2021年10月18日

TEN NOTEBOOKS, TEN COLORS

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東京オペラシティーで開催中の和田誠展に
行ってきた。
幼少期のらくがきから高校時代の先生の似顔絵、
美大時代の作品、有名なハイライトのパッケージ、
数々の本の装丁、ポスター、似顔絵まで膨大な数の
作品が並んでいてとても楽しめた。

幼少期から亡くなるまでの作品を時系列で並べて
いるコーナーがあって、あの朗らかなユーモアと
シュールでブラックなセンスが両立したような
氏の独特のスタイルは、学生時代に制作した
『夜のマルグリット』という作品で既に完成され
ていたのがわかる。

もちろんそれ以降も新しい表現方法を取り入れ、
作品の幅は広がっていくのだけど、そこには和田誠
としか言いようがない独特の味やスタイルがずっと
変わらず貫かれている。
だから彼のイラストやデザインは、1960年代から
亡くなる2019年まで一貫して古びることがなく、
今も新鮮な驚きや感動を与えてくれる。

話は変わるけど、僕のバッグには
トラベラーズファクトリー1周年ロゴのカンバッジが
付いている。
ちょうど今10周年記念イベントのために、
各周年ロゴをデザインしたカンバッジを作っている
のだけど、それとはちょっとだけデザインが違う。
たぶん1周年を記念したイベント用に作ったのだと
思うのだけど、このバッジのことについては
トラベラーズファクトリーのサイトに記録もないし、
販売したのかノベルティー用に作ったのかもまったく
覚えていない。
もしかしたら、何かに使おうと思って橋本が
デザインをしてとりあえずカンバッジの見本を
作ってみたけど、タイミングが見つからずリリース
しないまま終わったのかもしれない。
(そういうものもいくつかあって、僕は密かに
B-Sides&Rarities のカンバッジを持っている)

ちなみに1周年ロゴのカンバッジの横には、
ちょうどバッジと同じくらいの大きさだけ、
バッグの生地が濃くなっていて、しばらくそこに
バッジが付いていたのだけど、知らないうちに
取れてしまったらしい痕跡が分かる。
きっと同じタイミングで付けたのだと思うけれど
どんなバッジだったかは覚えていない。

トラベラーズファクトリーがオープンした頃、
橋本がカンバッジを作る機械をどこかのサイトで
見つけて、早速手に入れると気軽にカンバッジを
作ることができるのが面白くて、新しいおもちゃを
手に入れたみたいにいろいろ作って遊んだ。
そして、これをみんなにも体験してもらいたいと、
丸いシートに文字を書き込んだり、スタンプを
押してオリジナルのカンバッジを作るイベントを
思い立ち、開催した。
もうちょっとコロナが落ち着いたら、あのイベント
をまたやってみたいな。

周年記念缶みたいに、10種類のデザインが時系列で
並んでいるのを見るといろいろ変化しているようで、
そのスタイルは一貫して変わっていないとも思う。
もちろん、その時々の気分や思いを反映して作って
いるのだれど、トラベラーズらしさの重要な要素
でもある旅を感じるワクワクするデザインと、
そこに添えられているちょっと理屈っぽくて
分かりづらいメッセージも10年間変わらない。
質、量ともにレベルが全然違うし、比べるのは
大変おこがましいけれど、和田誠展で並んでいた
氏のライフワークとも言える40年分2000枚以上の
週刊文春の表紙もまた、やっぱり和田誠らしい
としか言えない一貫性があった。
映画に音楽、旅先で見つけた物、民芸品、花器、
鳥など、40年分だから本当にたくさんのモチーフが
描かれ、圧倒的な物量なのだけど、どのモチーフにも
氏のパーソナルな思い入れや愛情が感じられ、
それゆえに親密な温かさを見るものに与えてくれる。

デザインもものづくりも文章も、一貫した表現を
長く続けていくためには、その人自身の内側から
湧き出るパーソナリティを源流とする必要があると
思うし、だからこそ、その人にしかできない表現が
生まれる。僕はそういった作品が好きだ。

トラベラーズノートの最大の魅力は、
使い手らしくカスマイズすることによって
その人のパーソナリティを引き出してくれて、
自由で温かな佇まいが、その人ならではの表現を
促してくれることだと思っている。
だからトラベラーズノートは使う人によって、
見た目も使い方も違う。
トラベラーズファクトリー10周年ロゴの
「TEN NOTEBOOKS, TEN COLORS」は、
そのことを言葉にしている。

みんなそれぞれ違うって素敵なことだと思う。


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2021年10月11日

10周年記念缶

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トラベラーズファクトリー10周年企画をいろいろ
アップしました。
今回はなるべく密を避けたいということもあって、
さまざまな企画を五月雨式にリリースするような形
になってしまいました。
さらに同時期に台湾ビールなどコラボレーションの
リリースもあったりして、いろいろな企画の
展開日に開催場所などが、まるで東京の地下鉄路線図
みたいに複雑に入り組んで、自分でも何がどこで
いつから始まるのか分からなくなっていたなかで、
絡み合った糸をほどくようにこちらにまとめました。
だけど正直に言えば、読んでる方もきっと分かり
づらいと思ってます。すみません。
これから随時詳細情報をアップしていきますので、
よろしくお願いします。

ということでトラベラーズファクトリー10周年です。
まずはこの場所に足を運んでくれたすべての皆様に
感謝を申し上げます。ありがとうございます。

トラベラーズファクトリーがはじまったときは、
10周年を迎えるなんてことはまったく想像する
ことができなかった。
だいたい当時から今に至るまで僕らは、
中長期的展望なんてものはあまり考えずに、
そのときの直感を頼りに仕事を進めてきた。
そう言うと聞こえが良いような気がするけど、
言い方を変えれば、要はなんとなく流れに乗って
ここまでやってきたということでもある。
エアポートもステーションも京都だって、
僕らが主体的にそこに新しい店を出したいと
動いたからではなく、面白そうな話に乗っかった
ことがきっかけではじまった。
ほとんどのコラボレーションだってきっかけは
同じようなものだったりする。
だけど、今思うとこの流れに乗るということが
ものごとを楽しく、高いレベルでやりとげるために
大切な要素なような気がする。
自転車を漕いでいても、逆風の中で前に進むよりも
追い風に乗った早く進むし、何より気持ちがいい。
だけど、その分計画性がないから、いろんなことが
いっぺんにやってきてバタバタすることも多い。
(ここ最近はまさにそんな感じですね)

