の前の小さな小屋でストンプタウンコーヒー
とともにトラベラーズノートを販売してくれている
パンケーキエピデミックに、日本から出店している
トップドロワーにマイド。

もしかしたら必要なモノを手にいれるだけなら、
他にもっと便利で安く手にいれる方法があるのかも
しれないけど、これらのお店に足を運んで買い物を
することで、他に変え難い体験を得ることができるし、
その物語をより深く知ることができる。
きっとそうやって手にいれたモノはより楽しく
愛情を持って永く使えるはず。
どこも素敵な店だったし、そこでトラベラーズノート
を扱ってくれているのを見てほんとうに嬉しかった。

そういえば、ACE HOTELだってそうだなあ。
快適さや便利さ、価格だけを求めるなら、決して
おすすめできないホテルだけど、他では得られない
特別な体験ができる。
バウムクーヘンの店主がちょっと面白いところに
連れて行ってくれると、案内してくれたピンボール
マシンがずらりと並んだ空間にも同じ匂いを感じた。
1ゲームが当時と同じ25セントだったから、
ついつい夢中になって何度も遊んだ。

メインストリームに逆らいながら、あえて
面倒で手間のかかることをなりわいとする
ちょっと天邪鬼な人たち。
自分たちが好きであることを掘り下げることで
生まれた創造力を信じて、直感を大切にする。
経済性や効率性よりも、自らの仕事に誇りと愛情を
持って、楽しくやり遂げることがモットー。
同じ匂いがする仲間にはすぐに心を開いて
フレンドリーに接し、共感してくれるお客様には、
最大限の敬意を持って接する。
そんな自由を尊重し反骨精神としなやかな優しさ
を持つ人たちが、ゆるやかにつながることで、
新しいムーブメントが生まれようとしている。
そんな空気をさまざまな場所で感じたし、
僕らの仕事のやり方も、そうありたいと思っている。

もちろん、それは広い土地に多種多様な人々が
暮らすアメリカの一部分でしかないし、
むしろ少数派の価値観かもしれないけど、
調和や環境より、利己主義的で経済性を何よりも
重視しようとするように見える大統領がまもなく
誕生する今こそ、その流れはより強くなるの
かもしれない。

久しぶりにアメリカを旅してそんなことを考えた。


20161216b.jpg

20161216c.jpg

20161216d.jpg

20161216e.jpg

20161216f.jpg

20161216g.jpg

2016年12月 8日

TRAVELER'S COMPANY CARAVAN in NYC

20161207b.jpg


ACE HOTELのイベントを無事終えて、
ニューヨークからサンフランシスコへ向かう
飛行機のなかでこの日記を書いている。

シートに取り付けられているディスプレイに
映るマップを見ると、アメリカの真ん中、
サウスダコタの上空を飛んでいるようだ。
窓から見える風景は、雪に覆われた荒涼とした
大地が広がっている中に、ラインを引いたように
道路が通っているのがわかる。
しばらく眺めていると、小さな町らしい家の
集積が見えた。そして、視界から消えると、
またしばらくライン以外真っ白な風景が続く。

ふと、ニューヨークからあのラインをたどって
車で西に向かって走って移動をするのを想像
してみる。ニューヨークからサンフランシスコ
まで、車で移動すると約4,700キロ、1日に
休みなしで丸々700キロ走れば、約1週間の旅。
だけど、今見ているような雪の道であれば、
その何倍かかるのだろうか。

ニューヨークのイベントは、僕らの想像を上回る
賑わいで、あっという間に過ぎた2日間だった。
スパイラルリングノートバイキングはここでも
人気だったし、トラベラーズノートユーザーも
たくさん来てくれて、それぞれのノートを見せて
くれた。

ACE HOTELのロビーは、旅人のみならず地元の
ニューヨーカーもたくさん集まる社交場のような
場所で、そこでさまざまな人たちと話をするのも
楽しかったなあ。

そういえば、コラボレーションリフィルの
素敵なイラストを描いてくれたマイケル・ペローも
2日間とも来てくれて、あの楽しくて自由なタッチ
の絵をライブで描いてくれた。

