2020年8月11日

銭湯で旅ごっこをする

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会話の中やアンケートなどで、
「行ってみたい旅先はどこですか?」と
聞かれることがある。
そんな時は、なんとなく行ってみたいと
思っている場所を適当に答えるのだけれど、
まだそこへ行っていないということは、
どうしても行きたい場所ということでも
ないんだろうな、とも思ったりもする。
よくよく考えてみると、優柔不断な僕は
ここへ行きたいと強い意志を持って行先を決めて
旅をするより、会いたい人がいるからとか、
ちょっとした用事があるからとか、そんな理由で
必然的に旅先が決まる方がいいと思っている。
もっと言えば、風の吹くまま気の向くままに
行先を決めずに旅をして、知らない駅で降りて、
ただ映画を見たり、古本屋とかレコード屋を
巡ったり、目に留まった喫茶店に入って
コーヒーを飲みながら本を読んだりする、
というような旅に憧れている。
つまりどこかへ行くというよりも旅をしている
状態が好きなのだ。

まだ旅が自由にできなかった子供の頃、
旅ごっこという遊びをしていた。
ひとつの道をひたすらまっすぐ進んで行き、
適当なところで引き返して帰ってくるだけの
遊びなんだけど、迷子にならずに未知の場所に
行くことができる。
母親に用意してもらった水筒を肩からかけたり、
途中で食べるおやつを持っていったりして、
旅気分を味わいながらを知らない場所を歩くのは
けっこう楽しかった。
今まで訪れたことがない公園を見つけると、
秘密基地を新発見したような気になって、
そこでおやつを食べたり、遊んだりした。
自転車を手に入れると、旅の範囲は飛躍的に
広がって旅ごっこはますます楽しくなった。
はじめて東京から千葉にたどり着いた時には
国境を超えたような気分になった。
あの頃、ごっこ遊びをしながら、子供心に
自然と旅が醸し出す高揚感とか自由な心持ちを
楽しんでいた。

あれから何十年も経って予期せずやってきた
自由に旅をすることが憚られる休日。
近所にいくつかある銭湯を頭に浮かべて、
今日はどこに行こうかと頭を悩ませる。
自転車に乗って家を出ると、途中本屋に
立ち寄り、お供となる本を手に入れる。
暑いから喫茶店に立ち寄ってちょっと休憩。
冷たいアイスコーヒーで喉を潤す。
銭湯に着くと、汗を流してまずはサウナ。
水風呂で体を冷やすと、縁側の脇の椅子に座り、
夕暮れの庭から流れてくるそよ風を浴びながら、
ゆっくり本を読む。気持ちいいなあ。

ふと子供の頃の旅ごっこを思い出して、
ここが旅先だったらと想像してみた。
例えば、鹿児島とか秋田のような九州や東北の
地方都市を旅して、その町で見つけた銭湯に
入っている。
ゆっくりお風呂につかったら、番台におすすめ
の赤ちょうちんでも教えてもらって、そこで
土地の名物をつまみに軽く一杯やりながら
夕飯をとろう。
それからほろ酔い気分で、新品の畳の匂いが
する宿の部屋に戻る。ぱりっとノリの効いた
シーツがかかった布団の上で寝っころがって
読みかけの本を読んだりしながら、明日はどこへ
行こうかとぼんやり考えたりする。
旅と日常の境はグラデーションがかかったように
ぼんやりとして、今ここが旅先のような気がした。
だけどやっぱり本当の旅をしたいなあ。

そんな中、京都にまつわるちょっとした計画が
進行中なので、京都を旅できない方は楽しみに
していただけると嬉しいです。


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2020年8月 3日

今年の夏はいつもと違うから

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先週は急に立て込んできた仕事の合間を縫って、
9月に発行予定のトラベラーズタイムズの原稿を
ちょこちょこ書いていた。

きっと皆さんも同じだと思うけれど、
今年の春から夏にかけて、以前から計画していた
予定の多くが中止になったり、延期になったり、
形を変えざるを得なくなったりした。
開催を予定していた海外のイベントは、
今ではいつかできたらいいなと思うような、
漠然とした将来の夢みたいになってしまったし、
進めることができずに道半ばで頓挫している
計画もたくさんある。

今回のトラベラーズタイムズも、当初は
トラベラーズファクトリー京都のオープンも
あるし、京都や日本の旅をフィーチャーした
ものにしようと考えていたけれど、
今この状況でリアルな旅をテーマにするのは、
なんだか空々しくて現実感が伴わないような
気がして、内容を変更をすることにした。
そして想像の旅が新たなテーマに決まった。
まだどんな風に仕上がるか分からないけれど、
これはこれでトラベラーズらしいテーマに
なったと思っている。

そもそもトラベラーズの世界は、妄想から
はじまったようなところがある。
トラベラーズタイムズは、トラベラーズの
ニュースペーパーがあったらどんなものだろうと
いう妄想をきっかけに作りはじめたし、
トラベラーズカフェを妄想し、流山工場の食堂に
1日だけのカフェを作ってみたり、架空の航空会社
トラベラーズエアーを妄想し、機内グッズを作る
ようにプロダクトを作ったりもした。
トラベラーズファクトリーだってトラベラーズ
の基地を作りたいという妄想がはじまりだった。

トラベラーズノートを手にした時に、
なぜかそういった妄想がどんどん膨らんで、
その時感じたワクワクを形にしていくことで
トラベラーズの世界が広がったのだ。

そんなことを考えていくと、想像の旅というのは
トラベラーズノートに最もふさわしいテーマの
ような気がしてきた。

先週、8月になってやっと長い梅雨が明けて、
いよいよ夏が本格的にはじまった。
今年の夏は、諦めないといけないことがたくさん
あるのだけれど、逆にこれまで考えてもいなかった
ことが実現できるかもしれないとも考えている。
それを楽しめたらいいなと思う。

