2020年9月14日

2021ダイアリーと5か月ぶりのエアポート

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先週、トラベラーズノート2021ダイアリー
の発売日を迎えた。
今年はこんな状況なので、正直に言えば不安も
あったけど、発売日のトラベラーズファクトリー
中目黒や東京駅、京都にはたくさんの人が来て
くれたし、オンラインショップも例年以上に
オーダーをいただき、まずはほっとしている。
ありがとうございます。

最近、コロナ禍の影響でテレワークが進み、
スケジュール管理のデジタル化がさらに進んで
いるという。
そのためなのか、今年はダイアリーの販売が
厳しいとの声を営業から聞いたりする。
今ではうちの会社でもミーティングの予定は
グーグルカレンダーで管理するようになった。
他の人と簡単に共有できるし、これはこれで便利
なんだけど、やっぱりトラベラーズノートの
ダイアリーが必需品であることには変わりはない。

僕の月間スケジュールには、予定だけでなく
余白に電話番号をメモしたり、今月やりたいと
思うことを書き留めたり、暗号のような数字や
ふざけた落書きがあったりして、それを眺める
ことで、その時の状況がイメージできる。
また日記のように過去のページをめくりながら、
しみじみと思い返したり、未来のページを開く
ことで想像が膨らんだりするのも紙のダイアリー
ならではの良さだと思う。
デジタルは、過去のページを振り返り何かを
思い出したり、未来のカレンダーを眺めて
わくわくしたりするには現実的すぎるけれど、
紙にはロマンチックで情緒があるんですよね。

もちろんデジタルの良さもあるので、
これからはそれぞれの特徴や機能を活かしながら
使い分けていくことになるのかもしれない。

発売の前日、中目黒でweekend booksから
届いた古書とともにダイアリーを並べていると、
紙がもたらす懐かしさや温かさ、心をワクワク
させてくれる空気はいいなとあらためて思った。

また先週末、ダイアリーの発売とあわせて、
ずっと休業しているトラベラーズファクトリー
エアポートを2日間だけ臨時営業した。
成田空港は相変わらず飛行機の便は少ないし、
施設内の店の多くが休業し、人も少なく閑散と
している。先行きも未だ不透明で、いつ営業を
再開できるのかめども立っていない。
そんな中だけれど、ダイアリーの発売を機に、
試験的に2日間だけ営業することにした。
休業がはじまったのが4月8日だから、約5ヶ月
ぶりのオープンだ。

ダイアリーの他にも休業中に発売した商品を
並べ、掃除をして、さらに感染予防のシートを
設置したり、消毒液を用意したり、バタバタと
準備をして迎えた当日。
たくさんの方が飛行機に乗って海外へ旅する
ためではなく、トラベラーズファクトリーに
来るために成田空港まで足を運んでくれた。
みなさん臨時営業を喜んでくれて、この場所が
たくさんの方に愛されているのを実感すること
ができて、本当に嬉しかったです。
僕も土曜日に立ち寄ったのだけど、
「来ちゃいましたよ」と久しぶりにお会いする
お客様に声をかけてもらい、楽しく話をさせて
もらいました。

以前のように、成田空港に世界中の旅人が
行き交うようになるのがいつのことなのか
まったく予想もできないけれど、まずは今後も
不定期で臨時営業をしていきたいと考えている
のでよろしくお願いします。
そして、また皆さんが海外への旅をすることが
できる時までなんとかがんばっていきたいと
思います。

さて、トラベラーズファクトリー エアポート
を出ると、展望デッキで飛行機を眺めてから
連絡バスで第2ターミナルへ行った。
第2ターミナルから東成田駅まで通じている
地下通路がある。実はこの通路を歩いて、
東成田駅まで行くのがちょっと楽しい個人的
おすすめスポットなのです。
約500メートルの通路は、無機質でほとんど
歩く人もいないため、昔のSF映画のセットの
ような不思議な気分が味わえる。

さらにしばらく歩いてたどり着く東成田駅は、
成田開業時から1991年まで成田空港駅として
使われていた駅で、薄暗い入り口はがらんと
広く廃墟のような雰囲気が漂っている。
ホームの向こうには、現在では使われていない
薄暗いホームが残っていて、「成田空港駅」の
看板が付けられたままになっている。
ここもまた映画のワンシーンに紛れ込んだような
気分が味わえる不思議な空間です。

今回は東成田駅から、さらに日本一短い私鉄、
芝山鉄道に乗って、芝山千代田駅へ行った。
飛行機が間近にある車窓を眺めながら、
駅に着くと、歩いて成田空港温泉へ。
サウナに入ったり露天風呂に浸かりながら、
ゆっくり過ごして家に帰った。
今回は行かなかったけれど、成田駅で降りて
成田山新勝寺をお参りして、うなぎを食べる
のも良し、閑散とした成田空港を見てみる
ということも貴重な体験です。
トラベラーズファクトリー エアポートの
次の臨時営業の際は、成田めぐりとあわせて
ぜひ遊びに来てください!