追い風と言えども、先が見えないくらいの急な
上り坂を汗をかきながら必死になって登ると、
今度は下りも急で最初はペダルを漕がずに進むのを
喜んでいたら、スピードが上がりすぎてコントロール
が効かなくなりそうで、泣く泣くブレーキをかける、
ということもたくさんあった。
もっとフラットで、たまに緩やかな登りと下りが
あるくらいがいいけど、なかなかそうはいかない。

流れに乗っていくということを信条にしながらも、
一度始めたことは、粛々と真面目にこなしていく
という性質もある。(あんまり自分で言うこと
じゃないかもしれないけど)

1周年から10周年までずっと続けている周年缶も
そのひとつ。
この周年缶は、缶のデザインからはじまり、
告知用の撮影、缶にお菓子や飲みものをセットする
作業に出荷までけっこう手間がかかる仕事でもある。
今回、缶の製作現場をサイトで紹介しているけど、
昔ながらの方法でほぼ手作業で製作しているため、
缶を作るのだって大変な仕事だし、飲み物やお菓子も
みんな一人か二人でやっている小さなお店が、
手作業で作ってくれているものばかりだ。
そういうわけで、手間がかかり作れる数も限られ、
効率が良いとは言えないこの周年缶を10年に渡り
続けることができたのは、トラベラーズファクトリー
の誕生日を盛り上げたいという気持ちだけでなく、
ひとつのことをコツコツ続けていく生真面目さが
あったからだと思う。
(やっぱり自分で言うことではない)

10周年企画では、今までの周年缶のデザインを
もとにしたマスキングテープとカンバッジが登場
するけれど、ずらりと並んだ姿を眺めるとやっぱり
感慨深い。
それぞれ数字にまつわるメッセージがあるので
あらためてここに書き留めたいと思います。

1周年「ONE MORE TRIP」
手探りではじめたトラベラーズファクトリーの
1年目が終わって、もう1年やってみようか、
というのはそのときの正直な気持ちだった。
ONE MOREを繰り返して10年経った気もする。

2周年「TWO IS BETTER THAN ONE」
一人より二人の方がいいよね、という意味だけど、
1年目より2年目というように積み重なっていくこと
で見えることもあると思う。ロブスターはハサミが
2本指のピースサインみたいだから。

3周年「The 3rd Planet from the Sun」
太陽系第三惑星地球は僕らのホームでもあり、
旅先でもある。いつかトラベラーズノートとともに
宇宙を旅する日が来るかも。

4周年「1,2,3,4, HEY!, HO!, LET'S GO!」
パンク好きにとってワン、ツー、スリー、フォーは
始まりの合図。ラモーンズの「電撃バップ」より。
個人的な好みで4周年のメッセージを考えたら、
橋本がかっこいいラジカセをデザインしてくれた。

5周年「Take Five Minutes」
英語で「ちょっと休憩しようよ」という意味。
お茶を飲んだり、音楽を聴いたり、短編を読んだり、
ノートを開いたり、そんな時間って大事です。
今思うとこのときは、ちょっと疲れていたのかも。

6周年「You can play any melody on the six string」
ここでの six string は6弦のギターのことで、
それがあればどんなメロディーだって奏でることが
できる。はじめてギターを手に入れてジャーンと
鳴らしただけで、世界を手に入れたような気分に
なれたけど、トラベラーズノートだって、
手にするだけで新しい旅がはじまり、どこまでも
行けそうな気分になれる。

7周年「Sailing On The Seven Seas」
大航海時代、冒険家が7つの海へ航海の旅に出る
ことで世界は広がり、新しい地図が生まれていた。
今ではネットに情報は溢れているけど、リアルな旅に
出れば新しい発見はたくさんある。
ああ、旅したいなあ。

8周年「In an octopus's garden」
「オクトパス・ガーデン」は、ビートルズの
「アビイ・ロード」収録のリンゴ・スターによる曲。
ほのぼのとした曲調とは裏腹に歌詞は海の底にある
オクトパス・ガーデンでひとりで過ごしたい、
という引きこもり願望を歌っている。
そんなときはきっと誰にもあると思うけど、
ひとりノートに向かったり、旅に出るのもいいかも
しれないですね。

9周年「Floating ON CLOUD NINE」
まだ記憶に新しい9周年のテーマは、CLOUD NINE。
この言葉は最高にハッピーな状態を意味する。
ちょうどコロナ禍で先が見えないときだったので、
あえてハッピーな言葉をデザインにしてくれた。

10周年「TEN NOTEBOOKS, TEN COLORS」
詳しい話はこちらをご覧いただきたいですが、
十人十色という言葉は、まさにトラベラーズノート
を象徴していると思うし、10周年らしいデザイン
になったと思っている。
こちらは10月12日11時ごろより、
トラベラーズファクトリーオンラインショップで
予約開始です。ぜひ!


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2021年10月 4日

台湾ビール

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先週のこと。
10月に台湾の誠品書店で開催されるイベントのため
の動画をトラベラーズファクトリー2階で撮影した。
こんな状況でなければ台湾まで行ってイベントに
立ち会いたいところなんだけど、台湾へ旅するには
まだいろいろと高いハードルがある。
残念ながら今回のイベントは動画での参加となって
しまった。

台湾にはイベントのため何人かで行くことが多いし、
現地にトラベラーズの仲間みたいな方がたくさん
いるので、台湾での夜はみんなでガヤガヤと話を
しながらごはんを食べて過ごすことが多い。
なんといっても台湾は食べ物が美味しいし、
大皿の料理を大勢で食べる方がより楽しめる。
すっきりした飲み口の台湾ビールを飲みながら、
テーブルいっぱいに並んだ少し濃い味付けの料理を
囲んでみんなで食べるのは至福のひとときだ。
専用の小さなグラスで飲む台湾ビールは、
なぜか普段よりもお酒が進むし、
南国の旅先で開放的になっているからか、
話題も前向きで熱っぽく盛り上がることが多い。
動画の撮影をしながら、しみじみと台湾での
楽しい宴を思い出していた。

台湾の宴に必ずあるのが、台湾ビールだ。
お酒を出す店ではたいていどこでも台湾ビールを
飲むことができる。というか、逆に台湾ビール以外
のビールを台湾で飲んだことがないような気がする。
路上にテーブルを出しているような路地裏の食堂、
人でいっぱいの小籠包や魯肉飯の人気店に、
フカヒレやカラスミが出てくる高級台湾料理店など、
どこに行っても最初に口にするのは
印象的な緑色のボトルに入った台湾ビールだ。
そして、ビールを飲むのは台湾ビールのロゴが
プリントされた厚口で小さな専用のグラス。
どちらかといえばあまりお酒に強くない僕にとって
このグラスは程よいペースで飲むのにちょうどよい。

