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夏が来て

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夏が来て僕は、オリンピックなんて見ないで
都内の安ホテルの部屋で、9月に発行される
トラベラーズタイムズの原稿を書いていた。
正直に言うと、わざわざホテルの部屋にこもる
必要があったわけではまったくないのだけど、
4連休ということで、大浴場付きのホテルに泊まり、
文豪ごっこみたいなことをしてみたかったのだ。

原稿のテーマは、トラベラーズノートの15周年。
ぼんやり頭に浮かんでは消える言葉の断片を
下手な金魚すくいのように薄紙を破りながら、
なんとかとらえて、何度も削ったり、足したりを
繰り返して書き直し、煮詰まったら大浴場で
気分転換をして、どうにか最近もやもやと頭に
渦巻いていたことを文章としてまとめることが
できた(ような気がする)。

読んだ人がどう思ってくれるのか分からないし、
必要とされているのかもよく分からないけれど、
自分としては15周年のメッセージとして、
納得したものが書けたと思っている。
まだ少しだけしっくりと来てないところがある
けど、ここまで書けたらもう大丈夫。
2、3日寝かせて修正したら完成できると思う。

無事任務を果たし、さてどうしようかと
考えていたら、世田谷文学館で『安西水丸展』が
開催されているのを思い出した。
さっそくホテルをチェックアウトすると、
自転車に乗って会場まで向かった。
炎天下の猛暑の中で1時間以上自転車で走り、
へとへとになって会場に着くと、まずはエアコンの
効いた併設のカフェでアイスコーヒーを飲んで休む。
「ほんと気をつけないと熱中症になっちゃうな。
 オリンピック選手は大変そうだな」
そんなことを思いながら、水を何杯もおかわりし、
水分補給とクールダウンをして、体調を整えてから
展示を見た。

会場にはシルクスクリーンから、
本の装丁の原画、漫画の原稿、ポスターまで
たくさんの作品が並んでいる。
温かく飄々としたイラストを眺めていると、
なんだか救われたような気持ちになった。
絵葉書サイズくらいに色鉛筆で落書きみたいに
描かれたイラストと文章がまざった作品が
たくさん展示されていて、こんな風にノートに
描けたら素敵だなと思った。

展示品の中には、愛用のバッグや万年筆、
メガネなどとともに、氏がいつも持ち歩いていた
というポケットサイズのノートも展示されていた。
取材、日記、スケッチなどさまざまな用途を
この1冊に中に書いているということや、
表紙には旅先で手に入れたステッカーを貼って
いたり、さらに旅先でスタンプを押したり、
押し花を挟んだりして遊んでいる、なんてことが
説明されていて、残念ながらトラベラーズノート
ではないのだけど、ノートの使い方については、
とても共感できるところがあって嬉しかった。

「魅力ある絵というのはうまいだけではなく、
 やはりその人にしか描けない絵なんじゃない
 でしょうか。
 だからそういう絵を描いていきたいなと
 思います」

「こういうふうに生きたいと
 思っていることがある。
 絶景ではなく、
 車窓のような人間でいたいということだ」

イラストなどの作品とあわせて
展示されている氏の言葉も含蓄があって、
じっくりと読み込みながら、ゆっくり展示を
楽しむことができた。

世田谷文学館から家まで25キロ。
だけど夕方で日差しも穏やかになり、
心も体もリフレッシュできて、軽快にペダルを
漕ぎながら家まで向かった。

家に着くと、ラーメンズファンの娘が、
くだんの件でいたく傷ついたようで、
家ではしばらくオリンピックやそれに関連する
ニュースなどをテレビで見ないようにとのこと。
特に興味があったわけでないし、
まあ、それもいいかな、なんて思った。


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コメント (3)

Sally:

インスタなどを眺めていると、まるで実物かのような整った絵を描ける人って世の中にはたくさんいるんだなぁと感心します。
でも、線が歪んでいたりはみ出したりしている絵の方がどういうワケか
見ていて飽きないし魅力的なんですよね。
私もテレビを捨てて9年間観ない生活してます。一連の件は見ないくらいがちょうど良い塩梅でしょう。
トラベラーズタイムズの新刊は毎年楽しみです。
出来れば年3回くらい読みたいくらいです。

Hide:

「大衆食堂へ行こう」は何年か前に手に取ろうとしたら絶版でした。がっかりしていたら何と東京駅のトラベラーズファクトリーにあり即購入しました。即読了。水丸さんのお人柄がよく出ている一冊でした。この個展は見逃さないようにしないと…とずっと思っています。

iijima:

Sallyさん、ありがとうございます。私もゆがんでいたり、いびつだったりする絵の方を魅力に感じてしまいます。
トラベラーズタイムズ、楽しみにしくれていてありがとうございます。嬉しいです。年に3回くらい作れればいいのですが…。

Hideさん、ありがとうございます。あれ、お買い上げいただいたんですね。ありがとうございます。個展おすすめです。ぜひ。

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(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。