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2020年9月 7日

恥の多い生涯を送ってきた

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先々週、幼稚園での記憶を書いたけど、
もうひとつ、今も記憶として残っている
幼稚園でのできごとがある。
あまりいい思い出ではないし、面白いオチが
ある訳でもないから、誰にも話をしたことが
ないけど、今でもなぜかたまにその時のことが
頭の中に蘇ってくる。
最初に断っておくと、ちょっと汚い話で
申し訳ないのですが、僕は幼い頃からお腹が
ゆるくなりがちだった。
それで幼稚園で大を一度漏らしてしまったのだ
けれども、その翌年も同じことをしてしまった。
先生に手伝ってもらいながらなんとか処理が済み、
それなりに反省をしながらトイレに出ると、
すでに他の園児たちはバスで帰っていた。
少しほっとして、外にいた先生のところへ行くと
「お母さんがもうすぐ迎えに来るから待っていて」
と言われた。
季節は夏休みが終わって間もない頃だった。
僕は、日陰に立っていた先生から少し離れた
ところに遠慮がちに立ち、照りつける日差しを
浴びながら、所在なげに母親を待っていた。
すると、一緒に待ってくれていた先生は
手にしていた汚れた下着の入ったビニール袋を
少しだけ持ち上げて、となりにいた先生に
小声で話しかけた。

「年長になってもこういうことってあるのね」
「そうねえ、うちではじめてじゃないかしら」

もちろん先生たちは聞こえないように話をして
いるつもりだったので、僕も聞こえないふりを
して、平静を装っていた。
だけど、頭の中では、情けなさとか、
申し訳なさや悔しさが台風のようにぐるぐると
渦巻き、泣き出したい気持になっていた。
このことを電話で聴いているはずの母親は
どんな顔をしてここにやって来るのだろうか。
きっと僕はヘラヘラと苦笑いをしながら、
大したことないふりをして迎えるのだろう。
そんなことを幼いながらに
脳内シミュレーションしながらも、
できればこの日一日をなかったことにして、
ただこのまま消えてしまいたかった。

だけどこの日はなかったことにはならずに、
記憶にもしっかり刻まれながら、消えてしまう
こともなく、あれから50年近く生き長らえている。
ふと、この記憶がきっかけになり、
過去をめぐって脳内トリップしてみると、
ここに書くのは憚れる、この種の恥ずかしくて
情けない思い出が次々と頭に浮かんできた。
そうか。似たような経験を繰り返すたびに、
過去の記憶が呼び戻されて頭の中で再現される
から、50年も忘れずに残っていたんだな。

「恥の多い生涯を送って来ました...」
太宰治の『人間失格』のフレーズを思い出し、
ひとり苦笑いをした。
今まで自分の半分は、ロック・ミュージックで
できていると思っていたけど、本当は
人に知られたら恥ずかしい記憶が積み重なって
できているのかもしれない。
でも、自分の半分がロック・ミュージックで
できているという考えも十分恥ずかしいな。

さて、今週の木曜日9月10日は、
いよいよ2021ダイアリーが発売、あわせて
トラベラーズタイムズ15号もリリースします。
今年のダイアリーは本がテーマということで、
トラベラーズファクトリーでは、
毎年開催しているweekend booksさんの
古書コーナーとあわせて、2021ダイアリーの
下敷やカスタマイズステッカーのデザイン
モチーフとなった古書も一緒に展開します。
さらに11日、12日には4月以来休業をしている
トラベラーズファクトリーエアポートが、
2日間臨時で営業を再開します。
そして、トラベラーズファクトリー店頭および
オンラインショップでは、毎年恒例の革タグの
プレゼントもあります。

そんな訳で、ダイアリー2021の発売に向けて、
今週は久しぶりにいろいろなことが動き出す
ということで、バタバタと準備を進めている。
ぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです。
もちろん、いろいろ気をつけながらでは
あるけど、やっぱり誰かが喜んでくれる姿を
想像しながら、仕事をするというのは楽しい。
恥の多い人生を送ってきたけれど、
今、心からそう思って仕事ができているという
のは、誇ってもいいことだと思ったりもする。
2021年もトラベラーズノートをよろしく
お願いします。


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2020年8月31日

2021年1月1日、どんなことをダイアリーに書くのだろう。

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トラベラーズノート2021年ダイアリーの情報を
公式サイトにアップしました。
サイトにも書いた通り、今回のデザインテーマは
本とトラベラーズノート。
下敷やステッカーは、旅を感じる文学作品を
モチーフにデザインしています。

ダイアリーのテーマは、いつも橋本と話をしながら
決めるんだけど、今回はコロナ禍ということも
あって、リアルな旅ではなく、家にいながらでも
旅を感じられる本を題材にすることにした。
旅どころか外出すらも憚られた緊急事態宣言中は
僕自身も本とノートととも過ごすことで
本当に救われたような気持ちになったし、
今にぴったりのテーマだと思った。

このことを言ってしまうと、ダイアリーの制作を
ぎりぎりでスケジュールで進めていのがバレて
しまうのだけど、まさにこの緊急事態宣言の
真っ最中にテーマを考え、デザインを詰めて、
データを入稿していった(デザインしたのは
橋本だけど)。
ちなみにミドリや他の多くのメーカーでは、
1月頃には、ほぼすべてのダイアリーの
デザインが決まっていて、4月中には小売店が
オーダーするためのカタログができていたりする。
トラベラーズノートのダイアリーは、
そういった業界のメインストリームの流れには
ついていけずに、いつもぎりぎりの進行になって
しまっている。

だけど、3月以降、世界がそれまでとすっかり
変わってしまった今年のような状況では、
ぎりぎり進行していたからこそ、時代に
寄り添ったデザインにすることができた訳で、
ぎりぎりも悪くないことかなと思ったりもする。
旅が最も大事なテーマのトラベラーズにとって、
自由に安心して旅ができないこの状況に触れずに
海外への旅や旅の道具などを提案しても、
リアリティがないものになってしまうからね。

先週、そうやってコロナ禍の中で作り上げた
ダイアリーのサンプルが、手元に届いた。
封を開けて、真新しいページをめくり、
何も書かれていない空白のスケジュール欄を
眺めていると、2021年をどんな気持ちで迎え、
何をここに書くことになるのか、しみじみと
考えてしまう。