今、先々のことは予測不能で、世界は不確かな
情報にあふれている。
検索サイトを調べても、データを何度も繰り返し
眺めても、たくさんの人に意見を聞いてみたって、
正しい答えなんてどこにもない。
コンビニエンスストアの中を何度も歩き回って
すべての棚を隅から隅まで探してみても、
アマゾンの「この商品を買った人はこんな商品も
買っています」を何度クリックし続けても、
そんなものはどこにも売っていない。

何がうまくいくのか、いかないのか、
何が正しいのか、正しくないのか、そんなことは
僕はもちろん、他の誰にも分からない。

だからこそ、それぞれが想像して妄想して
深く考えて、ワクワクを見つけることが大事
なのかもしれない。
そして、ワクワクがぼんやり頭のなかに
浮かんできたら、どこかに消えて無くなって
しまわないようにノートに書き留める。
それを仲間に見せてワクワクが共有できれば
いつかきっと実現できるはず。

今年の夏はいつもと違うから
今まで考えもしなかったようなワクワクが
見つかるかもしれないし、
たくさん想像の旅をしてみようかな。
みなさまもぜひ。


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2020年7月27日

なんだか旅の途中みたいだな

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オリンピックが始まるはずだった4連休の初日。
東京都民の僕は旅行をすることも憚れるし、
(まあコロナがなくてもこのタイミングで
旅行に行くことはなかっただろうけど...)
次号のTRAVELER'S TIMESのためのイラストと
テキストを書くという宿題があったので、
自転車に乗ってオフィスに行くことにした。

途中、雲行きが怪しくなると、突然雨が降り
はじめ、オフィスに着く頃にはTシャツと
ジーパンがびしょ濡れになってしまった。
いつも汗で濡れてしまうからTシャツは予備を
持ってきている。早速、新しいTシャツに
着替えると、濡れたTシャツをハンガーにかけて
早く乾くようにクーラーの風量を強にした。
ついでに予備はないけど濡れたジーパンも
脱いでハンガーにかけた。
「休日だし、誰もいないからいいよね。
今は風邪ひいちゃうとまずいしな」
心の中で言い訳のようにつぶやきながら、
ズボンもはかずに机に向かった。

宿題は旅を感じるレコードと映画と本をそれぞれ
4つ選んでトラベラーズノートに描くこと。
まずは何を描こうかとぼんやり考えていると、
突然オフィスに呼び鈴の音が響いた。
予想外の事態に慌てて濡れたジーパンをはいて
玄関に出ると、郵便局の配達員だった。
「休日なのに郵便物は届くんだな」
そんなことを思いながら荷物を受け取ると、
またジーパンを脱いでハンガーに掛けた。

なんとなくレコード4枚を決めて、ノートに
描きはじめる。鉛筆でラフに下書きをして
ペンで2枚目のレコードを描いていると、
また呼び鈴がなった。
再び濡れたジーパンをはき、玄関へ。
すると女性が二人で大きなバッグを持って立ち、
「XXから来たのですが、皆さんでお菓子は
いかがですか? 生クリームがたっぷり入って
雑誌にも紹介された美味しいお菓子ですよ」
とのこと。(XXは別に伏せている訳ではなく
単純に聞き取れなかった)
「今日は私ひとりしかいないから大丈夫です」
そう言うと「お忙しいところ申し訳ありません」
と言って帰って行った。
別に腹が立った訳ではないのだけど、
お菓子の売り込みが来るのは初めてだったし、
こんな時に来なくてもいいのになあと思った。

気持ちを落ち着かせ、まだ少し濡れていたけど
ジーパンをはいたまま、あらためてノートを
手に取ってみた。
すると、ノートの上下を逆さまにして描いて
いることに気づいた。
そのままでも使えない訳ではなないのだけど、
なんとなく気分を変えたくなったので、
新しいノートの封を開け、一から描き始めた。
なんとか4枚のアルバムジャケットとその横に
コメントを描き終えようとした頃、また呼び鈴。
「まるでドリフのコントだな」そんなことを
思いながら玄関に行くと、今度は女性がひとり
立っていて、「すみません。3階へ行くには
どうしたらいいでしょうか?」とのこと。
「あそこの階段を上がってください」
わざわざ聞かなくても分かるんじゃないかなと
ちょっといらっとしたけど、そんな素振りは
見せず感じよく答えた(と思う)。

「なかなか落ちつかないな」
とりあえず4つある宿題のひとつは終わったし、
ジーパンもだいぶ乾いていた。
もう今日はこれで終わりにしようと思った。

ノートや筆記具を片付けメールを開いてみると、
トラベラーズファクトリーのスタッフから、
7月29日発売になるエースホテル京都との
コラボレーションについて質問が届いていた。
僕はいつもよりちょっと丁寧に返事を書いた。
そして、ふと思いついたようにエースホテルの
ロンドン、LA、ニューヨークで泊まった時に
部屋から持ち帰った便箋を机の下にある箱から
引っ張り出して京都の便せんと並べてみた。
エースホテル京都の部屋にある便箋やメモは、
MD用紙クリームを使用して流山工場で作らせて
もらっている。

各ホテルの便箋は、デザインのフォーマットは
同じだけど、それぞれ紙質が微妙に違うのが
面白かった。
ロンドンやLAなどはざっくりしたラフな質感で、
京都の便箋は他よりもきちんとしてちょっと
まじめそうに見える。
それがなんとなく日本らしさみたいなものを
感じさせて、エースホテルがMD用紙を選んだ
理由が分かったような気がした。

