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B面に恋をして

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レコードで音楽を聴いていた時は、
A面が終わるとレコードをひっくり返し、
B面を再生するという動作が必要だった。
ちゃんと音楽に向き合って聴いていると、
このアルバム片面分、約20分の時間は
張り詰めた緊張を解きほぐすのにちょうど良い
タイミングで、ちょっとした小休止のような
役割を果たしてくれたような気がする。

アーティストがアルバムを制作する際は、
そのことを意識してA面とB面でイメージを
変えることも多かった。

例えば、ビートルズの「アビー・ロード」は、
A面の最後は重々しいギターのリフが後半に
長々と続く「I Want You」で締められると、
B面は一転、さわやかなアルペジオとともに、
「Here Come The Sun」がはじまり、そして
後半の怒涛のようなメドレーへ続いていく。
CDで聴いていて、「I Want You」の後に、
すぐに「Here Come The Sun」が続くと
やっぱりちょっとした違和感を感じる。

牛のジャケットが有名なピンク・フロイドの
「原子心母」は、A面に23分もある大作を1曲、
そしてB面にはバンドメンバーそれぞれが
書き下ろした小品3曲に加え、共作を1曲収録。
これはA面、B面があるからこその構成だった。

僕がCDプレイヤーを手に入れたのは、
たしか高校3年生の時だったけれど、
普段はカセットテープに録音して聴くことが
多かったので、A面、B面という概念は
レコードがなくなってからもしばらくは
残っていたような気がする。
「A面の最後の曲が好きなんだよね」
なんて風に話をすることはよくあったし、
ミックステープを作る時には、B面の1曲目は
けっこう大事なだった。

シングルレコードは、A面とB面との
違いがより明確だった。
A面はメインタイトルとしてヒットを狙った
作品が収録され、B面はオマケのような扱い
をされることが多かった。
CDになってからも、正式にはタイトル曲と
カップリング曲と言われていたけど、
普通はみんなA面の曲、B面の曲と呼んでいた。

B面では、オマケであるがゆえに
ミュージシャンは肩の力を抜いて自由な
スタンスで曲を収録できるということもあって、
それが功を奏し、時にはA面を凌駕するような
名曲や、ミュージシャンの新しい可能性を
引き出すような曲が生まれることがあった。

例えば、ストーン・ローゼズは、B面の曲にも
名曲が多かったけれど、A面の曲をそのまま
逆回転で収録するような、ふざけた曲もあった。
でも、その後アルバムには、別の逆回転した曲に
ボーカルトラックだけ差し替えて、美しい曲に
仕立て、その実験を昇華していたりする。

ミュージシャンがお気に入りの曲をカバーする
のもB面の定番で、いかにもという感じのカバー
ソングから、意外性のある曲もあったりして、
これもファン心をくすぐった。

今では、リマスター盤のボーナストラックや
B面集、さらにはネットや配信で簡単に
これらの曲を聴くことができるけど、
昔はA面の曲は手持ちのアルバムに入っている
のに、B面の曲が聴きたいがためにシングルを
買うなんてこともあった。

シングルのB面曲について調べてみると、
面白いエピソードを見つけることができる。

例えば、ロックンロールの元祖とも言われる
ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツの
「ロック・アラウンド・ザ・クロック」は、
もともと1954年にB面曲としてリリースされた。
その後、映画「暴力教室」に使用されたことで
ヒットし、ロックを世界に広めた名曲として
今でも聴かれている。

日本でも最初B面としてリリースした曲が
A面よりヒットしたということがけっこう
あったようで、「学生街の喫茶店」、
「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」、
「スーダラ節」、「ラヴ・イズ・オーヴァー」
「Sweet Memories」などは、最初はB面の曲
としてリリースされたとのこと。
B面の想定外の曲が、人の心を捉えて
世の中に受け入れられA面よりも愛されていく
というのは、インディーズがメジャーを凌駕
していくようで楽しい。

どちらかと言えば、大通りより裏通り、
陽より陰、メジャーよりインディーズに
心を惹かれてしまいがちな僕は、B面にもまた
強いシンパシーを抱いてしまう。

話は変わるけど、アメリカは大変な状況に
なっていますね。
いろいろあるけど、やっぱり音楽や映画、
文学などアメリカの文化に大きな影響を受け、
今でも憧れを抱く身としては、本来あるべき姿に
収まるのを願わずにはいられません。
1978年にリリースされたエルビス・コステロの
この曲が今こそ心に響きます。

(What's So Funny 'Bout)
Peace, Love and Understanding?

平和と愛、理解し合うことの何がおかしいんだ?

ちなみにこの曲も当初、シングルB面の曲として
リリースされている。

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コメント (3)

Hide:

ナイアガラ・トライアングル…あのアルバムの40周年記念盤が出るとか?
40年かぁ…(苦笑)。

iijima:

Hideさん、ありがとうございます。トラベラーズノートも発売して15年ですし、それだけ月日が経ったということですね(笑)

先日、「今では音楽って好きな曲だけダウンロードする時代になっちゃったけど、昔はアルバム一枚がアーティストの作品っていう感じだったよね。」っていう会話を昔からの音楽仲間と話していたばかりです。
ナイアガラの話題が出たので…
'76年リリースの大滝詠一「Go! Go! ナイアガラ」は、A面の曲が終わってしばらくすると「あの〜 サイドワン終わったんですけど…」という大滝さんの声が収録されていました。

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(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。