今、未来は深い霧に覆われたように不確かで、
1ヶ月先のことだって誰にも予想できない。
このダイアリーを実際に使い始めることになる
2021年の1月1日に、自分や家族、仲間が健康で
いるのか、安心して仕事を続けられているのか、
平和だと思える世界になっているのか、
もちろんそうあってほしいけど、今はきっと
多くの人が、自信を持ってイエスと言うことが
できないはずだ。

だけど、そんな時だからこそ
ワクワクすることが大切なんだよね。
世界の片隅のどこか隠れているような、
ほうっておけば消えてしまいそうな、
小さな希望の光を探し出して、畑を耕すように
丁寧に育てあげて、未来を明るく照らせるくらい
大きくしていく。
自分たちが愛していたり、信じていることから
ポジティブな魅力を引き出し、拡散していく。
そのために世界を俯瞰し、直感を研ぎ澄まし、
深く思いを巡らせていく。

最近、ビリー・アイリッシュの新曲『My Future』
を聴いて、すっかり感動している。
18歳の女の子が強い覚悟で世界と対峙し歌う、
美しいメロディーとポジティブなメッセージに
51歳の僕が目頭を熱くしている。
テイラー・スウィフトの新作もそうだけど、
より厳しい状況にあるアメリカで、
コロナ禍を踏まえたながら、希望を感じさせる
素晴らしい作品が若い世代によって生み出されて
いることに明るい未来を予感する。
ビリー・アイリッシュも言っているように、
未来は自分達の手の中にあることを忘れないよう
にしないといけないな。

ダイアリーに話を戻すと、
今回のテーマは、本とトラベラーズノート。
リアルな旅が出ることができない今、本を読む
ことで想像の旅をしてほしいと想いがあるけど、
もうひとつ、こういう不安定な時ほど
たくさんの物語に触れてほしいとの想いもある。

コロナにしても、政治的な問題にしても
たくさんの相反する情報が入り混じり、
何を信じて、どう振る舞えばいいのか、
とても分かりづらくなっている。
だけど、善と悪、白と黒をはっきり切り分け
られるほど世界は単純ではないし、正しい答え
だってひとつではない。
デザインモチーフとして選んだ物語は、
たいていの名作と呼ばれる作品と同じように、
登場人物が悩んだり、失敗したり、挫折したり
しながら、生きている話だ。
物語に触れることで、何か明確な答えを教えて
くれる訳ではないけど、生きていくための指針
を学ぶことはできる。
今こそ物語の力が必要だと思っている。

2021年をどんな心持ちで迎えるのか。
それを決めるのは自分たちだし、
前向きでワクワクしながら迎えるためには、
今自分ができることを精一杯誠実にやっていく
だけなんだよね。
2021年は、トラベラーズノートを手にする
たくさんの方々と会って笑顔で話ができると
いいな。

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2020年8月24日

なりたいものは別になかった

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幼い頃の薄い記憶がぼんやりと蘇ってくる
ことがある。
たぶんその日は、幼稚園で誕生日会のような
ものが行われていたのだと思う。
その月に誕生日を迎えた4、5人の園児たちが、
みんなの前に並んで立っていて、僕はその中の
ひとり。
先生は「将来何になりたいですか?」という
質問を投げかけ、園児はひとりずつ答える。

あの頃の僕は、そういったことを聞かれると、
いつもパイロットと答えることにしていた。
本気でパイロットになりたいと思っていたかと
言われると、実はそうでもなかったのだけれど、
幼い頃はよくその質問を聞かれたので、その都度
悩まなくてもいいように答えを用意していたのだ。
スポーツが得意な訳でもなく、目立ちたがり屋
でもないし、ましてはそういう時にウケを狙う
ような機転のきいた子供でもなかった幼い頃の
僕にとって、パイロットは無難な答えだった。

そんな訳で、その誕生日会でもパイロットと
答えるつもりで、深く考えることなく自分の番を
待っていた。
すると、自分の順番がくる前に他の子が
パイロットと答えてしまった。
今思えば、そのまま僕もパイロットと言っても
良かったのかもしれないけど、予想外の事態に
慌ててしまい、何も思い浮かばない中で
必死で考えて口から出た言葉はなぜか
「僕は将来お父さんになりたい」だった。
もちろん積極的にお父さんになりたいと
思っていた訳ではない。ただ、野球選手に歌手、
ケーキ屋、おもちゃ屋など頭に次々と浮かんだ
なりたいもの候補を消去法で探していく中で、
唯一なってもいいと思えたのがお父さんだった。

僕の答えを聞くと、その場にいた先生や保護者が
みんな笑い出した。
面白いことを言ったつもりはない僕は、
どうしてみんなが笑っているのか分からなかった。
だけど、場違いで間違った答えを言ってしまった
ということは察することができた。
幼い頃の記憶は断片的で、その前後のことは
ぜんぜん覚えていないのだけど、あの時感じた
恥ずかしさや哀しさ、後悔が入り混じった
どんより沈んだ気持ちは、なぜか今でも鮮明に
覚えている。

そのことがトラウマになっているのかは
よく分からないけれど、僕は大勢の人の前で
話をするのが苦手だった。
滑舌も良くないし、うまく話をまとめることが
できず、もやもやした感じで終わってしまうこと
が多い。
大人になって、人の前で話す機会が増えたけど、
今でも思いつきで何かを話そうとすると、
ぐだぐだになりがちで、満足するような結果に
なることはほとんどない。