10周年のイベントで台湾に行ったときには、
古くて今にも壊れそうな建物の味わいたっぷりの
居酒屋でみんなで飲んでいたら、なぜかバドガール
ならぬ台湾ビールガールが現れた。
そこでビールガールにおすすめされて飲んだ
18日しか賞味期限がないという「生18Days」は
地元でしか飲めない台湾ビール。
美味しいからか、ビールガールのせいか、
良く分からないけど、リング職人の石井さんは
「うまいなあ」と連呼しながら、
すっかり酔っぱらっていたのを思い出す。
(僕もおいしいと言いながら飲んでいたけど、
お酒にそれほど強くないのもあって味の違いは
正直言うとあまりよく分からない)

昨年末、誠品書店でのイベントにあわせて、
何かできないかという打ち合わせをしていたときに
橋本がほとんどお酒が飲めないのに、台湾ビールと
のコラボレーションができたら面白いと切り出した。
トラベラーズノートの15周年を台湾ビールで乾杯して
祝いたいからと橋本はその理由を語っていたけれど、
僕は台湾での宴を思い出しながら、コロナのせいで
旅も飲み会もできない中で、その両方への渇望を
満たしてくれる素敵なアイデアだと思った。
その後、誠品書店が台湾ビールとトラベラーズを
繋げてくれて、今回のコラボレーションが実現する
ことになった。

誠品書店でのイベントは、もともと夏に開催する
予定で、トラベラーズファクトリーでも同じ時期に
発売する予定だった。
だけど、ちょうど6月から7月にかけて、
台湾で一時的にコロナ感染者が増えてしまい、
開催時期が延期になってしまった。
延期が決まったとき、最初はキンキンに冷えた
ビールがおいしい夏に発売できないことを残念に
思ったけれど、その頃は日本でも感染者がどんどん
増えていた時期でもあったし、日本だけでなく
台湾でも早くコロナの感染が落ち着いてイベント
開催ができるように願った。

その後、イベントの開催が10月に決まったと
誠品書店から聞いたときは、ほっとするのと同時に
これから年末に向かってビールを飲む機会が増えるし
良いタイミングかもしれないとも思った。
そもそもビール好きにとってはどんな季節だって
何かにかこつけてビールがうまいと言っているから、
季節なんてあまり関係ないような気もする。
それよりも10月はトラベラーズファクトリーの
10周年にもあたるので、トラベラーズノートの
15周年とあわせてファクトリーの10周年も祝して、
台湾ビールとのコラボレーションが登場するのも
素敵じゃないかとも思った。

実は今回のコラボレーションでは、
トラベラーズが台湾ビールバージョンのノートや
カスタマイズアイテムを作るのとあわせて、
台湾ビールに、トラベラーズバージョンのラベルを
貼ったオリジナルの台湾ビールとグラスを作って
もらっている。
ビールはいろいろ条件が厳しく日本に輸入することが
難しそうなのだけど、出力したラベルを貼った撮影用
のサンプルを見ると、やっぱり台湾でこのビールを
飲みたかったなと思った。
トラベラーズバージョンの台湾ビールの栓を抜き、
コラボデザインのグラスに注いで、台湾の人たちと
一緒に乾杯をしながら、ビールを飲みたかったな。

まあでも、10月から日本も緊急事態宣言も明けた
ことだし、コラボレーションアイテムを眺めながら、
日本でも手に入れることができる台湾ビールを
オリジナルグラスに注いで、仲間とささやかな乾杯を
するのもいいかもしれない。
そして、いつかまた台湾を旅して、おいしい料理と
ともに台湾ビールを飲むことを想像してみようかな。


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2021年9月27日

ファクトリーブレンド

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アアルトコーヒーの庄野さんからコーヒー豆の
サンプルが届いた。
10月にトラベラーズファクトリーが10周年を
迎えるにあたり、庄野さんに10周年ブレンドを
作って欲しいとお願いしたら、快く引き受けて
くれて、早速焙煎してくれたのだ。

定番のトラベラーズブレンドは、中深煎りで
やさしく柔らかい飲み口が特徴だけど、
新しいブレンドは10周年ということで、
時間の経過を感じる深煎りでとお願いしていた。
届いた豆は黒く艶が出ていて袋を開けると
深煎りらしいコーヒーの甘い香りを感じた。
早速、この日のためにミルからフィルターまで
コーヒー道具をオフィスまで持ってきてくれた
スタッフが豆を挽いて淹れてくれた。
ミルで挽いた粉をフィルターに落として
そこにゆっくりお湯を垂らすと小さな泡が
ぶくぶくと音を立てながら膨らんでいった。
もうそれだけで、このコーヒーが美味しいって
思えるような香りが広がった。

みんなで仕事の手を止めてコーヒーを飲んだ。
しっかり苦みがありながらもすっきりした飲み口で、
後味にほのかに甘味を感じ、しみじみと美味しい。
やっぱり自分は深煎りのコーヒーが好きだな
と思いながらゆっくりと味わった。
一緒にコーヒーを飲んでいたみんなも、
「いやー、美味しいですね〜」と口々に言った。
淹れたての美味しいコーヒーは、いつもの仕事の
時間にちょっとした優雅なひとときを与えてくれた。

ふと、レイモンド・カーヴァーの短編小説
「ささやかだけれど、役にたつこと」を思い出した。
小説の最後、大きな悲しみの中にある夫婦が、
パン屋の主人の差し出す焼き立てのパンを食べる
ことで、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
もちろんそれで問題が解決するわけではないし、
悲しみが完全に癒やされるわけでもない。
だけどパンを黙々と食べ続けることで、
そんな中でもなんとか生きていくための活力を得る。
ささやかだけど、役にたつこと。
原題では、A Small, Good Thing。
日々の暮らしの中でコーヒーもそんな存在だし、
僕らが作るノートも誰かにとってそんな存在で
あれば嬉しいな。

