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鎌倉よりみち散歩旅

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1ヶ月前のこと。
訳あって、久しぶりに有給休暇をとって
鎌倉へ日帰りひとり旅をした。
平日の朝、いつもの時間に家を出て
いつもの駅で電車に乗り、途中の駅で
いつもと違う電車に乗り換える。
乗客もすっかり少なくなり、独り占めの
ボックスシートから車窓の風景を眺めていると、
じわじわと旅気分が盛り上がってきた。

10時ごろ鎌倉駅に着く。さて、どうしようか。
いくつか行きたい場所はあるのだけど、
どう歩くのかは考えていない。
とりあえず賑やかな小町通りに繋がる東口とは
逆の静かな西口から外へ出た。
すると、駅前に本屋さんがあったので覗いてみる
ことにする。
入り口のワゴン棚に週刊誌や子供向け雑誌が並ぶ
いかにも街の本屋といった佇まいだ。
そういえば最近こういう本屋は少なくなったな。
店内に入ると、街の本屋特有のインクの匂いがして、
懐かしい気持ちになった。
棚を眺めると予想に反して興味をそそる本が
たくさんあって胸が高鳴った。
旅先で気に入った本屋に出会うと、必ず一冊は
本を買うようにしている。
ここでの一冊を探してゆっくり棚を眺めた。
平積みで置かれていた田村隆一氏の
『ぼくの鎌倉散歩』という本が目に留まり、
手に取ってパラパラとページをめくってみる。

「稲村ヶ崎の谷の奥にあるわが家の裏山から
極楽寺におりる山道はすばらしい。
裏山には超ミニの熊野権現の小社があって、
小さなリンゴが二つ供えられていたりする。
それからグミの実が落ちている山道をのぼりつめる
と、夏草におおわれていた細い十字路もくっきり
あらわれて......」こんな文章を見つけた。
稲村ヶ崎から極楽寺の山道か。このルートを
歩いてみようかな、そう思い立つと、本を購入し、
足早に江ノ電の乗り場へ向かった。

江ノ電に乗ると、子供みたいに一番前の席に座り、
運転席越しに鎌倉の景色を楽しんだ。
稲村ヶ崎駅を降りと、まずは海岸まで歩き海を見る。
海岸の前の堤防に腰を下ろし、『鎌倉散歩』の
ページを開くと、この場所を描いた詩を見つけた。

「鎌倉由比ヶ浜の 稲村ヶ崎にかけての 
 白い波頭を見ていると  黒潮の 
 動きが手にとるように分かってきて 
 無数の生き物 無数の性の 
 歓びと悲しみがぼくの心に ひびいてくるのさ」

空は雲に覆われてはいるけれど、
春の暖かい空気が体を包んでくれる。
しばらくぼーっとしながら、不規則に繰り返す波の
動きを眺めた。いやあ、気持ちいいなあ。

『鎌倉散歩』によると、
かつて田村氏が住んでいた家の裏山は、
稲村ヶ崎駅を北に歩いた突き当たりにあるという。
グーグルマップで方向を確認しながら、
閑静な住宅地を歩いた。
突き当たりらしき場所に着いたけれど、
裏山の道はグーグルマップには記されていない。
それっぽい場所を探して、なんとか山に入る道の
入り口を見つけた。
それでも不安になりながら山道を登り、
『鎌倉散歩』に書かれていた熊野権現社の石碑を
見つけた時は「やった!」と思った。
そこから先はまさに山登りといった感じで、
木影で木の実をたべるリスを見たりしながら、
ハイキング気分で歩いた。

だけど、勝手の知らない山道。
『鎌倉散歩』ではその後、月影地蔵を経由し、
極楽寺に抜けるはずなのに、鎌倉山に出たり、
元に戻ってしまったりして、何度もグーグルマップと
にらめっこしながら、1時間以上迷いながら歩いて、
極楽寺の手前の道路に抜けた。