エースホテル京都の部屋にはロゴをデザインした
柚木沙弥郎さんのアートが飾られていたり、
ミナペルホネンのカーテンが付けられていたり、
ロビーには、しょうぶ学園の作品やヒステリック
グラマーのデザイナーによる電飾があったりする。
それらが日本らしさを感じさせながらも、
圧倒的にエースホテルとしか言えないような
自由で文化的な匂いも強く感じさせてくれる。
トラベラーズもそうありたいと思った。

僕は戸締りをしてオフィスを出ると、ずっと
前から行こうと思いながら行く機会がなかった
中目黒の銭湯に立ち寄ることにした。
サウナにもたっぷり入ってさっぱりした気分で
外にでると空はすっかり暗くなり、雨上がりの
心地よい風が流れていた。
「なんだか旅の途中みたいだな」
そんなことを思いながら清々しい気分で、
自転車のペダルを踏み込み、夜の東京を走った。


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2020年7月20日

お気に入りのTシャツ

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最近は自転車で会社に行くことも多いし、
「今年の夏はコロナでいろいろ大変だから、
あまりカチっとした格好じゃなくてもいいよね」
と勝手に個人的にそんなことを思っていて、
Tシャツで過ごす機会が多い。
(別に去年の夏もカチっとした格好だった訳では
なかったんだけど、今まではいちおう会社で
仕事をする時は襟付きのシャツを着るという、
個人的なルールがあったのです)

自転車通勤で会社に着くと、まずは
汗でびっしょりになったTシャツを着替える。
バッグから2枚Tシャツを取り出し重ね着する。
なんで2枚かというと、恥ずかしい話だけど
Tシャツ1枚で1日中過ごしているとお腹がくだり
気味になってしまうから。だから自転車通勤の
日は合計3枚Tシャツが必要になる。

そんな訳で、最近急にTシャツの登場回数が
多くなり、すっかり存在を忘れていたTシャツを
タンスの奥から引っ張り出したり、気に入った
ものが見つかると新たに手に入れたりしている。

一番新しいのは、先週、恵比寿のギャラリーで
開催していた西澤崇氏の写真展で手に入れた
「SENTIMENTAL PUNKS」のTシャツ。
数ヶ月前、オズマガジンの前編集長、古川さん
からTシャツのブランドを立ち上げたということ
を聞いていて、ずっと気になっていたんだけど、
やっと手に入れることができた。
ブラックのTシャツの背中には、西澤氏による
写真の上に「SENTIMENTAL PUNKS」のロゴが
プリントされている。
なんと言っても、このブランド名がいい。
センチメンタルなパンクスですよ。
シンプルでまっすぐで青臭くてロマンチック。
最初聞いた時は、古参の中年ベテラン投手が、
全力のストレートで新進気鋭の4番バッターに
投げ勝ったみたいな爽快感とともに、勝手に
やられたなあと思ってしまった。

トラベラーズファクトリー京都のオープンの際に
同じ新風館にある映画館アップリンクで買った
「エル・トポ」の Tシャツも気に入っている。
「エル・トポ」は1971年公開のカルトムービー。
中学生の頃に見て、その過激な映像にショックを
受けて、それ以来映画に登場するフリークスの
イメージが恐怖感とともにずっと頭に残っていた
僕にとってのトラウマ映画。
何年か前に再び見る機会があって、トラウマとは
無事決別できたんだけど、Tシャツの存在を知って
これは手に入れなきゃと思っていた。

音楽好きにとってTシャツと言えばライブ会場で
販売されるツアーTシャツは外せない。
レモンの輪切りが胸に大胆にプリントされている
Tシャツは、3年前のストーン・ローゼズの
来日ライブで手に入れたもの。
レモンは彼らの1stアルバムのジャケットに
モチーフとして使われて以来、バンドのアイコン
になっている。
そのことを知っている人にはそれと分かるけど、
正面にはバンド名がないから、ただレモンが
大きくプリントされたTシャツとも見える。
そういう押し付けがましくないさりげない
メッセージがあるTシャツが好きだ。

アメリカでのイベントの際に訪れることができた、
ハリウッド・ボウルでのモリッシーのライブでも
Tシャツを手に入れた。
これは、ベッドで寝っ転がるおじさんの顔が
プリントされているからめったに着る機会には
恵まれない。
だけど僕にとっては特別な体験を記念する
大切な1枚。そういうTシャツもけっこうある。

バンドものだとデザインが好きで(もちろん
音楽も好きだけど)イースタン・ユースの
Tシャツを何枚か持っている。
そういえばイースタン・ユースもセンチメンタル
パンクスという言葉がしっくりくるバンドだな。

お気に入りのバンドや映画、デザインや言葉が
プリントされたをTシャツを身につければ、
それだけで「今日もがんばろうかな」という
気分になれる。
さらにちょっと大袈裟に言えば、好きなTシャツ
を着ることは自分のアティテュードを世界に
向かって指し示すことでもある。
そんなことをぼんやり考えていたら、
Tシャツってまるでトラベラーズノートみたい
じゃなかって思った。
リフィルの表紙にステッカーを貼ったり、
チャームをつけたりして自分好みにカスタマイズ
したトラベラーズノートは、まさに同じように
気分をちょっと前向きにしてくれるし、
自分の好きなことを伝えるメッセージボードの
ようなものでもある。
そういえばコラボレーションやイベントの
リフィルや、ファクトリーの店舗限定リフィルも
作る心持ちは、ツアーTシャツやコラボTシャツと
似ているような気がする。