ACEのスタッフたちも素晴らしい人たちで、
心からノート作りを楽しんでくれたし、
イベントが終わり、軽く打ち合わせをすると、
次はどんなことをやろうかと、お互いに自然と
次のことを切り出してきた。なんだかアメリカに
力強い仲間ができたような気分になった。


ACE HOTELはニューヨークの他に、LA、
ポートランド、パームスプリングス、シアトル、
ピッツバーグ、ニィーオリンズにあるから、
そのいくつかをキャラバンで巡るのも
楽しそうだな。

飛行機の窓をながめると今度は山が続く風景が
見えた。ロッキー山脈の上空に差し掛かったみたいだ。
次の目的地、西海岸の旅についてはまた今度。


20161207a.jpg

20161207c.jpg

20161207d.jpg

20161207f.jpg

20161207g.jpg

2016年11月28日

New York, New York

20161127a.jpg


映画『ブルーに生まれついて』は、
イーサン・ホーク演じるチェット・ベイカーが
ニューヨークの名門ジャズクラブ、バードランドで
演奏をするシーンからはじまる。
すでに西海岸では人気絶頂であった彼が、
ニューヨークに進出し、ジャズの聖地で緊張した
面持ちで演奏を行う姿が印象的に描かれている。
そして、薬に溺れてシーンから消えた後、
西海岸で演奏を重ね、復活のチャンスを掴もうと
向かう先もまたニューヨークだった。

ビートルズが世界的なバンドになっていく過程を
その時代背景とともに描いたドキュメンタリー映画
『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』では、
熱狂的なファンが迎えるなかで、メンバーが
興奮しながらパンナム機を降りて、ニューヨークの
JFK空港に降り立つ姿が描かれている。
イギリスの国民的なバンドから世界のビートルズへ
の移り変わりを感じさせる印象的なシーンだ。

最初にニューヨークのイメージを印象付けたのは、
子供の頃に見た『アメリカ横断ウルトラクイズ』
かもしれない。
「ニューヨークへ行きたいかー!」という掛け声
とともに、後楽園球場をスタートをして、
クイズをしながら、グアム、ハワイ、西海岸と
ニューヨークを目指して進んでいく。
当時はまだ海外旅行は夢のようなことだったから
アメリカの旅を疑似体験するように見ていた。
最後の決勝戦がニューヨークのパンナムビルの
屋上で、摩天楼を見下ろしながらヘリコプターで
降り立つシーンを興奮しながら見ていたのを
思い出すなあ。

ボブ・ディラン、ルー・リード、ラモーンズ、
パティ・スミスに、テレビジョン。
アンディ・ウォーホルに、キース・ヘリング。
CBGB、ヴィレッジ・ヴァンガード、
アポロ・シアターに、ブロードウェイ。
グレート・ギャッツビー、ゴット・ファーザー
ライ麦畑でつかまえて。

やっぱりニューヨークって今も昔も何かを
掴もうとする人たちが憧れて目指す特別な場所
なんだ。
もちろんそこで何かを掴むのは簡単ではないけど、
あらゆる人たちにいつでも門戸を開き、可能性を
与え続けている魅力的な都市で、世界中の人たち
を魅了する何かが生まれ続けている。

そのニューヨークで、しかもACE HOTELで
もうすぐトラベラーズのイベントが開催される
なんて、なんだか夢のようだなあ。

今回、ACE HOTELとのコラボレーションで
ニューヨーク在住のイラストレーター、
マイケル・ペローさんが描き起こしてくれた絵を
使用したノートリフィルを作っている。
味のあるタッチで、ミュージシャンや俳優を
モデルにしたニューヨークを歩く人たちが
描かれているのだけど、彼の絵を最初に見た時、
まさにニューヨークだって思った。
ルー・リード『ワイルドサイドを歩け』の
世界のように、描かれているすべての人たちが、
胸を張って覚悟とともに、自由に表現をして、
自由に生きているのを感じた。

