ストーリー
トラベラーズ ストーリー
トラベラーズノートが伝えたいのは、旅するように毎日を過ごして欲しいということ。
旅人の視点で見つめることで、なにげない日々の出会いや風景の中に新しい発見や感動を見つけることが出来ます。
ここでは、トラベラーズノートを携えて旅をする中で出会ったモノ、コト、ヒトについてのストーリーを綴っています。
009 スペイン セビーリャ ホステリア・デル・ラウレル

スペインのセビーリャ駅を降りて、泊まる場所を探すために街を歩き回っていると、旧市街の路地裏に素敵なレストランを見つけました。
その奥は小さなホテルになっていて、値段を聞いてみると予算を少し超えていましたが、そのレストランに惹かれ泊まることを決めました。部屋に荷物を降ろし早速レストランへ。
白壁の小さな建物の前がオープンテラスになっていて、石畳の上にテーブルが並べられています。
テラス側に席を取ると、ピンと張った真っ白のテーブルクロスに太陽の光が眩しく差し込んできました。
夜7時をまわっていましたが夏時間のためまだ明るく、周りに座っている人達も始まったばかりの長い夜をゆっくりと楽しもうという感じで食前酒を飲んでいます。
夏の暑い日差しがようやくおだやかで優しい夕暮れに変わってきた頃、パエリアが運ばれてきました。
愛想の良いウェイターが熱くなった鉄製のパエリア鍋から皿に取り分けてレモンを添えてくれます。
サフランライスの焦げた香ばしい匂いとレモンの酸っぱい香りが目の前に広がりました。
ビールを飲みながら、料理を楽しんでいると、ギターを手にした弾き語りの流しがやって来て、それぞれのテーブルの前で歌を1曲づつ歌い始めます。
こちらのテーブルの前にやってくると帽子をとって一礼し、哀愁を感じるギターの旋律と情熱的な歌声を聴かせてくれました。
「グラシアス(ありがとう)」と覚えたてのスペイン語で言いながら、ぎこちなくチップを渡し、心地よい気分で食事を再開しました。
日本に帰ってからも何度かパエリアを食べましたが、セビーリャで食べたときの感動はありませんでした。
旅先で食べたその土地の料理を日本で食べて、物足りなさを感じることはよくあります。
味は同じ材料と作り方で再現することが出来ますが、その土地の空気感や雰囲気をまったく同じにすることは出来ません。
食事は、味覚だけでなく五感すべてで味わうものなのかもしれません。
あの時食べたパエリアの味は、乾いたスペインの空気、セビーリャの歴史ある街並み、スタッフの温かい対応、流れる音楽、さらに、そのときの自分の気分や一緒に食事した相手など様々な要素と重なって、記憶に残っています。
そのすべてを再現する事など有り得ないでしょう。
そういったことを考えながら毎日を過ごしていると、今この瞬間もまた二度とないかけがえのないものに思えてきます。
そんな風に毎日を過ごしてみたいものです。
Hostería del Laurel
Plaza de los Venerables, 5, Sevilla, Spain
