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ターゲット??

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取材や売り込みなどでたまに、
トラベラーズノートやトラベラーズファクトリー
はどんな人をターゲットにしているのですか?
と聞かれることがある。

ターゲットというと、市場調査をして、
男女や年齢層、収入、趣味嗜好などを
分析することで、ある特定の消費者層を想定し、
そこに向けて商品開発することなんだろうけれど、
あまりそういうことを意識したことがないので、
答えに困ってしまう。
それに正直に言うと、ターゲットという言葉には
人の心が感じられず、あまり好きではない。

それでもあえて言うのなら、
トラベラーズノートを最初に作った時から
今に至るまでターゲットと呼べるものがある
とすると、自分たち自身なのかもしれない。

14年前のトラベラーズノートを作る時、
まず最初に決めたのは、
自分たちがほんとうに使いたいものを、
自分たちがお金を払って購入できる価格で、
自分たちがワクワクしたり、かっこいいと思う
やりかたで伝えていくことだった。
そうやって僕らはトラベラーズノートの仕様を
詰めていき、パッケージをデザインしたり、
カタログやウェブサイトを作っていった。

そのことを深く突き詰めていくほどに、
自分はいったいどういう人間なんだろうという
ことを問い直す必要があることが分かった。
例えば、僕は旅が好きで、音楽や本が好きだと
思っていたけれど、「なんで好きなんだろう」
とか「どんなことに感動したのだろうか」
ということを、もう一度深く考え、追求して
いく必要に迫られた。
学生時代にバックパッカーとして旅した時の
日記をひっくり返し、好きだと思っていた本を
もう一度読み返し、思春期の頃に聴いていた
音楽を聴き込み、その頃の記憶を呼び起こした。
それは、トラベラーズノートというレンズを
通して、自分自身を一歩離れた状態から俯瞰し、
もう一度ありたい姿に自らを補正していくような
行為だった。
そうやって、トラベラーズノートの物語が
作られていった。

そしてこの行為こそが、トラベラーズノートの
一番の特徴であるカスタマイズという
コンセプトを生むきっかけになった。
僕らがトラベラーズノートに自らの魂を
反映させていくことで、自分自身を知り、
世界のさまざまなルールや常識にとらわれない、
自分たちのやるべきことを見い出せたように、
トラベラーズノートを手にした人と共に
その行為を共有し、共感できたらいいなと
思ったのだ。

たくさんの商品がひしめくように並ぶことが
多いステーショナリーのパッケージは、
それを見た時、どんな商品で何が特徴なのかを
一瞬で分かるようにデザインしなければいけない、
という意見がある。
そういう意味では、トラベラーズノートの
パッケージは、帯に書かれたテキストは文字が
多い割には抽象的だし、中身も分かりにくくて、
ちょっと不親切とも言えるかもしれない。
だけど、僕らは一瞬でどんな商品なのか分かる
ようなものにしたくはなかった。
見た瞬間に「いったいこれは何なんだ?」と
想像できる余地を作りたかった。
そこには、みんながこうした方がいいという
ことに対するパンクロック好きゆえの反骨精神
みたいなものもあったし、そういったことも
含めて、自分たちの直感を大事にしながら、
いろいろなことを決めていった。
生意気で子供っぽい言い方かもしれないけど、
分かる人だけに分かってもらえればいい、
と思っていた。だけど同時に、分かってくれた
人には、その分深く心に響くものであって
欲しいと思っていた。

トラベラーズノートが世に出て、
まず嬉しかったのは、お客様からのメールや
手紙などを読んだりすることで、
僕らが考えていたトラベラーズノートの根幹
みたいなものが伝わっている人が少なからず
いることだった。
ノートというプロダクトでありながら、
それぞれのパーソナルな想いを深くその中に
反映させて、まるで人生の相棒のように
トラベラーズノートを捉えてくれているのを
知った時は、涙が出るくらい嬉しかったのを
今でも覚えている。