新しいブレンドをすっかり気に入った僕らは、
もともと10周年記念ブレンドとして期間限定で
販売しようと思っていたけど、定番のコーヒーに
したいと思った。
新しいブレンドの名前の付け方は、
アアルトコーヒーのハウスブレンドにならって、
中深煎りのトラベラーズブレンドに対し、
深煎りの豆はファクトリーブレンドと名付けた。
アアルトコーヒーには、浅煎りのアアルトブレンド
と深煎りのアルヴァーブレンドがある。
アアルトが姓で名前がアルヴァー。
それにあてはめると、トラベラーズは姓で
ファクトリーは名みたいなもの。
なんとなく語感も深煎りっぽい感じがするし、
ファクトリーブレンドに決まった。
トラベラーズにとっては、庄野さんからの最高の
トラベラーズファクトリー10周年のプレゼントに
なった。

そんなわけで、
アアルトコーヒーのファクトリーブレンドは、
トラベラーズファクトリーが10周年を迎える
10月20日よりトラベラーズファクトリー各店に
お目見えする予定です。

正直に言えば、今回はたっぷり一杯分を飲めたわけ
じゃないし、早く自分用の豆を手に入れて、
改めてファクトリーブレンドを味わってみたい。
コーヒーは想像力を与えてくれる飲み物だ。
しみじみとトラベラーズファクトリーの10年間に
思いを馳せながら飲んでみるのもいいかもしれない。
思えば、トラベラーズファクトリーができるとき、
2階をカフェスペースのようにしたいと考えたのは
トラベラーズブレンドがあったからだし、
コロナのせいでしばらくできていないけど、
庄野さんに来てもらってのコーヒーイベントは
トラベラーズファクトリーの定番イベントみたいに
なっている。
そんな庄野さんが10周年を記念して焙煎してくれた
オリジナルブレンド。
皆さんもトラベラーズファクトリーやトラベラーズ
ノートと過ごしてきた日々を思いながら味わって
もらえたら嬉しいです。

10月はトラベラーズファクトリー10周年月間
ということで、さらに恒例の記念缶とあわせて、
いろいろ企画中です。
情報は、公式サイトやSNSで随時アップして
いきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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2021年9月21日

『トラベラーズノート オフィシャルガイド』

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先週『トラベラーズノート オフィシャルガイド』
の見本本が手元に届いた。
製本されて表紙がつけられ本になった状態で
手に取ってみると、やっぱり嬉しい。
今まで何度も確認用のゲラを読んでいるのに、
改めてページをパラパラとめくり、新鮮な気持ちで
つまみ読みをしながら、ここに至るまでのことを
思い出し感慨に耽った。

この本が生まれるきっかけは、
KADOKAWAの馬庭さんという方から
トラベラーズノートの本の企画書と共に届いた
一通のメールだった。
そこには彼女が別の出版社にいた13年前に
僕を取材したときのことが触れられていて、
この企画が最近の思いつきではなく、
ずっとトラベラーズノートに注目していた中で
生まれたということが丁寧に綴られていた。

これまでもトラベラーズノートの本を作りたい
というオファーが何度かあったけれど、
よくある本よりもオマケがメインの企画だったり、
宣伝効果を狙ったマーケティング戦略としてどうか
という提案だったりで、僕らが大切にしている
何かが壊れそうな気がしてずっと消極的な返事を
していた。

正直に言うと13年前の取材のことはあまりよく
覚えていなかったけど、馬庭さんのメールからは
誠実さが感じられ、今までの話とは違った雰囲気
があった。
それでも、これまでの経験からこの手の話には
懐疑的な気持ちがなかったわけではないし、
トラベラーズノートの本を作るのであれば
自分たちが心から納得できるものにしたいけれど、
本当にそんなことができるのかという不安もあった。
今思えば失礼だけど、まずはお話をしてから、
その後のことは考えようと、本のことはあまり
考えないままお会いすることにした。

トラベラーズファクトリーの2階で打ち合わせを
すると、馬庭さんは静かな語り口の奥に熱い想いを
感じさせる方で、トラベラーズノートに対する
深い理解と愛情を伝えてくれた。
僕らが「いわゆるノートのハウツー本みたいなもの
はちょっと違うと思うんです」というと言うと、
「そうですよね。トラベラーズノートってルールが
なくて、自由なところが魅力ですしね」と答える。
漠然と僕らが考えたトラベラーズノートの本は
こうあってほしいという想いと、彼女が考える
作りたい本の形が、共感を伴いながらひとつの
イメージとして浮かび上がってきた。
そして打ち合わせが終わる頃には、自然と一緒に
本を作る企画が進んでいくことになった。

この本は、僕らの意見を聞きながら、
馬庭さんが中心となり編集内容を詰めていき、
何人かのライターやカメラマンが取材をし、
チームプレイで作っていくという形で進んでいった。
もちろんその過程ではお互いの意見の相違があり、
話し合いながら修正を重ねたこともあったし、
無理を押し通してしまったこともあったけれど、
馬庭さんの真摯で丁寧な対応に助けられたことも
多かった。

本には僕自身も少し原稿を書かせてもらっていて、
緊張しながら原稿を送ると、その度に、
ここにぐっときましたとか、共感しますとか、
嬉しくなるコメントを返してくれた。

この本では、いつもトラベラーズファクトリーで
ライブを行ってくれている山田稔明さんや、
アアルトコーヒーの庄野さんをはじめ、
シュペリオールレイバーの河合さん、パトリック
など、たくさんの方にトラベラーズノートとの
暮らしを語っていただいている。
みなさん忙しい中、この本のために時間を割いて
対応してくれた。
僕はコロナの影響でしばらく会っていなかった
パトリックと庄野さんの取材に立ち会うことが
できた(オンラインだけど)。
流山工場のみんなもこの本のために、
トラベラーズの仕事をまとめて取材できるように
スケジュールを調整してくれた。おかげで、
とても良いページになっている。
チェンマイの工房はさすがに今は行けないので
3年前に橋本が撮影した写真で紹介しているけど、
チェンマイらしい温かさを感じるページになった。
もちろん、ページ数の都合でご登場いただきた
かったのに声をかけられなかった仲間もたくさん
いたし、語り足りないこともまだあるけれど、
それはこの本が成功し、第二弾も、というお話が
あったら、ぜひお願いしたいと思っている。

『トラベラーズノート オフィシャルガイド』は、
今年3月にトラベラーズノートが発売15周年を迎え
さらに10月にはトラベラーズファクトリーが
オープン10周年に迎える記念すべき年にふさわしい、
僕らにとっても満足できる本になった。
馬庭さんはじめ制作スタッフの方々、
取材に協力していただいた皆さま、
ありがとうございます。

手元に置いて何度でも読み返して楽しめる本に
なっていると思うし、本全体に漂うトラベラーズ
ノートへの愛と共に、何かを好きになることの
喜びみたいなことがたっぷり感じられて、
読んでいて幸せな気持ちになれる本です。

9月25日にトラベラーズファクトリーをはじめ、
全国の書店に並びます。ぜひ皆様にも手に取って
もらえると嬉しいです。
トラベラーズファクトリーオンラインショップでは
早々に予約分がなくなってしまいましたが、
10月の初めにはオマケのリフィル共々再入荷する
予定ですので、お待ちいただける方はこちらも
あわせてよろしくお願いします!