大統領が変わっても、アメリカは今まで同様
世界で最も自由を尊重する国であってほしいし、
ニューヨークは世界中の人にチャンスを与えて
くれる都市であってほしい。

トラベラーズノートは、だれもが自由にその人
らしく使えるノートだと思うし、だからこそ、
それがニューヨークでどんな風に受けとめて
もらえるのか楽しみでしょうがない。


20161127b.jpg

20161128a.jpg


2016年11月21日

仕事や表現と生きること

20161121a.jpg


僕の好きなミュージシャンのひとり、
レナード・コーエンが今月、82歳で亡くなった。
死の直前にはニューアルバムをリリースしていて、
「死ぬ準備はできている」なんて潔く語っていた
直後の死だった。
そういえば、デヴィッド・ボウイもすばらしい
アルバムをリリースした直後の死だった。

テレビで宮崎駿氏のドキュメンタリーを
やっていたんだけど、70代になり体力の衰えに
引退を決意していた彼が、
「途中で死んでも、何もしないで死ぬより、
やっている最中に死んだほうがましだよね」
と再び作品作りをはじめる姿は、かっこよくて
とても勇気付けられるものだった。

トラベラーズノートユーザーでもある脚本家の
倉本聰さんは、81歳を迎え、今年の1月に
最後の演劇演出と言って『屋根』を公演したけど、
また同じことを言って、来年『走る』を公演する
とのこと。
きっと嘘を言う気なんてさらさらなくて、ほんとうに
そんな気持ちでやっているのが現実なんだと思う。
最後だからと今年公演を見に行ったんだけど、
今それが嘘になったことを僕らは素直に喜んでいる。

彼らにとって、仕事や表現は生きることと同義で、
そんな彼らが文字通り命をかけて作る作品は、
美しく感動的だ。
歳をとるにつれて、発想力や創造性が鈍ってくる
なんてことを言う人もいるけど、彼らを見ていれば
そんなことはまったく根拠がないことが分かるし、
長年の経験に基づく生き様が刻まれていく美しさは、
むしろ歳をとらないと表現ができないもの。
もちろん、若さゆえの瑞々しさや無知ゆえの自由が
生み出す素晴らしい作品もあるし、要はどちらにも
それぞれの違った良さがあるということ。

これから高齢化社会を迎えて、労働人口が減るとか
年金の受給が遅れるとか、考えなければいけない
問題がいろいろあるけど、例えば、ある程度
歳をとった人が、ものづくりや料理、サービスなど
得意のなことを小さなビジネスとしてはじめやすい
世の中になっていくといいなと思う。

ジャズ好きのおじさんのレコード屋さん、
とても手をかけて作られたジャム屋さん、
かつて海外で働いていた人による英会話教室、
子供が家を出て余った部屋を利用したミニ旅館、

それらは、ちょっと不便な場所にあって、
例えば週に3日くらいしかあいていなかったりする。
だけど、好きゆえに効率性を無視した手間が
かかっていて、好みが合えば他にない良さがあるし、
同じものが好きな人同士だから、店主とお客さんの
気持ちが通じ合いやすい。
そんなローリスク・ローリターンで
ハイスピリットのスモール・ビジネス。

長期的な成長戦略なんて考える必要はない。
自分が得意で好きなことを、自らの表現として
誇りを持ち、できることを最大限に丁寧にやり遂げる。
目先の効率よりも、受け手の喜ぶ顔を本気で想像する。
そんなお店が、地方のシャッター商店街や下町の長屋
なんかに、ぽつぽつある。
廃校になった小学校に集めて、大資本のそれとは
まったく違うショッピングモールを作っても面白そう。
そこに、誇りに満ちたかっこいいおじさん、おばさん、
おじいちゃん、おばあちゃんがたくさんいれば、
若い人たちにもいい刺激を与えられると思う。

