先日香港について書きましたが、
トラベラーズノートにとっても香港は特別な場所。
トラベラーズノートの企画が始まって、
そのプランを煮詰めていくなかで、その佇まいから
連想させていく世界観を作り込んでいく必要性を
強く感じていました。
ノートの機能性や品質以外に、
それを手に持つだけで自由な気分になったり、
表現をしたくなったり、気分が高揚するモノで
ありたいと考えていました。
たまたまトラベラーズノートとは関係のない仕事で
香港に行った時、いつものように街をぶらぶらし、
お気に入りの場所のひとつである重慶大厦に
入りました。
前にも書いた通り、ここは安宿が集まったビルで
1Fと2Fは、そこに集まってくるインド人向けの
レストランや雑貨屋さんがあります。
薄暗いビルの中、スパイスの匂いやインド音楽が
流れる妖しげな雰囲気が好きで、その時も一人で
カレーでも食べようと食堂の席に座りました。
カレーを待つ間、
ふとまだ試作段階のトラベラーズノートを取り出し、
テーブルの上に置きました。
すると、トラベラーズノートの佇まいが
その空間に溶け込み、深い存在感を放ち始めました。
思わず、バッグの中からカメラを取り出し、
シャッターを押しました。
出張から帰ると、その写真をパソコンで開き、
モノクロにしてみました。
すると、ロバートフランクの写真集のように、
何かを訴えかけるようなメッセージを感じました。
それを見て、これだ!と思ったのです。
世界中の旅人が集まる香港の重慶大厦。
一歩外に出ると、国際都市の中心地の華やかな
風景が広がる古いビルの中で、地元の人は
あまり足を踏み入れることがない場所。
崩れかかった壁やパイプが剥き出しになった天井。
きっと出稼ぎで来ているであろう他のテーブルに
座るインド人たちの挑発的な強い目線。
ぶっきらぼうな感じで出されたインドのパンは、
日本のインドレストランで出される発酵させた生地
でふんわりと膨らむナンではなく、インドでよく
食べた、味気ない薄く平たいチャパティ。
写真から醸し出す風景はリアルで、旅の途中の
緊張感と開放感を同時に感じさせてくれ、そこに
佇むトラベラーズノートは、何かを喚起している。
それを眺め、メインコピーを作り上げました。
イメージは、ジャック・ケルアックや
アレン・ギンズバーグのビートジェネレーション。
写真にその言葉を当てはめたとき、
トラベラーズノートの世界観の生まれ始めました。
頭の中には、トム・ウェイツの音楽が流れ、
昔、インドの旅から持ち帰った紙くずやメモが
入っている箱を取り出し、トラベラーズノートに
貼付けていきました。
それは、自分の歴史をひも解いて、
トラベラーズノートという土台に積み上げていく
ような行為でした。
その時に第一に考えたのは、自分が本当に
感動したり、共感したリアルなことだけを
抽出すること。
そして、そんなことをしながら、今までに
経験したことがない楽しさを感じ始めました。
チェンマイで生まれたトラベラーズノートが
香港でその世界を作るきっかけを得ることが
出来たのです。