話は変わりますが、先週、
トラベラーズファクトリー京都の限定アイテム
をセットした「KYOTO EDITIONセット」を
オンラインショップで発売しました。

各店舗の限定アイテムは、実際にその場所を
訪れる体験を伴いながら手にしてほしいとの
想いがあり、今まではオンラインショップで
販売をしたことがなかった。
だけど、京都はオープンから二ヶ月経つ中で
いまだに旅をすることができない方が多いこと
もあり、初めての試みとしてまずはやってみよう
ということになった。
その場所を訪ねる体験については、
店舗をご案内する動画をご覧いただくことで、
擬似体験してもらおうと考えた。
こんな時だからこそ、京都限定アイテムを手に
しながら動画を見ることで、京都を旅したような
気分になってもらえたら嬉しいと思った。

そんな訳で、なんとか夏の旅の季節に発売したい
と考え、商品の手配からセット組み、サイトの
ページ作りまでスタッフみんなでバタバタと進め、
先週の発売を迎えることができた。
僕もお盆休みの直前に橋本と京都へ行き、
閉店後の夜と開店前の朝に動画を撮影。
京都の店長が店内を案内し、その横で私が
コメント差し込み、橋本がデジカメで撮影して
編集した。
行き当たりばったりのぶっつけ本番だったけど、
店長の滑舌の良いレポーターのような話しっぷり
と、橋本のはじめてとは思えない撮影と編集に
よって、なんとか形にすることができたと
思っている。
いかにも言い訳がましい前振りの通り、
私がぐだぐだなのは小さい頃の哀しいトラウマが
原因なので、温かい目で見ていただけると嬉しい
です。

こちらの「KYOTO EDITIONセット」ですが
すぐに完売となってしまったため、9月2日の
11時に再発売の予定です。ぜひ。


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2020年8月17日

退屈な旅

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つげ義春氏の『退屈な部屋』という漫画がある。
作者本人を思わせる、怠け者気質でそのゆえに
寡作で貧乏な漫画家の主人公は、奥さんに内緒で
家の近所に自宅とは別にアパートを借りている。
そこは、かつて赤線地帯の連れ込み宿だった
ちょっと変わった作りの3畳ほどの訳あり物件で、
賃料は格安のひと月五千円。
主人公は小遣いをやりくりして賃料を捻出し、
入り口には偽名の表札を掲げて、秘密の場所で
過ごす時間を楽しんでいる。

奥さんに「ちょっと出かけてくる」と言って、
自転車で10分ほどのその部屋へ行く。
何もないがらんとした部屋で、何をする訳でも
なく、ただ寝っ転がってゴロゴロしたり、
本を読んだりして楽しそうに過ごす。
そんな主人公の姿に、僕は不思議なシンパシー
を感じてしまう。

夏休み。
コロナ騒動がなければ、昨年手に入れた2代目の
トラベラーズバイクとともに、日本一周自転車旅
の続きをしようと思っていた。
昨年青森まで着いたので、次は秋田くらいまでは
行けるかな、なんて考えていたのだけれど、
GOTOキャンペーンで対象外の東京で暮らす僕が、
東北を旅するのは憚られるし、今年は大人しく
都内で過ごすことにした。

だけど夏休みにずっと家にいると、やっぱり
旅の虫がくすぶってくる。
そんな時、ふと『退屈な部屋』を思い出した。
さすがに秘密のアパートを借りるほどの甲斐性は
ないので、都内のどこかに宿を借りて一泊する
ことにした。

宿は古くて味があって、それでいて快適で
できれば和室で布団の部屋がいい。
自転車で少し走りたいから、あんまり近すぎない
方がいいかな。そんなことを考えながら、
荻窪の旅館西郊に宿を決めた。

自宅から荻窪までは自転車で2時間弱だけど、
コーヒーショップでアイスコーヒーを飲んだり、
行きたかった銭湯に立ち寄ったりしながら、
猛暑の東京をゆっくり自転車でこいで進み、
夕方、宿に着いた。

静かな住宅街を走っていると、まずは
宿に隣接している西郊ロッヂングという特徴的な
建物が目に入る。
交差点に面した建物の角は、ゆるやかなカーブを
描き、天井にはドーム状の屋根が見える。
色ムラのあるベージュの壁面に右から読ませる
西郊ロッヂングの真鍮製の文字看板が時代を
感じさせてくれる。
自転車を止めて、しばらくその建物を眺めてから
脇に抜けると、旅館西郊の入り口があった。
料亭のような風格を感じる門の引き戸を開けて、
(料亭なんて入ったことはないけど)
小さな庭を抜けて玄関に上がると、どこかで
見たような懐かしい風景が広がっていた。

受付のためにビロード生地のソファー座ると、
テーブルには今日の夕刊とともに陶器の重厚な
灰皿が置かれている。
今は使われていない暖炉の上には、手の込んだ
木彫りの装飾が施された温度計に豚の置物や
日本人形に古い扇風機などが並んでいる。
チェックインスペースは、ロビーというより
おばあちゃんの家の応接間のような空間だった。

みしみしと音がする階段を登って通された部屋
も良かったな。
畳部屋には布団がすでに敷かれていて、
その横には小さなちゃぶ台と座椅子にカバーの
かかった化粧台がある。
窓の障子を開けると、外には庭が見えた。
冷たいお茶をごくごく飲むと、思わずゔあーっと
ため息ともつかない声を発して布団に寝転んだ。

ひと休みしたら、近くの本屋に立ち寄ってから
ラーメン屋で夕食。
メンマをつまみに普段頼まないビールを飲んで、
ラーメンでしめる。
宿に帰ると、本を読んだり、ノートに描いたり
しようと、いろいろ目論んでいたんだけど、
お風呂に入って横になったら、そのまま朝まで
ぐっすり眠ってしまった。