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2021年9月13日

2022をカスタマイズ

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「そういえば、ダイアリーをカスタマイズをする
んだったな」
仕事が一段落すると、ふとそのことを思い出した。
毎年この時期になるとダイアリーの表紙にシールを
貼ったりして、トラベラーズファクトリーの店頭に
置くためのサンプルを作っている。

早速、工場から届いたばかりの新しいダイアリーと
カスタマイズシールを机の上に並べた。
まずダイアリーの封を開けて、まだ折り目が固い
表紙をめくる。「2022年の誕生日は金曜日か」
ダイアリーを眺めながら、そんなどうでもいいこと
に気づく。
「この頃には安心して旅やイベントができるように
なっているといいな」そういえば、昨年も新しい
ダイアリーを開きながら同じことを思ったような
気がする。

カスタマイズシールの封も開けて、
シールを一枚ずつ取り出しながら眺める。
「昨年の本もよかったけど映画もいいな」
まずはダイアリーにインデックスをつけていく。
位置をずらさずにきっちり貼っていくのにちょっと
神経を使う。なんとなく誕生月だけインデックス
の色を変えてみた。

表紙の内側にポケットシールを貼ると、
ハイライトとも言える表紙のカスタマイズに。
トラベラーズムービーの映画が描かれたシールを
バランスを考えながら貼っていく。
ヒーローもの、西部劇、ロードムービー、SF、
ロマンス、コメディ。
「2022年のおすすめ映画特集みたいだな」
シールが貼られた表紙を見てそんなことを思って、
最後にBEST TRAVELER'S MOVIES OF 2022と
インレタシールで記した。

そういえば昔、よくこうやってインレタシールで
カセットテープのラベルにタイトルを記していた。
僕はこういう所は意外に几帳面で、レコードから
ダビングする度にいちいちインレタを使っていた。
パソコンもプリンターもなかった時代、
インレタで印刷みたいな文字を記せるだけで
感動していたことを思い出しながら、
ひとりでにやにやしながらシールを貼っていると、
それが仕事だということもすっかり忘れて、
ダイアリーのカスタマイズを楽しんでいた。

「まだ発売前に一番乗りでカスタマイズできて、
しかもそれが仕事なんて、いろいろあるけど、
これは幸せなことなのもかもしれないな」
パスポートサイズの表紙には、この前見た
映画「素晴らしき哉、人生!」の原題「IT'S A
WONDERFUL LIFE」とインレタで記した。

楽しい仕事と言えば、トラベラーズファクトリーで
開催している「読書月間」イベントのために、
weekend booksさんから届いた古書を店頭に並べる
ときもそうだ。
店主の高松さんがトラベラーズファクトリーのために
選んでくれた本だから、好きな本に読みたい本が
何冊もあって、眺めているだけでもワクワクする。
それを本を一冊ずつ手に取り、いちいちページを
開いたりしながら店頭に並べているから、作業は
遅々として進まないけど、幸せなひとときでもある。
さらに作業が終わり、本が並んだ平台のテーブルを
しみじみと眺めていると、そこからじわじわと心を
温めてくれる光が放たれているみたいな気分になる。

例年はイベントで並べる本は、高松さんたちが車で
運んで届けてくれるのだけど、昨年はコロナの
影響もあって直接ではなく宅急便で届けてくれた。
今年は久しぶりに僕らが車でweekend booksまで
行って本を受け取りながら、高松さんたちと話を
したいと思っていた。
だけど、緊急事態宣言の延長もあって行くことが
できなくなって、結局今年も送ってもらった。

カスタマイズした2022年ダイアリーの9月の
ページを開きながら、来年の今頃にはいろいろ
落ち着いて、以前やったように高松さんに
トラベラーズファクトリーに来ていただき、
お客さんと本について語り合うようなイベントが
できたらいいなと思った。

コロナ以降、好きな人たちと会って顔を合わせ
ながら、お互いの好きなことについて話をする時間
が足りないということにあらためて気づいた。
今はそれを補うように、日々の中でささやかでも
幸せな時間を見つけて、しみじみ味わうことが
大切なのかもしれないですね。

そんなわけで、トラベラーズファクトリー中目黒
では weekend books 古書コーナー開催中です。
また今月は「読書月間」ということで、
トラベラーズファクトリー各店で本をお買い上げの
方に、オリジナルブックマークをプレゼント中です。
毎年weekend booksさんと開催してきた「読書月間」
も今回で10回目ということで、活版印刷でプリント
されている本も第10巻になりました。
今回は落ち着いた色合いのメタリックパール加工が
施された紙で作っています。

また、いよいよ9月16日にトラベラーズノート
2022ダイアリーが発売となります。
トラベラーズファクトリー中目黒、ステーション、
京都、オンラインショップでは恒例の2022デザイン
のオリジナル革タグのプレゼントも行いますので、
ぜひ楽しみにしてください。


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2021年9月 6日

TRAVELER'S TIMES Vol.16

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先週末、KADOKAWAの編集の方より、
9月25日に出版するトラベラーズノートの本、
『トラベラーズノート オフィシャルガイド』が、
無事校了しましたとの連絡をいただいた。
これまで何度もゲラをチェックして、気になる部分
や間違いを直してもらったり、さらに編集の方からも
ここはこれは大丈夫なのかと確認があったりして
(実際にそれで救われたミスもいくつかあった)
最近バタバタしていたのだけど、その作業も終わり
いよいよ印刷と製本がはじまる。
だけど、そのときの気分は終わった安堵感よりも、
本当に大丈夫なのかという不安の方が大きい。