最近トラベラーズのTシャツを作っていないけど、
またいつか作ってみたいな。


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2020年7月13日

トラベラーズファクトリー エアポート 6周年

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7月8日、いまだ休業が続くなかで、
トラベラーズファクトリーエアポートが
6周年を迎えた。
ステーションが3周年を迎えた4月27日も
同じように休業中だったけど、あれから
中目黒とステーションは営業を再開し、
京都もオープンを迎えた。
7月になった今は成田空港のエアポートだけが
休業を続けている。

ちなみにトラベラーズファクトリー中目黒が
オープンしたのは2011年。その3年後の
2014年にエアポート、さらにその3年後の
2017年にステーションがオープン。京都が
オープンした今年2020年もまたその3年後。

結果的に中目黒のオープン以来、3年周期で
新しい店がオープンしていることになるけど、
もちろんこれは計画していたわけでもなく、
まったくの偶然。
そもそも中目黒以外はすべて先方のお声がけが
きっかけで出店が決まっているので、
自分たちでコントロールできるものでもない。
(そんなオリンピックなみの出店計画が
あったら逆にすごいけど)

新しい店を作る時は、既存のお店をコピペする
ようなやり方には興味がないから、いつだって
一からのスタートになる。
そのうえ少ない人数でバタバタやっているから、
店がオープンした直後はへとへとになってしまい
新しい店を作るなんてことはもう二度とやるまい、
なんて思ってしまう。

だけど、それから1、2年過ぎて、僕らの心を
くすぐるような魅力的な話があると、面白いこと
が起きそうだな、とその後大変なことになるのは
わかっているのに、禁断の果実に手を出すように、
ついやってみようと思ってしまう。
そして実際にオープン直前になると、
やっぱりバタバタしながら、もうこんなことは
二度とできないと思う。
それを懲りずに何度も繰り返しているのだ。

だけど無事オープンを迎えて、たくさんの方が
足を運んでくれて笑顔を見せてくれると、
もうそれだけで報われたような気持ちになるし、
新しい場所が生まれることで、新しい仲間との
出会いが生まれたり、嬉しいこともたくさんある
から、いつもやって良かったと思うんだけどね。
今回の京都は、いつもと違った苦労もあったし、
感動もひとしおだった。
(もちろん今は次の店をどうしようか、という
計画もないし、そんなことを考える心の余裕も
気力もない)

京都に新しい店をオープンするにあたり、
ぼんやりとイメージしていたことがあった。
例えば海外からやってきたトラベラーズノート
ユーザーの方が成田空港に降り立ち日本に入り、
それから中目黒に立ち寄り、さらに東京駅から
新幹線で京都に向かう。その旅路の中で
それぞれのトラベラーズファクトリーを行き来する
ことで、旅がもっと楽しく充実したものになれば
楽しいなと思っていた。
それぞれの店でノートにスタンプを押して
カスタマイズしたり、スタッフやお客さん同士で
旅の話をしながら、寄り道で立ち寄る場所を
決めたりする。さらに4つの店を繋ぐような
イベントがあっても楽しいなあ。
京都に新しい拠点ができることで旅の範囲も
広がり、同時にトラベラーズノートとの旅の
楽しみも広がればいいなと思っていた。
だけどコロナで、旅の在り方はすっかり変わって
しまい、そんな旅を促すような投げかけは、
今現実的ではなくなってしまった。

先月末は会社が期末ということで、休業中の
トラベラーズファクトリーエアポートでも
棚卸しがあった。
棚卸しのために成田空港を訪れたスタッフの
話によれば、案内板に掲示されているフライトの
ほとんどは欠航で、空港内を歩くのは空港職員
ばかりだったとのこと。
さらにトラベラーズファクトリーがある
ショップエリアは、シャッター商店街のように
ほとんどの店がシャッターが下ろし、
閑散とした雰囲気に包まれていたそうだ。

6年前この場所に出店を決めた理由は、
国際空港の特別な雰囲気に魅せられたからだ。
成田空港は、旅がはじまる時の緊張や高揚感、
無事に旅を終えた安堵感など、さまざまな旅人の
想いが交差し、たくさんのワクワクやドキドキに
満ち溢れた魅力的な場所だ。
そんな場所にトラベラーズファクトリーが
あったら、トラベラーズノートとの旅はもっと
楽しくなるはず。そんな思いでエアポートが
オープンし、6年間実際にたくさんの旅人たちと
それを共有することができたと思っている。

今は長い休日のように静かな日々が続いている
けど、いつかまた世界中の人が安心して自由に
旅ができて、この場所が賑わいが戻る日が
また再びやって来ることを心から信じている。
もうこのまま死ぬまで国境を越える旅ができない
なんて、そんなことありえないですよね。
そんな人生は考えたくもないです。

次に成田空港から飛行機に乗って旅に出る時は、
はじめての飛行機の旅の時の緊張感と高揚感を
しみじみと思い出すんだろうな。
それまでもうしばらく我慢。我慢。


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2020年7月 6日

カセットテープ・ダイアリーズ

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昔、出張でアメリカへ行った時のこと。
カフェでブルース・スプリングスティーンの
『Born in the USA』が流れてくると、
上司は「この曲、嫌いだよ」と、ちょっと
苦い顔をして呟いた。
当時、アメリカはブッシュ政権が2期目を
迎えた直後。イラク戦争が終わったけれど、
その口実だった大量破壊兵器は見つからず、
アメリカの強引なやり方に批判が出ていた時
だった。
アメリカが好きではあるけど、保守派による
自国第一主義や差別的な考えには批判的で、
リベラル派に共感していた上司にとって、
この曲はマッチョで保守的なアメリカを
無批判に礼讃している歌だと認識していた。

