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手紙ごころ、日々のいろ 第3回「手紙のおしゃれ」

手紙ごころ、日々のいろ 第3回「手紙のおしゃれ」

暦のうえでは、もう春。
卒業、転職、引越しなど、なにかしら人生の節目を迎えようとしている人も多いでしょうか。
お祝いの言葉を送ったり、近況をお知らせしたり、そんなときには手紙の出番です。
あらたまった形式的な文面だけでは素っ気ないので、すこし粋な演出で、印象深い手紙を出してみませんか。

日本人は、昔から手紙のやりとりに趣向をこらしてきました。
源氏物語の梅枝(うめがえ)の巻に、手紙にまつわるこんな場面があります。

二月、明石の姫君が成人するための準備をすすめる光源氏のもとに、朝顔の君から、花の咲き終わった梅の枝につけた手紙とお香が届きます。手紙には、薄い墨で和歌がしたためられていました。

花の香は散りにし枝にとまらねど うつらむ袖に浅くしまめや
(花の香りは、散ってしまったあとの枝には残っていませんが、お香を焚きしめた着物の袖には深く残るでしょう)

「枝」は、もう若くはない朝顔の君。「袖」は、これから節目のお祝いを迎える明石の姫君のことです。
和歌そのものもさることながら、それを本物の梅の枝と一緒に届けるという演出が、なんとも洒落ています。

平安貴族のあいだでは、手紙に直接お香の香りをうつしたりもしていたそうです。
梅の枝に手紙をつけて送るのはむずかしいけれど、たとえば落ち葉を一葉同封したり、押し花を添えるくらいなら真似できそうです。

そして、お香を焚いて香りをうつさなくても、文香という手紙に添えるためのお香がありますし、アルメニアペーパーのような紙香をいれたり、香りつきのインクを使って書いてみてもいいですね。
封を開けたときに、ふわりと香る手紙。ちょっとしたサプライズにもなり、喜ばれるのではないでしょうか。
季節や送る相手によって便箋や切手を選ぶのはもちろん、香りにまで心を配ることができれば、手紙のおしゃれ上級者です。

伝える手段は言葉だけとはかぎりません。その言葉に、さらにほんの少しの思いを重ねられるのは、メールにはない手紙だけの特権ではないかと思うのです。

文/ 黒澤 彩


													

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