ストーリー
トラベラーズ ストーリー
トラベラーズノートが伝えたいのは、旅するように毎日を過ごして欲しいということ。
旅人の視点で見つめることで、なにげない日々の出会いや風景の中に新しい発見や感動を見つけることが出来ます。
ここでは、トラベラーズノートを携えて旅をする中で出会ったモノ、コト、ヒトについてのストーリーを綴っています。
006 トルコ サフランボル旧市街

中学生の頃、自分の周りではまだ海外旅行をする人はほとんどいませんでした。
そんな時代だったので、友人の家で見つけたJALの機内誌は、海外の匂いを感じさせてくれる珍しいものでした。
友人の父親がアメリカ出張に行った時に持ち帰ったという、その機内誌を読み漁っている私に、友人はあっさりそれを譲ってくれました。
英語と日本語が半分づつになっている構成、巻末に載っている航空路線図などが海外への憧れを煽り、ぼろぼろになるまで、何度も読み返しました。
その冊子で最もページを割いて特集されていたのがトルコでした。
東洋と西洋が融合する街イスタンブール。スターウォーズに出てきそうなカッパドキアの荒涼とした奇岩群の風景。日露戦争以来親日家であること。
読み進めるうちに、トルコは行きたい国ランキングの上位に浮上していきました。
実際にその国を訪ねることが出来たのは、それから10年後のことでした。
イスタンブールから400キロほど東にあるサフランボルは、トルコで最も印象に残った街です。
世界遺産に登録されているその街は、オスマン朝時代からの伝統的な町並みが残っている小さく静かな街です。そこに着き、一人で街を歩いていると、小さな男の子が手招きしてきました。それは、とても自然なしぐさで、観光地特有の商売っ気をまったく感じさせません。
こちらも自然と彼に付いて行き、たどり着いた場所は街が一望できる小さな丘の上でした。
名所という感じの派手な場所ではありませんが、きっとこの少年はここから街を眺めるのが好きなんだろうなと思わせる素敵な眺望でした。
お互い言葉が通じない上寡黙な少年で、2人でだまって街を見下ろしていましたが、とても気持ちのいい時間を過ごすことが出来ました。
お礼にチョコレートの封を切ってあげようとしましたが、決して彼は食べようとしません。
後で分かったのですが、そのときはラマダン(断食期)でイスラム教徒は日中にものを食べることは出来なかったのです。
この街にいた数日の間に同じような経験を何度もしました。次の日は女の子が、古い旧家の中を案内してくれたのです。
歩き疲れると、チャイハネという紅茶を飲む喫茶店でお茶を飲みながらよく休みました。
帰り際にお金を払おうとすると、お店の人が自分の目の前に座っている老人のほうを見ながら目配せをし、「代金は彼からもらっているよ」というような仕草をします。
その老人とは相席をしているだけで一言も言葉を交わしていないにもかかわらず、気付かないうちにお茶代を支払ってくれたのです。
ありがとうと言いながら頭をさげると、軽く目で相槌を打ちました。そんな老人を見て実にかっこいいなあと思いました。
旅先で出会うそんな小さな優しさは、美しい風景よりも深く記憶に残ることが多いです。
自分もそんな風に自然に、さりげなく優しさを表現出来るのが理想ですが、まだまだ未熟者のためその道のりは遠いようです。
The old town of Safranbolu
Kaymakamlar Muzesi Alti Safranbolu, Turkey