朝起きて宿を出ると、近くの喫茶店で
モーニングの朝食。
ふと思い立ちネットで調べてみると、
コロナ禍の影響で東京のホテルが破格の値段で
泊まれることが分かった。
明日も休みだし、帰りがてら日本橋あたりで
もう一泊しちゃおうかな。
そんなことを考えると胸が高鳴ってきた。


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2020年8月11日

銭湯で旅ごっこをする

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会話の中やアンケートなどで、
「行ってみたい旅先はどこですか?」と
聞かれることがある。
そんな時は、なんとなく行ってみたいと
思っている場所を適当に答えるのだけれど、
まだそこへ行っていないということは、
どうしても行きたい場所ということでも
ないんだろうな、とも思ったりもする。
よくよく考えてみると、優柔不断な僕は
ここへ行きたいと強い意志を持って行先を決めて
旅をするより、会いたい人がいるからとか、
ちょっとした用事があるからとか、そんな理由で
必然的に旅先が決まる方がいいと思っている。
もっと言えば、風の吹くまま気の向くままに
行先を決めずに旅をして、知らない駅で降りて、
ただ映画を見たり、古本屋とかレコード屋を
巡ったり、目に留まった喫茶店に入って
コーヒーを飲みながら本を読んだりする、
というような旅に憧れている。
つまりどこかへ行くというよりも旅をしている
状態が好きなのだ。

まだ旅が自由にできなかった子供の頃、
旅ごっこという遊びをしていた。
ひとつの道をひたすらまっすぐ進んで行き、
適当なところで引き返して帰ってくるだけの
遊びなんだけど、迷子にならずに未知の場所に
行くことができる。
母親に用意してもらった水筒を肩からかけたり、
途中で食べるおやつを持っていったりして、
旅気分を味わいながらを知らない場所を歩くのは
けっこう楽しかった。
今まで訪れたことがない公園を見つけると、
秘密基地を新発見したような気になって、
そこでおやつを食べたり、遊んだりした。
自転車を手に入れると、旅の範囲は飛躍的に
広がって旅ごっこはますます楽しくなった。
はじめて東京から千葉にたどり着いた時には
国境を超えたような気分になった。
あの頃、ごっこ遊びをしながら、子供心に
自然と旅が醸し出す高揚感とか自由な心持ちを
楽しんでいた。

あれから何十年も経って予期せずやってきた
自由に旅をすることが憚られる休日。
近所にいくつかある銭湯を頭に浮かべて、
今日はどこに行こうかと頭を悩ませる。
自転車に乗って家を出ると、途中本屋に
立ち寄り、お供となる本を手に入れる。
暑いから喫茶店に立ち寄ってちょっと休憩。
冷たいアイスコーヒーで喉を潤す。
銭湯に着くと、汗を流してまずはサウナ。
水風呂で体を冷やすと、縁側の脇の椅子に座り、
夕暮れの庭から流れてくるそよ風を浴びながら、
ゆっくり本を読む。気持ちいいなあ。

ふと子供の頃の旅ごっこを思い出して、
ここが旅先だったらと想像してみた。
例えば、鹿児島とか秋田のような九州や東北の
地方都市を旅して、その町で見つけた銭湯に
入っている。
ゆっくりお風呂につかったら、番台におすすめ
の赤ちょうちんでも教えてもらって、そこで
土地の名物をつまみに軽く一杯やりながら
夕飯をとろう。
それからほろ酔い気分で、新品の畳の匂いが
する宿の部屋に戻る。ぱりっとノリの効いた
シーツがかかった布団の上で寝っころがって
読みかけの本を読んだりしながら、明日はどこへ
行こうかとぼんやり考えたりする。
旅と日常の境はグラデーションがかかったように
ぼんやりとして、今ここが旅先のような気がした。
だけどやっぱり本当の旅をしたいなあ。

そんな中、京都にまつわるちょっとした計画が
進行中なので、京都を旅できない方は楽しみに
していただけると嬉しいです。


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2020年8月 3日

今年の夏はいつもと違うから

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先週は急に立て込んできた仕事の合間を縫って、
9月に発行予定のトラベラーズタイムズの原稿を
ちょこちょこ書いていた。

きっと皆さんも同じだと思うけれど、
今年の春から夏にかけて、以前から計画していた
予定の多くが中止になったり、延期になったり、
形を変えざるを得なくなったりした。
開催を予定していた海外のイベントは、
今ではいつかできたらいいなと思うような、
漠然とした将来の夢みたいになってしまったし、
進めることができずに道半ばで頓挫している
計画もたくさんある。

今回のトラベラーズタイムズも、当初は
トラベラーズファクトリー京都のオープンも
あるし、京都や日本の旅をフィーチャーした
ものにしようと考えていたけれど、
今この状況でリアルな旅をテーマにするのは、
なんだか空々しくて現実感が伴わないような
気がして、内容を変更をすることにした。
そして想像の旅が新たなテーマに決まった。
まだどんな風に仕上がるか分からないけれど、
これはこれでトラベラーズらしいテーマに
なったと思っている。

そもそもトラベラーズの世界は、妄想から
はじまったようなところがある。
トラベラーズタイムズは、トラベラーズの
ニュースペーパーがあったらどんなものだろうと
いう妄想をきっかけに作りはじめたし、
トラベラーズカフェを妄想し、流山工場の食堂に
1日だけのカフェを作ってみたり、架空の航空会社
トラベラーズエアーを妄想し、機内グッズを作る
ようにプロダクトを作ったりもした。
トラベラーズファクトリーだってトラベラーズ
の基地を作りたいという妄想がはじまりだった。