同じ日、本の校了と時をあわせたかのように、
刷り上がったばかりのトラベラーズタイムズの
最新号が手元に届いた。
トラベラーズタイムズの完成品を開く瞬間には、
いつも不思議な緊張感に包まれる。
もちろん、まだインキの匂いがほのかに漂う紙面
を眺めながら、ついに出来上がったんだなあ、と
感慨に浸ることがないわけでないのだけど、
それ以上にこの瞬間に誤字を見つけたらいやだなあ
という不安の方が大きく心に湧き上がってくる。
以前まさにこのタイミングで、間違いを見つけた
ことがあって、それまで自分も含め複数のスタッフが
何度もチェックしてきたにも関わらず、刷り上がりを
パラパラとめくっただけで誤字を見つけてしまった
ときは、思わず頭を抱えてしまうほど落ち込んだ。

幸い、今回は今のところ誤字は見つかっていない。
もし皆さまのお手元に届き、誤字・脱字を見つけても
温かい心で受け止めていただけると嬉しいです。

そんなわけで、トラベラーズカンパニーが年1回だけ
発行するフリーペーパー、トラベラーズタイムズ16号
は、2022ダイアリーの発売日と同じ9月16日より、
トラベラーズファクトリーをはじめ、日本全国の
取扱店舗にて配布がはじまります。

トラベラーズタイムズ16号のテーマは、
「15th Anniversary of TRAVELER'S notebook」。
表紙は、いつもだったら旅先で撮影した
トラベラーズノートの写真が定番なんだけど、
昨年からずっと旅らしい旅をしていないこともあり、
今回は橋本がデザインした15周年のロゴを
僕がファクトリー2階の黒板にチョークで描いて、
それを橋本が撮影した。
これはこれで、コロナ禍の今らしい表紙になった
と思っている。

最初のページには前にここで書いたように
15周年を迎えるにあたっての言葉を綴った。
個人的には、最近もやもやと頭にめぐっていた
トラベラーズノートに対する思いみたいなことを
まとめることができたと思っている。
時間をかけて言葉を選んで、何度も書き直して
仕上げたので読んでいただけると嬉しいです。
さらに8名の方によるB-Sides & Raritiesの
素敵な使い方の紹介に加え、
「How Do You Use TRAVELER'S notebook」では、
放送作家でくまモンの生みの親でもある
あの小山薫堂さんにご登場いただいています。

小山薫堂さんは、KADOKAWAさんの本にも
ご登場いただいているのですが、トラベラーズ
ノートユーザーでもあるのです。

もともとのきっかけは、トラベラーズタイムズ9号
に登場いただいている脚本家の倉本聰さん。
倉本さんはドラマの小道具としてトラベラーズノート
を使って以来気に入ってくれて、その後もご自身の
脚本の草稿や点描画を描くのに使っている。
ある時、倉本さんから連絡があり、小山薫堂さんに
プレゼントとして贈りたいからとトラベラーズノート
を注文をしてくれたことがあった。
僕らは小山さんも気に入って使ってくれるといいな
と思いながら、丁寧にラッピングしてお送りした。

それから何年かして、テレビで小山薫堂さんを
見たとき、そのかたわらにトラベラーズノートが
あるのを見つけ、さらにWEB記事でトラベラーズ
ノートを手にしながら、旅日記について語っている
姿を見て、実際に使ってくれているのを知った。

KADOKAWAさんと本の打ち合わせをした際に、
そのことを話したら、ぜひご登場願いましょうと
なって、小山さんにコンタクトしてくれて、
その際に、同時にトラベラーズタイムズへの登場を
依頼すると快諾してくれた。

小山さんと話をすると、トラベラーズノートを
使うのがさらに楽しくなるキーワードになりそうな
言葉をたくさん話してくれて、とても楽しい取材に
なった。
トラベラーズタイムズには、そんな小山さんの言葉
が詰まっていますので、ぜひ楽しみにしてください。

今回のトラベラーズタイムズは、
『トラベラーズノートオフィシャルガイド』と
ちょうど同じ時期に制作していたこともあって、
僕らとしては、タイムズが『オフィシャルガイド』を
補完するB面のような存在になればいいなと思って
制作した。
『オフィシャルガイド』がトラベラーズノートの
世界をまとめた全集みたいな存在なら、今回の
タイムズはその付録の小冊子やあとがきみたいな
存在にもなっていると思っている。
なので、ぜひ『オフィシャルガイド』とあわせて
タイムズ16号も手に取って読んでいただけると
嬉しいです。

『オフィシャルガイド』のことは、
またあらためてこちらで書きたいと思います。


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2021年8月30日

2022 DIARY

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先週、トラベラーズノート 2022ダイアリーの
情報を公式サイトにアップしました。
2020年は「TRAVEL TOOLS」、2021年は「本」
というように、毎年テーマを決めて、
シールや下敷などのダイアリー関連アイテムを
作っているのだけど、2022年のテーマは
「映画とサウンドトラック」になります。

今回のテーマを決めるときのこと。
3月にリリースした「B-Sides & Rarities」が
個人的にもけっこう気に入っていたので、
「そのままダイアリーも同じテーマでいかない?」
と僕は深く考えずに橋本に話してみた。すると、
「ダイアリーって毎年必ずリリースしているし、
毎日使うリフィルでもあるし、B面というより
A面だと思うんですけど...」と言われ、確かに
そうだと思った。

じゃあ、ダイアリーをレコードに例えてみると
なんだろうと思いを巡らせ、浮かんできたのが
映画のサウンドトラックだった。
サウンドトラックを聴くと映画のシーンとと共に、
観たときの感情も頭によみがえってくることが
あるけれど、それが古いダイアリーを眺めたときに、
そのダイアリーを使っていた頃の風景や感情が
よみがえってくることに似ていると思ったのだ。
サウンドトラックの音楽には、
その映画の物語が記憶と結びついているように、
使い終わったダイアリーにはその1年間の記憶が
詰まっている。

それに自由に旅ができないなかで、
自分自身も家で映画を見る機会が増えているし、
今まで想像もできなかったことが起こり、
先が見えないこの時代を生きていくこと自体が
どこか映画の出来事みたいな気もする。
ならばいっそ映画の登場人物になった気分で、
2022年を過ごしてみたら、前向きになれるの
かもしれない。
そんなことを考えながら、2022年ダイアリーの
テーマを「映画とサウンドトラック」に決めた。

TRAVELER'S notebook is like a movie
soundtrack that brings back memories.
(トラベラーズノートは物語の記憶を思い出
させてくれる映画のサウンドトラックみたいだ)
まずはタイトルになるようなテキストを考えて、
サウンドトラックのレコードをプレイヤーで
聴いているシーンに映写機などの絵も描いた。