スプリングスティーン・ファンの僕は、
「いや、この曲はアメリカ讃歌ではなくて、
ベトナム帰還兵の辛く厳しい現実を語りながら、
皮肉的にBorn in the USAと歌っているんですよ」
と、薄い知識をもとに誤解を解こうと説明した。
だけど「そうなんだ...」と上司は納得したのか、
しなかったのかよく分からない、あいまいな
返事をして、次の話題へと流れていった。

英語をほぼ完璧に話す上司がそう誤解するのも
無理はなく、この曲がリリースされた直後、
アメリカの負の現状を哀しみとともに歌う曲
なのに、サビの部分だけが強調されて単純な
アメリカ万歳の歌として、レーガン大統領の
選挙戦でテーマ曲のように使われていたりした。
ちなみにスプリングスティーンは民主党支持者で、
そのような曲の使われ方を快く思っていなかった
と語っている。

そういえばトランプは、選挙運動集会でいつも
ローリングストーンズの『悪魔を憐む歌』を
流していて、ストーンズ側は怒って止めようと
しているのだけど、止められないみたいだ。
ただ「私は悪魔」だと歌うこの曲にあわせて
トランプが登場し、支持者が拍手喝采しているのも
どうかと思うけど。


日曜日、都知事選の投票に行って、その後
ブルース・スプリングスティーンが題材の映画
『カセットテープ・ダイアリーズ』を見に行った。

この映画は、イギリスの小さな町で冴えない生活を
送っている高校生が、スプリングスティーンの音楽に
影響を受けていくことで、ポジティブに変わっていき、
成長していくという話で、まさに僕が大好きな
音楽青春映画の王道パターン。
さらに舞台となっている1987年は、
主人公と同じように僕も冴えない高校生で
スプリングスティーンに夢中になっていた頃。
この映画のことを知ると迷わず観に行こうと決めた。

主人公がスプリングスティーンの音楽と
はじめて出会うシーンがすばらしい。
主人公は、不況下のイギリスの小さな町ルートン
で暮らすパキスタン移民の息子で、それゆえに
差別があったり、父親が失業していたりして
厳しい生活を強いられている。
女の子にもてなくて、詩や文章を書くのが好き
だけどそれにも自信が持てなくなっている。
そんな中、入学したばかりの高校で、ふとした
きっかけで、同級生からスプリングスティーンの
カセットテープを渡される。
夜、部屋でカセットをウォークマンにセット
すると『Dancing in the dark』が流れる。
その瞬間、主人公は心に稲妻が落ちたような
強い衝撃を受ける。
このシーンでは、リリックビデオみたいに映像に
歌詞が現れてその意味を伝えてくれるのだけど、
字幕を目で追いながら『Dancing in the dark』を
聴いていると、僕も胸がどんどん熱くなり
瞼がウルウルしてきた。
「そうか、こんな歌詞だったんだ」
明るくポップな曲調に隠されたその曲の真意を
はじめて知って、またあらためてその音楽に
ノックアウトされたような気分になった。

この映画は、英国ルートン出身のパキスタン系
ジャーナリストの自叙伝が原作になっている。
ルートンという聞いたことのない町で、
彼がスプリングスティーンの音楽に心を震わせて
いたのと同じ頃、東京の下町で僕も同じように
疎外感や孤独を感じながら、同じ音楽に夢中に
なっていたんだな。
英語圏で暮らす彼とは違って、その歌の意味の
半分も理解できていなかったのにね。
そんなわけで、いろいろな意味で感慨深い映画
でした。

ブルース・スプリングスティーンは、
常に社会の底辺で這いつくばって苦悩している
人たちの叫びを歌にして、時代や国境を超えて
社会に怒りや疎外感を持つ人たちの心を
震わせてきた。
都知事選の結果を知って失望している僕は、
まだスプリングスティーンの音楽が必要なのかも
しれないな。


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2020年6月29日

One more story

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最近、打ち合わせのお誘いメールが届き始める
ようになり、先週は外部の方とお会いして
話をする機会が何度かあった。
お誘いいただく際は、リモートでも大丈夫ですが
会って話をすることも......、といった感じで、
さりげなくこちらの意向を聞いてくれるのだけど、
そうするとやはり会ってお話しましょうと
返事をしてしまう。
打ち合わせでは、お会いするのも久しぶりだし、
そもそも誰かと会って話をするということも
今まであまりできなかったこともあって、
マスクをつけながらついたくさん話をしてしまう。
だいたい話の半分くらいは、本筋とはあまり
関係ない話が多いんだけど、リモートだと
そういった無駄話になりにくい。
だけど僕は無駄話が好きだし、無駄話から
面白そうな仕事に転がっていくことも多い。
なにより人と会って話をするっていうのは
いろいろ刺激をもらうし、やっぱり楽しい。

コラボレーションでお世話になっている
TO&FROさんが横浜に新しいお店をオープン
したということで、ご挨拶をかねて見学に
行った。
そういえば、ゆっくりお店を見てまわるのも
ずいぶん久しぶりだな。

見えない脅威に怯え、静かに身を潜めるように
過ごしていた日々から、多くの人が
気をつけながらも再び外の世界に足を
踏み出していくことはじめようとしている
のを感じる。

トラベラーズファクトリー中目黒は、
休業以来はじめて2階のカフェスペースを再開。
テーブルの向きを変えたり、椅子を減らして
入場制限をしたり、予防対策をした上ではある
けど、通常の営業に戻りつつあるのが嬉しい。