トラベラーズノートを手にした時に、
なぜかそういった妄想がどんどん膨らんで、
その時感じたワクワクを形にしていくことで
トラベラーズの世界が広がったのだ。

そんなことを考えていくと、想像の旅というのは
トラベラーズノートに最もふさわしいテーマの
ような気がしてきた。

先週、8月になってやっと長い梅雨が明けて、
いよいよ夏が本格的にはじまった。
今年の夏は、諦めないといけないことがたくさん
あるのだけれど、逆にこれまで考えてもいなかった
ことが実現できるかもしれないとも考えている。
それを楽しめたらいいなと思う。

今、先々のことは予測不能で、世界は不確かな
情報にあふれている。
検索サイトを調べても、データを何度も繰り返し
眺めても、たくさんの人に意見を聞いてみたって、
正しい答えなんてどこにもない。
コンビニエンスストアの中を何度も歩き回って
すべての棚を隅から隅まで探してみても、
アマゾンの「この商品を買った人はこんな商品も
買っています」を何度クリックし続けても、
そんなものはどこにも売っていない。

何がうまくいくのか、いかないのか、
何が正しいのか、正しくないのか、そんなことは
僕はもちろん、他の誰にも分からない。

だからこそ、それぞれが想像して妄想して
深く考えて、ワクワクを見つけることが大事
なのかもしれない。
そして、ワクワクがぼんやり頭のなかに
浮かんできたら、どこかに消えて無くなって
しまわないようにノートに書き留める。
それを仲間に見せてワクワクが共有できれば
いつかきっと実現できるはず。

今年の夏はいつもと違うから
今まで考えもしなかったようなワクワクが
見つかるかもしれないし、
たくさん想像の旅をしてみようかな。
みなさまもぜひ。


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2020年7月27日

なんだか旅の途中みたいだな

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オリンピックが始まるはずだった4連休の初日。
東京都民の僕は旅行をすることも憚れるし、
(まあコロナがなくてもこのタイミングで
旅行に行くことはなかっただろうけど...)
次号のTRAVELER'S TIMESのためのイラストと
テキストを書くという宿題があったので、
自転車に乗ってオフィスに行くことにした。

途中、雲行きが怪しくなると、突然雨が降り
はじめ、オフィスに着く頃にはTシャツと
ジーパンがびしょ濡れになってしまった。
いつも汗で濡れてしまうからTシャツは予備を
持ってきている。早速、新しいTシャツに
着替えると、濡れたTシャツをハンガーにかけて
早く乾くようにクーラーの風量を強にした。
ついでに予備はないけど濡れたジーパンも
脱いでハンガーにかけた。
「休日だし、誰もいないからいいよね。
今は風邪ひいちゃうとまずいしな」
心の中で言い訳のようにつぶやきながら、
ズボンもはかずに机に向かった。

宿題は旅を感じるレコードと映画と本をそれぞれ
4つ選んでトラベラーズノートに描くこと。
まずは何を描こうかとぼんやり考えていると、
突然オフィスに呼び鈴の音が響いた。
予想外の事態に慌てて濡れたジーパンをはいて
玄関に出ると、郵便局の配達員だった。
「休日なのに郵便物は届くんだな」
そんなことを思いながら荷物を受け取ると、
またジーパンを脱いでハンガーに掛けた。

なんとなくレコード4枚を決めて、ノートに
描きはじめる。鉛筆でラフに下書きをして
ペンで2枚目のレコードを描いていると、
また呼び鈴がなった。
再び濡れたジーパンをはき、玄関へ。
すると女性が二人で大きなバッグを持って立ち、
「XXから来たのですが、皆さんでお菓子は
いかがですか? 生クリームがたっぷり入って
雑誌にも紹介された美味しいお菓子ですよ」
とのこと。(XXは別に伏せている訳ではなく
単純に聞き取れなかった)
「今日は私ひとりしかいないから大丈夫です」
そう言うと「お忙しいところ申し訳ありません」
と言って帰って行った。
別に腹が立った訳ではないのだけど、
お菓子の売り込みが来るのは初めてだったし、
こんな時に来なくてもいいのになあと思った。

気持ちを落ち着かせ、まだ少し濡れていたけど
ジーパンをはいたまま、あらためてノートを
手に取ってみた。
すると、ノートの上下を逆さまにして描いて
いることに気づいた。
そのままでも使えない訳ではなないのだけど、
なんとなく気分を変えたくなったので、
新しいノートの封を開け、一から描き始めた。
なんとか4枚のアルバムジャケットとその横に
コメントを描き終えようとした頃、また呼び鈴。
「まるでドリフのコントだな」そんなことを
思いながら玄関に行くと、今度は女性がひとり
立っていて、「すみません。3階へ行くには
どうしたらいいでしょうか?」とのこと。
「あそこの階段を上がってください」
わざわざ聞かなくても分かるんじゃないかなと
ちょっといらっとしたけど、そんな素振りは
見せず感じよく答えた(と思う)。

「なかなか落ちつかないな」
とりあえず4つある宿題のひとつは終わったし、
ジーパンもだいぶ乾いていた。
もう今日はこれで終わりにしようと思った。

ノートや筆記具を片付けメールを開いてみると、
トラベラーズファクトリーのスタッフから、
7月29日発売になるエースホテル京都との
コラボレーションについて質問が届いていた。
僕はいつもよりちょっと丁寧に返事を書いた。
そして、ふと思いついたようにエースホテルの
ロンドン、LA、ニューヨークで泊まった時に
部屋から持ち帰った便箋を机の下にある箱から
引っ張り出して京都の便せんと並べてみた。
エースホテル京都の部屋にある便箋やメモは、
MD用紙クリームを使用して流山工場で作らせて
もらっている。