本がテーマだった2021年の下敷やカスタマイズ
シールは、文学作品がデザインのモチーフになって
いるけど、これらの文学作品は著者が亡くなって
から何十年か経って、パブリックドメインになって
いるものから選んだ。
だけど映画ではそれは難しい。
ならばトラベラーズムービーの架空の映画という
ことにしてしまおうと橋本と考えていった。

遠く離れた惑星から地球にやってきたトラベラーが、
ノートを手にすることで得ることができる人間離れ
した特殊能力をもとに、地球のさまざまな悪と戦い
活躍するヒーロー映画『トラベルマン』。

西部開拓時代のアメリカ。ノートに計画を記して
強盗や泥棒を繰り返すアウトローでありながら、
同時に権力者に抗い弱く貧しい庶民の味方だった
旅人が主人公の西部劇『ビリー・ザ・トラベラー』。

謎の革のノートとホモサピエンスの祖先である猿人
との接触からはじまり、月面、金星までの旅を通し
人類の未来を暗示する壮大なSF叙事詩
『2022年 宇宙の旅』。

戦国時代、野武士の略奪に悩む山村の百姓の前に
突如現れた7冊の革のノート。そこに記されていた
秘策に加え、新たに書き込まれたアイデアなどに
よって、百姓が協力して野武士の襲撃から村を守る
日本映画の金字塔『七冊のトラベラーズノート』。

ブルックリンのディスコに毎週土曜日になると
ノート片手に現れるトラベラー。軽快でキレのある
ステップでみんなを圧倒する。そんな彼がノートに
綴った旅の日々がもとになったディスコ映画
『サタデー・ナイト・トラベラー』

自由で進歩的なため、保守的な村人となじめない
美女が、ある日ノートを手にした旅人と出会う。
旅人は魔女の呪いによってひとつの場所に留まる
ことを許されず、常に旅を続けなければならない。
美女はそんな旅人に恋をして...。古典戯曲が原作の
アニメーション映画『美女と旅人』。

自由を追い求めて広大なアメリカを旅した破天荒な
若者たち。主人公の作家は、常にノートを携えて、
その旅を記録していった。旅文学としてさまざまな
アーティストに影響を与えた不朽の名作を映画化した
ロードムービー『オン・ザ・トラベラーズ・ロード』。

いや〜、こういうのを妄想するのって楽しいですね。
モチーフは下敷やカスマイズステッカーにあるので
探してみてください。
本当ならそれぞれにぴったりのサントラも録音して、
ショートムービーみたいなものが作れたらもっと
楽しいと思うのだけど、そこまでの技術もお金も
ないので、まずは想像の中で映像を再現しましょう。

ということで、2022年はトラベラーズノートの
ダイアリーとともに、自らが監督になった想像の
映画の主人公になった気分で過ごしていただけたら
嬉しいです。9月16日発売です。


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2021年8月23日

サウンドトラックを聴く

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それらしい気分がほとんどなかった夏休みが
終わると、夏の日差しは少しずつ勢いを弱め、
秋の気配が近づいているのを感じるようになった。
毎年言っているような気がするけど、
僕はこの夏から秋に変わる時期が苦手だ。
例えば夕暮れ時、ふと吹き抜けていく風に
これまでのむせ返るような生ぬるさが影をひそめ、
ほのかに漂う冷気を感じるようになると、
涼しい風を心地よく感じる以上に、物寂しく
切ない気分がじわじわと心の中に広がってくる。
そんなメランコリックな気分を紛らわすように、
最近は映画のサウンドトラックをよく聴いている。

例えば『イージーライダー』のサウンドトラック。
ワイルドでいこう(Born To Be Wild)」を聴けば、
近所を自転車で走っていても、ハーレーを転がして、
アメリカの荒野を走っているような気分になれるし、
最後のロジャー・マッギンの「イージーライダーの
バラード
」まで聴けば、自由を求めた旅の行く末
までも追体験できる。

「川は流れていく。海に向かって流れていく。
 川がどこへ流れようと、俺は共に流れていたい。
 川は流れていく。流れる水で俺の汚れを洗い流し、
 どこか他の街へと連れていってくれないか。
 (イージーライダーのバラード)」

感傷的になりやすいこの季節にぴったりの歌詞だ。

物哀しい夕暮れ時には、
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』
サウンドトラックがいい。
映画音楽の巨匠と呼ばれたモリコーネによる哀愁を
感じるサントラを聴きながら、ロバート・デ・ニーロ
扮するギャング、ヌードルスの波乱万丈な生涯に
想いをはせると、自分の悩みなんてそれほど大した
ことがないように思えてくる。

家にいても、サウンドトラックを聴くだけで
旅気分に浸るのことができる。
『2001年宇宙の旅』の「美しく青きドナウ」を
聴けば、パンナムの宇宙船を思い出すし、
『スター・ウォーズ』のテーマソングを聴けば
きっと誰もがスター・デストロイヤーが周りの
戦闘機を蹴散らしながら、宇宙空間を進んでいく
シーンが頭に浮かぶはずだ。
僕は『ダージリン急行』の影響で、キンクスの
「This Time Tomorrow」を聴くと、
インドの駅で電車に飛び乗るような気分になるし、
『ライフ・アクアティック』の影響で、
シガーロスの「Staralfur」を聴くと、潜水艦で
深海を旅してジャガーザメに巡り合った気分になる。

さらにサウンドトラックは時間を超えた旅へと誘う。
ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」を
聴けば、少年時代の冒険気分を思い出すし、
ビー・ジーズの「メロディ・フェア」を聴けば、
幼い頃のほのかな恋心を思い出す。
ルネサンス期のイタリア、三国志の時代の中国、
西部開拓時代のアメリカに、戦国時代の日本、
さらに未来へだって想像の旅をすることができる。

映画のサウンドトラックを聴くだけで、
その映画のシーンが頭に浮かび、その時の感動や
興奮、ときめきまでも心によみがえってくる。
いつもだったら、夏から秋へと移り変わる季節は、
イベントなどでバタバタと忙しくしたり、
旅をしたりすることで憂鬱な気分で紛らわすのだけど、
旅もイベントもできない今は、サウンドトラックで
旅気分を感じるのもいいかもしれないな。

さて、先週インスタなどでお知らせしたように
『トラベラーズノート オフィシャルガイド』が
9月25日に発売になります。
そのいきさつや詳しい内容のことは、
後日ここでも書きたいと思うけど、書籍としては、
初めてトラベラーズノートの本が出版されるという
ことで、僕ら自身もワクワクしている。
たくさんの人の好きが詰まっていて、読んでいると
幸せな気持ちになれる本になっていると思っている
ので、ぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです。
トラベラーズファクトリー店舗とオンラインショップ
でもこちらの本を販売しますが、ファクトリー限定の
ちょっとしたオマケもご用意しようと思っているので
あわせて楽しみにしていただけると嬉しいです。

また、今週水曜日、8月25日の夜に、
トラベラーズファクトリースタッフによる
インスタライブを開催します。
今回は、現在店頭やオンラインショップで展開中
の「フィルムカメラを楽しもう」をテーマに、
カメラ好きスタッフが登場し、いろいろ語って
くれる予定です。

さらに木曜日、8月26日には、毎年恒例の
2022年ダイアリーの情報を公式サイトにアップする
予定です。こちらもぜひ!