6月1日から営業を再開したと言っても、
まだお客様は少ないし、以前のような状態に
戻るまでにはしばらく厳しい時が続くだろう。
感染にも気をつけないといけない。

だけど、その分静かで落ち着いた雰囲気の
中目黒の店内にいると、不思議と懐かしい
気持ちになる。

トラベラーズファクトリーがオープンした
ばかりの頃。
まだスタッフが揃っていなかったため、
週に1日夕方からお店に行って、店頭に
立っていた時があった。
その頃はまだお客様も少なく、
特に平日の夜はほとんど人が来ることもなく、
手持ち無沙汰な時間を埋めるように
商品の並べる位置を変えたり、
手書きのPOPを作ったりしていた。
お客さんは来ないけど、静かな店内で
そんなことをしながらBGMに耳を傾けている
のは楽しい時間だった。
今だから言えるけど、当時は売上が1万円に
満たない日すらあって、そんな時は自分で
コーヒー豆やまだ読んでいない本を買って、
ささやかな売上の足しにしたりしていた。

それから少しずつお客様が増え、東京だけ
でなく、遠方からも来てくれるようになり、
さらにここ数年は海外からもお客様が来てくれ、
いつも賑わうような場所になっていった。

東京の感染者数はなかなか減らない中で、
遠くからお客様がまた来てくれるようになる
にはもうしばらく時間がかかりそうだし、
海外に至ってはいつ戻ってくることができる
のかわからない。
「新型コロナウィルス発生!30コマ戻る...」
まるでスゴロクで一気にコマが戻されたように
またあの頃に戻ったような状態になった。

だけど、そんなことすらも楽しめたらいいな
と思っている。
お客様が少ない分、ひとりひとりの方に
丁寧に向かい合い、ゆっくりお話ができるし、
2階では静かで落ち着いた雰囲気の中でノートを
開きながら、のんびりコーヒーを飲む時間を
楽しんでいただくことができる。
今だからこそ味わえるトラベラーズファクトリー
を楽しんでいただけるよう、できることを
精一杯していきたい。

例えるなら、9年間に渡り少しずつ書きためて
いた長編小説が、パソコンのフリーズによって
すべて消去されてしまい、途方に暮れながら、
また最初から書き始めるようなものなのかも
しれない。
だけど、9年前と違うのは、
共に苦労と喜びを分かち合ってきた仲間がいて
みんなの頭の中には今まで書きためていた物語の
記憶がしっかり残っていることだ。
ここで一度リセットして、みんなでまた一から
書き始めることで、さらに楽しくワクワクする
物語に生まれ変わる予感がする。

ステーションもそうだし、エアポートも近い将来
新しい物語がはじまるはず。
京都が仲間に加わったことで、新しい化学反応が
生まれるかもしれない。

そんなわけで、トラベラーズファクトリーの
新しい物語を楽しみにしていただけたら
嬉しいです。


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2020年6月22日

日記を書く

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6月15日(月)
自転車で神田のオフィスへ行き仕事。
今日は、ほぼ一日テレ会議なので在宅でも
仕事はできるのだけど、やっぱり家で会議を
するのは、落ち着かない。
ブルートゥースのイヤフォンをつけてPCで
会議をしていたら、あまりの長さに会議中に
イヤフォンが電池切れ。
スピーカーに切り替えようとしたのだけど、
なかなかうまく繋がらなくてあたふたする。
その間10分ほど音が聞こえなかったけれど、
会議を止めるのも憚られたため、聞いている
ふりをして、なんとかうまくやり過ごす。

帰りに書泉ブックマートに立ち寄ってみたら
ぎりぎり営業時間に間に合う。
ずっと気になっていた『つげ義春日記』を購入。

6月16日(火)
自転車で中目黒オフィスへ。
片道1時間15分の自転車通勤もだいぶ慣れてきた。
最初は電車での感染を防ぐために始めたんだけど、
気持ちいいし、運動になるし、今は楽しみにすら
なっている。

京都は、休日が明けてもたくさんお客様が
来てくれているようで嬉しい。
それに古書が売れているというのも嬉しい。
昔から古書店を開くのが夢だった。
商店街から少し外れた路地裏にあるような
小さな古い建物で、自分の好きな本に囲まれて、
ひっそり静かに本を売るようなお店ができたら
いいなと思っているのだけど、
そんな商売は成り立たないだろうな。

6月17日(水)
橋本が2021年のダイアリー用シールの
デザインをアップ。うん、いい感じ。
本を読んだり、イマジネーションの中で旅を
する時にもトラベラーズノートは大切な相棒と
なってくれる。
そんなことを感じさせてくれる素敵なシールに
なりそうだな。

6月18日(木)
月に一度のトラベラーズファクトリーの
ミーティング。
コロナの前はトラベラーズファクトリー2階で
やっていたのだけど、最近は密を避けるため、
オンラインで行っている。
中目黒、東京駅、成田、京都の各店舗から
中継テレビを見るように話をする。
居ながらにしてみんなと話ができるのは
とても便利なんだけど、会議が終わった後、
雑談とかどうでもいいような話ができないのは
なんだか物足りない。
たまには一同に集まれるといいんだけど、
そう思っているのは自分だけだったりして...。

6月19日(金)
1日雨ということで電車で中目黒へ。
早々にアメリカのYさんから電話。
先日立ち上がったばかりのオンラインショップ
TRAVELER'S COMPANY USA のことで
いろいろ話をする。
その後、京都の店長とオンラインで打ち合わせ。
新しい店を立ち上げて軌道に乗せていくには、
いろいろ大変で苦労も多い。
世の中がこんな状況では、なおさらだ。
だけどみんな前向きにがんばっていて嬉しい。