各ホテルの便箋は、デザインのフォーマットは
同じだけど、それぞれ紙質が微妙に違うのが
面白かった。
ロンドンやLAなどはざっくりしたラフな質感で、
京都の便箋は他よりもきちんとしてちょっと
まじめそうに見える。
それがなんとなく日本らしさみたいなものを
感じさせて、エースホテルがMD用紙を選んだ
理由が分かったような気がした。

エースホテル京都の部屋にはロゴをデザインした
柚木沙弥郎さんのアートが飾られていたり、
ミナペルホネンのカーテンが付けられていたり、
ロビーには、しょうぶ学園の作品やヒステリック
グラマーのデザイナーによる電飾があったりする。
それらが日本らしさを感じさせながらも、
圧倒的にエースホテルとしか言えないような
自由で文化的な匂いも強く感じさせてくれる。
トラベラーズもそうありたいと思った。

僕は戸締りをしてオフィスを出ると、ずっと
前から行こうと思いながら行く機会がなかった
中目黒の銭湯に立ち寄ることにした。
サウナにもたっぷり入ってさっぱりした気分で
外にでると空はすっかり暗くなり、雨上がりの
心地よい風が流れていた。
「なんだか旅の途中みたいだな」
そんなことを思いながら清々しい気分で、
自転車のペダルを踏み込み、夜の東京を走った。


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2020年7月20日

お気に入りのTシャツ

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最近は自転車で会社に行くことも多いし、
「今年の夏はコロナでいろいろ大変だから、
あまりカチっとした格好じゃなくてもいいよね」
と勝手に個人的にそんなことを思っていて、
Tシャツで過ごす機会が多い。
(別に去年の夏もカチっとした格好だった訳では
なかったんだけど、今まではいちおう会社で
仕事をする時は襟付きのシャツを着るという、
個人的なルールがあったのです)

自転車通勤で会社に着くと、まずは
汗でびっしょりになったTシャツを着替える。
バッグから2枚Tシャツを取り出し重ね着する。
なんで2枚かというと、恥ずかしい話だけど
Tシャツ1枚で1日中過ごしているとお腹がくだり
気味になってしまうから。だから自転車通勤の
日は合計3枚Tシャツが必要になる。

そんな訳で、最近急にTシャツの登場回数が
多くなり、すっかり存在を忘れていたTシャツを
タンスの奥から引っ張り出したり、気に入った
ものが見つかると新たに手に入れたりしている。

一番新しいのは、先週、恵比寿のギャラリーで
開催していた西澤崇氏の写真展で手に入れた
「SENTIMENTAL PUNKS」のTシャツ。
数ヶ月前、オズマガジンの前編集長、古川さん
からTシャツのブランドを立ち上げたということ
を聞いていて、ずっと気になっていたんだけど、
やっと手に入れることができた。
ブラックのTシャツの背中には、西澤氏による
写真の上に「SENTIMENTAL PUNKS」のロゴが
プリントされている。
なんと言っても、このブランド名がいい。
センチメンタルなパンクスですよ。
シンプルでまっすぐで青臭くてロマンチック。
最初聞いた時は、古参の中年ベテラン投手が、
全力のストレートで新進気鋭の4番バッターに
投げ勝ったみたいな爽快感とともに、勝手に
やられたなあと思ってしまった。

トラベラーズファクトリー京都のオープンの際に
同じ新風館にある映画館アップリンクで買った
「エル・トポ」の Tシャツも気に入っている。
「エル・トポ」は1971年公開のカルトムービー。
中学生の頃に見て、その過激な映像にショックを
受けて、それ以来映画に登場するフリークスの
イメージが恐怖感とともにずっと頭に残っていた
僕にとってのトラウマ映画。
何年か前に再び見る機会があって、トラウマとは
無事決別できたんだけど、Tシャツの存在を知って
これは手に入れなきゃと思っていた。

音楽好きにとってTシャツと言えばライブ会場で
販売されるツアーTシャツは外せない。
レモンの輪切りが胸に大胆にプリントされている
Tシャツは、3年前のストーン・ローゼズの
来日ライブで手に入れたもの。
レモンは彼らの1stアルバムのジャケットに
モチーフとして使われて以来、バンドのアイコン
になっている。
そのことを知っている人にはそれと分かるけど、
正面にはバンド名がないから、ただレモンが
大きくプリントされたTシャツとも見える。
そういう押し付けがましくないさりげない
メッセージがあるTシャツが好きだ。

アメリカでのイベントの際に訪れることができた、
ハリウッド・ボウルでのモリッシーのライブでも
Tシャツを手に入れた。
これは、ベッドで寝っ転がるおじさんの顔が
プリントされているからめったに着る機会には
恵まれない。
だけど僕にとっては特別な体験を記念する
大切な1枚。そういうTシャツもけっこうある。

バンドものだとデザインが好きで(もちろん
音楽も好きだけど)イースタン・ユースの
Tシャツを何枚か持っている。
そういえばイースタン・ユースもセンチメンタル
パンクスという言葉がしっくりくるバンドだな。