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2021年8月16日

本と映画の夏

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オリンピックもほとんど見なかったし、
2014年から続けているトラベラーズバイクでの
日本一周の旅もコロナのせいで2年連続で休みと
なってしまい、今年の夏は本を読んだり、
映画を観たりする時間がいつも以上に多い。

本を好きになったのはいつからだろうか。
小学生の頃、『ロビンソン漂流記』と
『十五少年漂流記』を学校の図書館から借りて
読んで面白くて興奮したのをうっすらと覚えている。
だけど、「こんな冒険をしてみたいです」と
読書感想文に書いて提出したら、二重丸の横に
「冒険は本の中だけにしましょうね」と夢のない
コメントが先生によって書かれて戻ってきたのは、
けっこうはっきり覚えている。

その頃は、隣町にあった勝山書店が行きつけの
本屋だった。2階建の小さな街の本屋さんで、
1階には雑誌と新刊本、2階は文庫本と漫画本が
置かれていた。
小学○年生とか少年ジャンプを買うついでに、
なんとなく背伸びした気分で文庫本コーナーを
覗いて手に取った星新一の『ボッコちゃん』が、
はじめて自分で買った大人向けの文庫本だった。
ひとつひとつの話が短くてこれなら読めそうだと
思ったのと、真鍋博による未来を感じさせるのに
どこか懐かしい不思議な挿絵に魅かれて、
思わずレジまで持って行った。
それからすっかり星新一のショートショートに
ハマり、既出の文庫本はほとんど読んでしまった。

その次にハマっていったのは、
星新一のエッセイによく登場していた
筒井康隆と小松左京の小説だった。
そのうち勝山書店では物足りなくなって、
自転車に乗って神保町の三省堂に通うようになった。
はじめて訪れたときは、まるで本のデパートみたいで
いたく感動した。

映画との出会いは、まずはテレビだった。
まだビデオも一般的ではなかった当時は、
月曜ロードショー、木曜ゴールデン洋画劇場、
日曜洋画劇場などテレビでよく映画を放映していた。
だから、チャップリンにヒッチコックから、
「ローマの休日」「猿の惑星」「ロッキー」など、
名作映画の多くは家族でテレビの画面で観たのが
最初の出会いだった。
ゴールデン洋画劇場のオープニングは、
ファンタジー、西部劇、アクション、サスペンス、
SF、恋愛ものなどの映画を連想させる場面が、
それっぽい音楽とともにテンポよく切り替わっていく
和田誠による映画賛歌のようなアニメーションで、
見ていると、いよいよ映画がはじまるんだなと
わくわくして好きだった。
和田誠も、星新一の本の挿絵をよく描いていたので、
知っているものが繋がるのも嬉しかった。

初めて子供だけで映画館まで観に行ったのは、
アニメ映画の『銀河鉄道999』で、場所は錦糸町の
楽天地だった。
映画の内容以上によく覚えているのは、
銀河鉄道999の定期券、パスのことだ。
先に映画を観た友人が、映画館で買ったという
パスを見せてくれた。
主人公の星野鉄郎が持っているパスと同じように
「地球ーアンドロメダ 無期限」と印刷されている
だけの紙のカードみたいなものなんだけど、
これがあれば自分も999で旅に出るような気がして、
映画館に行ったら絶対に買おうと思った。
だけど、僕が映画を観に行ったときには、すでに
完売になっていて手に入れることができなかった。
落胆した僕はどうしても諦めきれず、家に帰ると、
厚紙を使って手書きでこのパスを作った。
そして想像の中で銀河鉄道の旅を楽しんだ。

家から三省堂までは、自転車で30分くらい。
当時、新大橋を渡って隅田川を越えると、
川沿いに両端を柵で囲まれた細い道があった。
これがまるで『スターウォーズ』のクライマックス、
デススターの唯一の弱点を攻撃するために、
追撃をかわしながらルーク・スカイウォーカーの
操縦するXウィングがデススター表面の溝を飛行
するシーンみたいで、映画を見たばかりだった僕は、
この道をスターウォーズ気分で自転車で滑走した。
その頃、僕にとって隅田川は、東京の下町エリアと
中心部を隔てる壁のような気分で、橋を渡ることで
大人になったような気になった。

本が好きだから、本屋さんが書いた本が好きだ。
最近読んだのは、先週のブログの引用元、
『ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を』に、
『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』と
『ガケ書房の頃 完全版 ――そしてホホホ座へ』。
本屋を続けていくのは、この時代なかなか大変
そうだけど、僕にとって憧れの仕事でもある。

ただいま、トラベラーズファクトリーでは、
「フィルムカメラを楽しもう」という企画を
開催中です。
京都の写真屋さん、Photolabo hibiとの
コラボレーション企画や、オリジナルリフィル、
Benlly's&Jobのカメラストラップなどを展開中です。
またRyuさんがレストアしてくれているハーフカメラ
もいつもよりラインナップを広げて展開中です。
ハーフカメラは、フィルムカメラながらコンパクト
で持ち歩きやすいし、フィルムの倍の枚数を撮影
できてお得だし、初心者にもおすすめのフィルム
カメラです。
なによりこの時代のカメラは、眺めているだけでも
うっとりするような美しさがあります。
僕も久しぶりにフィルムカメラで写真を撮って
みようかな。

各地で観測史上最大の大雨が降り、
コロナの感染者や重症者数は過去最多を更新。
まるで世界は昔読んだSF小説のようです。
とにかく安心して旅ができるような日が
早くやってくるのを願うのみです。


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(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。