都内の2店舗はまだ厳しいし、
成田は再開の目処すらたっていない。
だけど、こんな状況だからこそ、お客様を
笑顔にしたり、前向きな変化をもたらすことに
大きな価値があるはず。何ができるのか。
もっともっと考えないといけない。

夕方、仲間へのサプライズギフトを作る。
参加するはずだった結婚式がコロナの影響で
家族だけで行うことになったため、
かわりにノートを作って贈ることにしたのだ。
みんなのメッセージが描かれたページを
リング職人の石井さんが綴じて、表紙には、
僕が京都限定トラベラーズノートをもじって
彼女の好きなものを並べて描いた。
手にした時に喜んでくれる姿を想像して、
みんなでワイワイしながら、ああしよう、
こうしようと言って、作業をするのは
思いがけず楽しい時間で、これからの仕事の
ヒントをもらったような気がした。
喜んでくれるといいな。

夜みんなが帰った後、静かなオフィスで
しばらく一人で仕事をする。
ふと思い立ち、RCサクセションの
『June Bride』を流していたら、
なんだか急にしんみりした気持ちになった。

「着飾った花嫁は、このびしょ濡れの雨の中...
 June Bride、June Bride、君だったんだね。
 おめでとう、しあわせになってね」

6月20日(土)
休日。自転車で実家へ行き、コロナで延期に
なっていた母親の仏壇へ魂を入れる開眼供養
という儀式を行う。
久しぶりに父親のもと兄弟が集まる。
まだ決まっていないお墓のことからはじまり、
それぞれの仕事のことなどを賑やかに話すが、
こういう時は自分は口が重く、あまり積極的に
話ができない。悪い癖なのは分かっているけど、
うまくできない。

実家から帰る途中、久しぶりに錦糸町のサウナへ。
まだそれほど人がいないおかげで、
ゆっくりサウナと水風呂を繰り返す。
ここのところ、週に3、4日は往復2時間30分も
自転車に乗っているから、痩せたかなと
思いながら、久しぶりに体重計にのってみたら、
むしろ少し増えていた。
そういえば自転車通勤の時は、体を動かすから
お腹が空いてけっこう食べてしまう。
体重を減らすのは、運動をするよりも、
食事を減らすことの方が有効なのかもしれない。

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最近読んだ『つげ義春日記』が面白くて、
つげ氏の日記風に書いてみた。
だけど私小説のような深みを感じる氏の日記と
比べると、全然そのレベルには達していない。
本当は、人に言えないような不安や悲しみに
いやらしい欲望も頭の中には渦巻いているけど
それらを正直に曝け出すことができない。

だけど何年かして自分で読み返してみると、
コロナ禍の今の状況を思い出すのかもしれない。
その時には、あの時は大変だったなと、
しみじみと笑顔で思えたらいいな。


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2020年6月15日

TRAVELER'S FACTORY KYOTO

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6月11日、トラベラーズファクトリー京都が、
ついにオープンを迎えることができました。

思えば4月のはじめ、緊急事態宣言が発令される
直前のこと。4月16日のオープン予定日に向けて、
バタバタと商品を並べ終わりほっと一息ついた頃に
携帯が鳴り、オープン日の延期を伝えた。そして
次のオープン予定日5月21日は予想通り再延期。
さらにその次のオープン予定日はまた延期になる
のを恐れて空白のまま推移し、緊急事態宣言が
開けてから、やっと6月11日が3回目の予定日
として伝えられた。
二度あることは三度あるのか、三度目の正直
なのか、正直に言えば本当にオープンできると
確信できたのは、そのほんの数日前だったの
かもしれない。

オープン日の朝、近くのイノダコーヒ本店で
モーニングを食べて、しっかりお腹を満たして
新風館へ。
トラベラーズファクトリーの店内に入ると、
BGMのスイッチをオンにして深呼吸をする。
ジェット機のSEとともにキンクスの
『This Time Tomorrow』が流れる。
あたらしい旅の始まりを感じさせてくれる曲だ。

「やっとこの日を迎えられたんだな」
しみじみと思いながら店内をゆっくり歩く。
ライブラリースペースにはみんなから届いた
京都のおすすめスポットの写真が飾られている。
入賞賞品は前日京都のスタッフがひとつずつ
丁寧にラッピングして発送した。
レジ脇の壁には橋本が時間をかけて
手描きで描いたトラベラーズのメッセージ。
近くで見ると、手描きならではの味わいが
感じられるのがいい。
足場板に、壁に取り付けられたフレーム、
置かれたレコードや本、それぞれの棚や装飾品、
並んでいる商品たち。
それらすべてが、そこに関わる人たちの想いの
結晶であることを想い、感謝の気持ちとともに
背筋が伸びるような感覚を覚える。

オープン直前。
ここ数日みんな遅くまで準備をしていて、
きっと疲れているんだろうけど、みんなの目は
キラキラしている。
オープンが伸び伸びになって長い期間待機していた
スタッフたちは、仕事ができることの喜びが
身体中から滲み出ているのがわかる。
いよいよオープンの時間を迎えると、
コロナ対策で決めていた店内に入ることができる
お客様の数はすぐにいっぱいになった。
たくさんの方が「楽しみにしていたんです」とか
「おめでとうございます」と声をかけてくれた。
商品を手にしたり、スタンプを押したりしながら
たくさんの笑顔を見せてくれた。
京都のおすすめスポット入賞者の方が早速足を
運んでくれたので、展示の写真と本物の入賞作品
を並べて写真を撮らせてもらった。

ずっと自粛期間が続いていたこともあったし、
今回はオープンまでいろいろあったこともあり、
店内で皆さんと実際にお会いしてお話をする時間
がほんとうに楽しい。
「来てくれてありがとうございます」
僕らは心から思って何度もその言葉を発した。

