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ゲームセンターの思い出

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東京オリンピックは、すっかり不穏のタネとなって
しまっているけれど、オリンピックというと
僕は昔ゲームセンターにあったハイパーオリンピック
というゲームを思い出す。

僕が小学校の高学年から中学生の頃は、まさに
ゲームセンター興隆期といえるような時代だった。
インベーダーゲームからはじまり、
パックマンにラリーX、ドンキーコング
ディグダグ、クレイジークライマーなど
テクノロジーの進化と革新的なアイデアが融合し、
面白いゲームが次々と登場していた。
例えるならビートルズが登場し、ストーンズや
フーも人気を博していき、さらにハードロックや
グラムロック、プログレなどまで急速に発展し
その世界を広げていった60年代後半における
ロックミュージック興隆期の状況に似ていたの
かもしれない。(実際に体験した訳じゃないけど)

だけど当時ゲームセンターに行くことは
学校で禁止されていて、たまに先生が見回りに
来ることもあったため、僕らはおおっぴらに
そこに立ち入ることができなかった。
その頃ゲーム人気に乗じて近所の駄菓子屋にも
ゲーム機を数台置いていた。
駄菓子屋には最新のゲームはなかったけど、
先生が見回りに来ることもなかったので、
僕らは学校帰りに立ち寄り、不本意ながらも、
もう何度もやり込んでいるゲームを飽きずに
繰り返しやっていた。

そんなある日、
お兄さんの影響で最新情報通の友人Kくんが
「ハイパーオリンピックってゲーム知ってる?」
と声をかけてきた。
ボタンを連打して100メートル競走や
走幅跳などの陸上競技を行うゲームだ。
ボタンを押す速さがそのままランナーが走る
スピードになるというシンプルかつ斬新な
操作方法に加え、陸上競技という身近なスポーツ
をテーマにしているのも新しい。
ロサンゼルス・オリンピックを翌年に控え、
カール・ルイスが注目を集めていたこともあり、
僕らはすぐにこのゲームに熱中した。

最新ゲームのハイパーオリンピックは、
当然いつもの駄菓子屋にはなかったため、
このゲームをやるには、ゲームセンターへ
行かなければならなかった。
先生の見回りには一定の周期があった。
その頃、みんなゲームセンターに行くのを
控えていたこともあり、先生もすっかり安心し
見回りを休止していた時期だった。

ハイパーオリンピックにはまった僕らは、
いかに早く連打するかを研究した。
最初は爪でこするようにボタンを押すと早くなる
ということを発見。
だけど爪が削れて痛くなるため今度は
10円玉を使ってこするようにボタンを押していた。

ある日、Kくんが「これがいいらしいよ」と
ステンレス製の15センチ定規を学校に持ってきた。
定規の端を指で押さえて、その逆をはじくとブルンと
定規が振動する。その振動でボタンを押すのだ。
「こうすると世界記録も超えるらしいよ」
インターネットはまだ陰も形もなかった時代、
こういった情報は学校も地区も超えて、
自然と口コミで広がっていた。
僕もさっそくステンレス定規を買い、
Kくんと一緒にゲームセンターへ行った。
すると爪やコインなどとはレベルが違って、
その効果は絶大であっという間に100メートル
の世界記録を叩き出すことができた。

その後、しばらく続いたゲームセンター通いを
中断することになったのは、先生ではなく
母親に見つかったのがきっかけだった。

ゲームセンターの前に止めてあった僕の自転車を
見つけると、母親はずかずかと中に入ってきて、
「こういうところに来ちゃ、ダメなんじゃなの。
すぐ帰りなさい」と僕に言い放った。
一緒にいた友人の手前もあり、きまりが悪くなった
僕は「ちょっと寄っただけだよ」とふてくされ気味に
呟きながらゲームセンターを出た。

家に帰ると「お父さんには黙っているから、
もう行っちゃだめだからね」と念を押された。
なんだか秘密を握られたようできまりが悪くなった
僕はその後しばらくはゲームセンターに行くのを
控えるようになった。

それから数ヶ月後、家族で外食した後に
弟がゲームセンターに寄りたいとねだった。
酔っ払って機嫌が良くなっていた父親は、
たまにはいいだろうと言ってみんなで入っていった。
僕は母親に見つかった件もあったから、
あんまり乗り気にもなれず、それほど興味もない
ゲームを1回だけやって、すぐ終わってしまった。
すると父親がゲームのことをよくわからないのに
「ずいぶうまいんじゃないか」と冷やかし気味に
言った。
その瞬間、父親は知っていたんだなと悟った。
お父さんには黙っている、と言っていたのに、
僕が眠りについた夜、両親が茶の間でそのことを
話している姿がふと頭に浮かんできて、
僕は一瞬血の気が引いたようになったのと同時に、
やっぱり大人は嘘つきだと、子供心に憤慨した。
だけど、どちらかと言えばこまっしゃくれた子供
だった僕は、「大人同士では情報は筒抜けだし、
知っていても知らない素振りをすることもある」
という、今では当たり前だと思うような大人の
教訓を一つ学んだ気になったのも覚えている。

そのことと関係あるかどうかわからないけど、
あれほど熱を上げていたハイパーオリンピックも
そろそろ飽きてきた頃だったし、それとあわせて
ゲーム以外のことへの興味も広がり、その後
ゲームセンターにほとんど行かなくなっていった。

話は変わるけど、
東京と京都でも緊急事態宣言の延長が決まった。
オリンピックは今のところ開催する予定らしい。
やっぱりいろいろな問題を知らない素振りで
やり過ごそうとする人たちはたくさんいるようだ。
東京オリンピックはもういっそのこと
ネットを使ってハイパーオリンピックで開催なんて
どうだろう。もちろん冗談だけど。


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(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。