極楽寺に着くと、味のある佇まいの中華屋を発見。
本当は別の店でランチをしようと思っていたけど、
山道を長い時間歩いてすっかりお腹も空いていたし、
喉も乾いていたので、誘惑に負けて扉を開けた。
素朴な味付けのカニチャーハン、おいしかったな。

そこからは、鎌倉駅に向かってずっと歩く。
途中長谷寺を散策し、鎌倉駅近くの雑貨店モルンへ。
3年前にオズマガジンのよりみちノートイベントで、
お会いして以来、久しぶりに店長の佐々木さんと
お話をすることができた。
そして、鎌倉に来ると必ず立ち寄るカフェ、
ヴィヴモン・ディモンシュでコーヒーをいただく。
『鎌倉散歩』の残りのページを読んだり、
ノートに旅の記録を記したりしてのんびり過ごして
いたら、外はだんだん薄暗くなってきた。

旅の最後は、最初から銭湯に行こうと決めていた。
事前に調べていた近辺に唯一残るという昭和30年
創業の清水湯だ。

「昼間の銭湯は、平安と静けさにみちみちていて
天窓から光がゆったりとさしてきて、ボォーっと
湯気ととけあって...。ま、あの味を覚えたら、
立身出世しようなどとは夢にも考えられなくなる」

田村隆一氏も『スコッチと銭湯』で平日の昼間の
銭湯を魅力的に書いている。
ディモンシュですっかりくつろいでしまい、
足が重くなってきたけど、明るいうちにお風呂に
入ろうと、足早に清水湯に向かった。

清水湯にたどり着くと非情にも
「コロナ禍のため週3日のみの営業になります」と
書かれた張り紙が貼られ、扉は固く閉ざされていた。
しばらく呆然としたけれど、また次に鎌倉に来る
理由ができたと前向きに考えて、再び鎌倉駅の方へ
向かって歩いた。
その後、大船で途中下車して無事に別の銭湯に
入って、平日日帰り旅を締め括ることができた。

オズマガジンの井上編集長にお声がけいただき、
今月より新連載の「よりみちノートを始めよう』
というコーナーにトラベラーズカンパニーが
協力させていただくことになった。
その1回目が鎌倉特集ということで、
この鎌倉の日帰り旅を記したノートと写真を掲載
してもらっている。
B-Sides & Rarities ジャバラに旅の記録を
描いてみたのだけど、まさに旅を反芻するように
楽しく描くことができた。
旅の記録とジャバラは思った以上に相性が良さそう。
オズマガジン、見かけたらぜひ手に取ってみて
ください!


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コメント (4)

136(いちさんろく):

鎌倉、いいですね。どこかに行きたいけどなんだかなあ、な新型コロナウイルスに翻弄される2度目の大型連休がやってきます。
ところでAmazonプライムのcmに
Clip Number / クリップ ナンバーが使われてますね。
あの頃に戻れたらいいですね。

136(いちさんろく):

鎌倉、いいですね。どこかに行きたいけどなんだかなあ、な新型コロナウイルスに翻弄される2度目の大型連休がやってきます。
ところでAmazonプライムのcmに
Clip Number / クリップ ナンバーが使われてますね。
あの頃に戻れたらいいですね。

Hide:

いい有給休暇の過ごし方ですね!
その通り辿ってみたくなりました。そしてその様子を自分のトラベラーズノートに残したいですね。拝読して久しぶりに「トラベラーズノートって、こうやって使うんだよな〜」と思いました。

iijima:

136さま、ありがとうございます。今年は私も大型連休も静かに過ごすことになりそうです。東京に住む私にとっては鎌倉は気軽に旅気分が味わえる場所で、1、2年に一度は足を運んでしまいます。いろいろ落ち着いたらぜひ。

Hideさん、ありがとうございます。はい。充実した有給休暇を過ごせました。トラベラーズノートはどうやって使ってもアリなノートだと思ってますので、自由使ってください(笑)

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店長のプロフィール

(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。