その後、国内外でイベントを開催したり
トラベラーズファクトリーができて、
直接ユーザーの方とお会いする機会が増えると
その想いはより強くなった。

今ではトラベラーズノートを使ってくれている
人は世界中にいるのだけど、例えば海外の
イベントでも、皆さんとても大切そうに
トラベラーズノートを取り出し、
「これは私の子供みたいなものなのよ」とか
「このノートを手にしてから、自分の生活が
変わったんだ」というようなことを言ってくれる
方々にたくさん会うことができる。

発売当初からトラベラーズノートのパッケージに
日本語と合わせて、英語でもテキストを入れて
いたのは、世界中にその想いを伝えたいと
考えていたからだった。
だけど、その時はパーソナルなメッセージを紙に
書き、ビンに入れて、無人島から海に放つような、
現実感のない夢みたいな想いだったけれど、
それが海を超えてたくさんの人たちに届いている
のを知ることができたのだ。

男女も年齢も、国籍もさまざまだれど、
僕らが伝えたいと思っていたトラベラーズノート
の魂の部分にとても深く共感してくれていて、
トラベラーズノートに個人的な想いをたっぷり
反映させて、ただのプロダクト以上の深い愛を
注いでくれている。
そしてユーザーが媒介となり、愛を持って他者に
伝えてくれることで、その共感が広がっている。
トラベラーズノートという価値観を共有する、
愛を伴った親密でフィジカルなネットワークが
国境も男女も世代も超えて広がっているのを
実感できる。

もちろんこの状況は、いたずらにSNSの
フォロワーを増やしたり、無理やりサイトに
誘導するような広告戦略で生まれる訳がないし、
そもそも最初から意図していたことではない。
ただ自分たちの好きだと思うことに真摯に
取り組み、そこに共感してくれた人たちに
誠実に向かいあった結果だと思っている。
やり方の根本は、日本も海外も一緒だ。
それを14年間、荒地を耕すように地道に泥臭く
続けてきたことこそ、僕らが誇るべきことで、
そのことで生まれた世界中のトラベラーズノート
ユーザーとの繋がりこそが僕らの財産だと思う。

あらためて言うのはちょっと気恥ずかしいけど
トラベラーズノートは、ほんとうに素晴らしい
ユーザーに恵まれているなあ、と心から思う。


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コメント (2)

tojo:

コメント失礼致します!

こんな言い方をするとあれかもですが、トラベラーズノートしかり、飯島さんの事が本当に羨ましいし、凄いと思います!

トラベラーズノートというコンテンツは「水曜どうでしょう」というテレビ番組とも通ずるモノを勝手に感じています。

自分たちの好きなモノ、自分たちが良いと思うモノを率直に形にして販売するのは本当に勇気が居る事だと思いますし、もはや自分をさらけ出すような行為に近い訳で、それはアートにも似た作品のように感じてしまいます。

そんなトラベラーズノートを私も使わせていただいているのですが、パスポートサイズもレギュラーサイズも、毎日その時々の気分や気づきで中身を変えていて、本当に正解もなければ不正解もなく、毎日新鮮な気持ちとマンネリとが対峙しているような気持ちで使わせていただいております。

何の考えもなしに思った事を乱暴に書いてしまいました。
しかしそれもまた一つのロックで、パンクロックだと自己肯定しております笑

いつもブログを拝見させていただいているのですが、飯島さんの文章は読んでいて胸が熱くなります。

音楽や映画などの趣味や、時折見える反骨精神のような感情、想いに感銘を受けております。

何かを伝えたい、何かを伝えたい。
そんな気持ちになってしまい、勝手に共鳴しております笑

コメントで長文失礼致しました!
また時折長文で失礼するかもしれません!

iijima:

tojoさん、ありがとうございます。
まさにtojoさんのおっしゃるように、何かを伝えたい、何かを伝えたいと、駄文を書き綴っているようなブログではありますが、こんなコメントをいただけると素直に嬉しいですし、励みにもなります。続けてきてよかったなあと思います。
ぜひこれからもよろしくお願いします。

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(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。