お気に入りのバンドや映画、デザインや言葉が
プリントされたをTシャツを身につければ、
それだけで「今日もがんばろうかな」という
気分になれる。
さらにちょっと大袈裟に言えば、好きなTシャツ
を着ることは自分のアティテュードを世界に
向かって指し示すことでもある。
そんなことをぼんやり考えていたら、
Tシャツってまるでトラベラーズノートみたい
じゃなかって思った。
リフィルの表紙にステッカーを貼ったり、
チャームをつけたりして自分好みにカスタマイズ
したトラベラーズノートは、まさに同じように
気分をちょっと前向きにしてくれるし、
自分の好きなことを伝えるメッセージボードの
ようなものでもある。
そういえばコラボレーションやイベントの
リフィルや、ファクトリーの店舗限定リフィルも
作る心持ちは、ツアーTシャツやコラボTシャツと
似ているような気がする。

最近トラベラーズのTシャツを作っていないけど、
またいつか作ってみたいな。


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2020年7月13日

トラベラーズファクトリー エアポート 6周年

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7月8日、いまだ休業が続くなかで、
トラベラーズファクトリーエアポートが
6周年を迎えた。
ステーションが3周年を迎えた4月27日も
同じように休業中だったけど、あれから
中目黒とステーションは営業を再開し、
京都もオープンを迎えた。
7月になった今は成田空港のエアポートだけが
休業を続けている。

ちなみにトラベラーズファクトリー中目黒が
オープンしたのは2011年。その3年後の
2014年にエアポート、さらにその3年後の
2017年にステーションがオープン。京都が
オープンした今年2020年もまたその3年後。

結果的に中目黒のオープン以来、3年周期で
新しい店がオープンしていることになるけど、
もちろんこれは計画していたわけでもなく、
まったくの偶然。
そもそも中目黒以外はすべて先方のお声がけが
きっかけで出店が決まっているので、
自分たちでコントロールできるものでもない。
(そんなオリンピックなみの出店計画が
あったら逆にすごいけど)

新しい店を作る時は、既存のお店をコピペする
ようなやり方には興味がないから、いつだって
一からのスタートになる。
そのうえ少ない人数でバタバタやっているから、
店がオープンした直後はへとへとになってしまい
新しい店を作るなんてことはもう二度とやるまい、
なんて思ってしまう。

だけど、それから1、2年過ぎて、僕らの心を
くすぐるような魅力的な話があると、面白いこと
が起きそうだな、とその後大変なことになるのは
わかっているのに、禁断の果実に手を出すように、
ついやってみようと思ってしまう。
そして実際にオープン直前になると、
やっぱりバタバタしながら、もうこんなことは
二度とできないと思う。
それを懲りずに何度も繰り返しているのだ。

だけど無事オープンを迎えて、たくさんの方が
足を運んでくれて笑顔を見せてくれると、
もうそれだけで報われたような気持ちになるし、
新しい場所が生まれることで、新しい仲間との
出会いが生まれたり、嬉しいこともたくさんある
から、いつもやって良かったと思うんだけどね。
今回の京都は、いつもと違った苦労もあったし、
感動もひとしおだった。
(もちろん今は次の店をどうしようか、という
計画もないし、そんなことを考える心の余裕も
気力もない)

京都に新しい店をオープンするにあたり、
ぼんやりとイメージしていたことがあった。
例えば海外からやってきたトラベラーズノート
ユーザーの方が成田空港に降り立ち日本に入り、
それから中目黒に立ち寄り、さらに東京駅から
新幹線で京都に向かう。その旅路の中で
それぞれのトラベラーズファクトリーを行き来する
ことで、旅がもっと楽しく充実したものになれば
楽しいなと思っていた。
それぞれの店でノートにスタンプを押して
カスタマイズしたり、スタッフやお客さん同士で
旅の話をしながら、寄り道で立ち寄る場所を
決めたりする。さらに4つの店を繋ぐような
イベントがあっても楽しいなあ。
京都に新しい拠点ができることで旅の範囲も
広がり、同時にトラベラーズノートとの旅の
楽しみも広がればいいなと思っていた。
だけどコロナで、旅の在り方はすっかり変わって
しまい、そんな旅を促すような投げかけは、
今現実的ではなくなってしまった。

先月末は会社が期末ということで、休業中の
トラベラーズファクトリーエアポートでも
棚卸しがあった。
棚卸しのために成田空港を訪れたスタッフの
話によれば、案内板に掲示されているフライトの
ほとんどは欠航で、空港内を歩くのは空港職員
ばかりだったとのこと。
さらにトラベラーズファクトリーがある
ショップエリアは、シャッター商店街のように
ほとんどの店がシャッターが下ろし、
閑散とした雰囲気に包まれていたそうだ。

6年前この場所に出店を決めた理由は、
国際空港の特別な雰囲気に魅せられたからだ。
成田空港は、旅がはじまる時の緊張や高揚感、
無事に旅を終えた安堵感など、さまざまな旅人の
想いが交差し、たくさんのワクワクやドキドキに
満ち溢れた魅力的な場所だ。
そんな場所にトラベラーズファクトリーが
あったら、トラベラーズノートとの旅はもっと
楽しくなるはず。そんな思いでエアポートが
オープンし、6年間実際にたくさんの旅人たちと
それを共有することができたと思っている。

今は長い休日のように静かな日々が続いている
けど、いつかまた世界中の人が安心して自由に
旅ができて、この場所が賑わいが戻る日が
また再びやって来ることを心から信じている。
もうこのまま死ぬまで国境を越える旅ができない
なんて、そんなことありえないですよね。
そんな人生は考えたくもないです。

次に成田空港から飛行機に乗って旅に出る時は、
はじめての飛行機の旅の時の緊張感と高揚感を
しみじみと思い出すんだろうな。
それまでもうしばらく我慢。我慢。


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店長のプロフィール

(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。