やっぱりこの感じなんだよな。
リアルに旅をして人と出会うこと。
もちろんまだいろいろ注意しながらやらないと
いけないんだけど、リアルな場所で人と出会い
話をすることは、ネットでは代替えできない
特別なことなんだな。
あらためてその魅力に気付かされた。

途中、店を抜けて、エースホテルやアップリンクを
はじめ新風館の他のお店も覗いた。
エースホテルのロビーでは、前衛的な音楽とダンス
のパフォーマンスが繰り広げられていた。
ここのショップコーナーではトラベラーズノート
の販売もしてくれているのだけど、仕入れ担当の
ヒナさんを見つけると思わず声をかけた。
「やっとオープンできましたね!」
ここ数日は準備のためほとんど寝ていないと
言いながらも、明るく元気に話をしてくれた。
アップリンクでは映画を見る時間は残念ながら
なかったけれど、気になっていた1970年の
カルト映画「エル・トポ」のTシャツを買った。
旅先としてこの場所を訪れて、トラベラーズ
ファクトリーとあわせて、アップリンクで
映画を見たり、エースホテルのロビーで、
ストンプタウンのコーヒーを飲んだりして
1日ゆっくり過ごすのも楽しそうだな。
ここには、京都らしい文化的な匂いに旅先で
訪れたような異国感がある。

トラベラーズファクトリー京都は、
無事オープンすることができたけれど、
それでも海外の方はもちろん、遠隔地の方など
行きたくても来ることができない方もたくさん
いらっしゃると思います。
そんな方に少しでも店内の雰囲気を感じて
いただけるよう、トラベラーズファクトリーの
インスタのストーリーズに動画をアップしました。
だけどいつか安心して旅ができるようになったら、
ぜひこの場所に足を運んでいただきたいです。

今後は、ライブラリースペースでは、
ゆっくり本を読んだり、ノートを開いたり
できるようにしていきます。
近所の方にとっては、日常の中に旅を感じる
ことができる場所になりたいと思っています。

this time tomorrow, where will we be?
明日のこの時間、ぼくらはどこにいるのだろう。
This time tomorrow what will we see?
明日の今頃、ぼくらは何を目にしているのだろう。
(The Kinks "This Time Tomorrow")

トラベラーズファクトリー京都、
今後とも末長くよろしくお願いします。


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2020年6月 8日

旅の醍醐味

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6月1日より中目黒とステーションは営業再開。
こんな状況の中でも、楽しみにしていました、
と来店し声をかけてくれる方もいて、嬉しい。

6月3日はオープンの準備で二ヶ月ぶりに京都へ。
オープンまで1週間。最終調整に足りないものを
チェックし、日帰りで東京へ戻る。
体重計は相変わらずご機嫌斜めになることも
あるけど、ここで新たに始めようと考えている
サービスはなんとかなりそうで、ひと安心。

金曜日には、皆さんから届いた京都のおすすめ
スポットの写真を出力し、オープンにあわせて
店内に展示するための準備をする。
どれも素晴らしい作品ばかりでつい見入って
しまい作業が中断してしまう。
入賞者は京都のオープン前には公式サイトで
発表しますので少々お待ちください。

夜は閉店後の中目黒でTO&FROやツールボックス
などの新商品を店頭に並べる。
そういえば、ここに新しい商品が並ぶのも二ヶ月
ぶりのこと。それだけで空間に新鮮な空気が
流れてくるような気がしてなんだか嬉しくなる。
やっぱりこの感じは、リアルな場でないと
味わえないんだよなあ。

6月に入り、トラベラーズファクトリーの
営業がはじまり、京都のオープンも近づいて、
急にバタバタしてきた。
営業にあたり、感染予防対策を注意深く
入念にやっているつもりだけど、
この予防対策には絶対的な正解がない。
それぞれの日々の暮らしでもそうだ。
感染リスクの中でどう暮らしていくのか、
自分で調べて、考えながら、自分の価値観に
基づいて、判断していかないとならない。

そんな中、国内外で価値観の違いを否定する
ような悲しい事件が立て続けに起こっている。
真実を隠したり、開き直ったり、ねじ伏せよう
としたりして、分断を煽る人たちがいる。
旅を愛する僕らは、世界中の固有の文化や
異なる価値観を尊重していきたいし、
ひとりの人間としてリアルに出会って話をする
ことで、理解したい。
権威や権力、世間の風評なんかよりも、
目の前にいるあなたの声に耳を傾けたい。
旅とロックは、それを実感とともに教えてくれた。

トラベラーズファクトリー京都は、
こんな時代でありながら、この場所にリアルに
足を運ばないと、買えないものや得ることの
できない体験がたくさんある。
旅ができない時代、会議や飲み会をZOOMで
やるように、いろいろなことがオンラインに
置き換えられ、それはこれからもっと加速して
いくのは間違いないと思う。
例えば、京都でも店内の模様をオンラインで
配信したりするようなこともやっていきたいと
考えているけど、でも一番味わってほしいのは
この場所に足を運ぶことで得られること。
やっぱり旅の一番の醍醐味は、その場の空気を
肌で感じたり、人と出会い話をしたりすること
だと思うし、それを何よりも大事にしたい。

ウィズコロナとか言われている中で
そんなことにこれからもこだわり続けるのは
正しいのかはよく分からない。
だけど、旅がテーマの紙のノートを作る僕らは、
そこはやっぱり譲れないんだよなあ。

ということで、今週いよいよ京都オープンです。


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2020年8月

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店長のプロフィール

(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。