自分の仕事に誇りと愛があり、
仕事を生きがいとしている人は、なぜかちょっと
変わっている人が多いけど、話をしていても楽しいし、
かっこいい。
僕らと一緒に仕事をする仲間にもそんな人たちは
たくさんいて、彼らを仕事をすると、僕らも刺激を
受けるし、なにより楽しい。
レナード・コーエンを聴きながら、そんなことを
考えていた。それにしても、かっこいい80代だな。
こんな風に歳をとりたいな。

話変わって、ただいまトラベラーズファクトリーでは
チェット・ベイカーの映画『ブルーに生まれついて』
公開を記念した展示
を行っています。
LETTER8さんの看板文字やReclaimed Worksさんの
フレームで、チェット・ベイカーらしい、かっこいい
展示になっています。
チェット・ベイカーもまた命を削って、
あの儚くて哀愁がただよう美しい音楽を作り出して
きたミュージシャン。
映画では、イーサン・ホークが素晴らしい演技で
チェットに漂うブルーを表現しています。
映画は、11月26日より、Bunkamuraル・シネマ等で
公開します。ぜひ。


20161121B.jpg

20161121aaa.jpg

2016年11月14日

コラボレーションのこと

20161114a.jpg


嬉しいことに、トラベラーズファクトリーに、
日本の各地や、海外から来てくれる方が増えている。

東京メトロ東急ハンズ、池袋にあるホステル
BOOK AND BED TOKYOと、ここ1ヶ月で
あたらしいコラボレーションのリリースが続いた。
偶然、そのどれもが東京を旅する人たちとって
縁があったり、おすすめの場所だったりする。

これらのコラボレーションによって、
トラベラーズノートを手に東京にやって来た旅人が、
東京メトロに乗って東京を巡ったり、東急ハンズの
店内を探索することがもっと楽しくなれば嬉しいし、
BOOK AND BED にもぜひ泊まって欲しい。
どれもトラベラーズノートを使っている人だったら
絶対に楽しい場所だし、それらを僕らの最も得意な
表現方法である、ものづくりを通じて紹介できる
のがなによりも嬉しい。

僕らがコラボレーションを行うのは、
共感していたり、憧れていたりする人やモノと、
一緒にものづくりをすることで、刺激を受けたり、
トラベラーズの世界が広がっていくのが楽しいから。
あまり計画性がなく、偶然の出会いとか、イベント
などのタイミングでリリースが決まる。
例えば、今回は東急ハンズさんは40周年記念、
BOOK AND BED TOKYOさんは1周年にあわせて
取り上げていただき、リリースが重なった。

コラボレーションやイベント限定アイテムみたいな
プロダクトは、僕らにとって不定期にリリースする
臨時増刊号やミニアルバムみたいなもの。
定番とはまた違った楽しさもあると思うので、
お気に入りのタイトルがあれば、ぜひ手にとって
みてください。

東京のおすすめの場所といえば、実は今、
同じ中目黒にあるtokyobikeさんと一緒に
中目黒のマップを作っている。
僕らがよく利用させていただくレストランや
好きなお店をご近所さんとして紹介できるような
モノになればいいなと思っている。

また、公式サイトのあたらしいコンテンツとして、
トラベラーズノートを大切に販売してくれている
世界各地のお店を紹介するページも制作中で、
お店の情報とあわせて、その町の店主のおすすめ
スポットも掲載する予定です。
最初は海外のお店が中心になるけど、
日本各地にもトラベラーズノートを愛情を持って
扱っていただいているお店はたくさんあるので、
少しずつでも、そういったお店や、その近所の
おすすめの場所を紹介していきたいと思っています。
いつ出来上がるのかは、まだ発表できる段階では
ないですが、気長にお待ちいただけたら嬉しいです。

そして一番直近で発表したのが、
ACE HOTELとのコラボレーション企画第2弾。
コラボレーションアイテムの製作とあわせて、
トラベラーズカンパニーキャラバンをニューヨーク
のACE HOTELで開催します。
大統領が変わり、不穏な空気が流れて、なんだか
不安もたくさんありますが、あのニューヨークで
イベントとなれば、やっぱり心が震えきます。
その話は、またあらためて。


20161114bb.jpg

2017年1月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

アーカイブ

店長のプロフィール

(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。