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Music from Big Mountain


今でも、ザ・バンドの「怒りの涙」(原題 Tear of Rage)を聴くと、

富士山山頂の乾いた風景を思い出します。


学生時代の夏休み、

富士山に山頂の山小屋でバイトした話は前にも書きました。

そもそもなんで、そんなところでバイトをすることになったのかと言う

と、夏が始まる直前、当時1年くらい付き合った女の子と別れることに

なって、ぽっかり空いてしまった夏の予定と心の隙間を埋めるためにど

こかに行きたくなったから。


旅に出たかったけどお金がなく、旅先でバイトをしようと考えました。

そしてアルバイト情報誌で見つけたのが、富士山の山小屋手伝いの仕事。

山など登ったことがないので、それがどのような場所か分からず、

なんとなくペンションのような場所をイメージしながら向かいました。


食料品を満載したブルトーザーに乗りながら富士山を登り、着いたのは

まさしく山の上の小さな小屋でした。


下界の真夏の暑さに比べ、ここでは真冬のように寒く、まず、その気温

の変化に驚きました。

そして、働いている人達は強い日差しで真っ黒に日焼けし、さらに乾燥

した空気のためか、唇やほおが黒ずんでいます。


着いた夜は高山病による頭痛や吐き気におそわれ、なんでこんなところ

にいるんだろうか?と、ちょっとした後悔を感じていました。


朝4時半、まだ真っ暗な中にサイレンの音とともに起こされます。

眠い目でお客さんを迎える準備をして、扉を開けるととも、たくさんの

登山客が暖を求めて入ってきます。

 

すぐに怒濤のような忙しさになり、食べ物や飲み物を運ぶ仕事をして、

日の出のご来光ととに、みんなで万歳三唱をする頃が忙しさのピーク。


そんな生活も2、3日もすると、慣れてきます。

実は、忙しい時間はそれほど長くもないことが分かってきました。

昼間はキーホルダーや杖などのおみやげ売ったりするのですが、その仕

事はのんびり楽しくすることができました。

場所が場所だけに客商売の窮屈な感じがいっさいなく、売り手も買い手

もフレンドリーな感じで、そのやり取りを楽しんでいました。


この山小屋では、昼間は店内のスピーカーから音楽を流していました。

流れていたのは、サザンやユーミンなど、その時代のヒットソング。

それを私が持ってきたカセットテープに差し替えても、誰からもとがめ

られなかったため、その日以来、私の好きな曲が入ったテープを流し続

けました。

 

好きな音楽に耳を傾けながら、テキ屋のようにお土産を売るのはとても

楽しい時間でした。

 

 

 

テープの1曲目が、ザ・バンドの「怒りの涙」。

この曲は、富士山の風景ととも私の記憶に刻まれました。 

 

そのテープには、ニール・ヤング、ボブ・ディランやライ・クーダーな

ども入っていたのですが、今では他の曲を聴いても富士山の光景が頭に

浮かんできません。


1曲目だったということと、あの泥臭いギターとオルガンのイントロが、

富士山山頂の乾いた空気とあっていたのかもしれません。

iPodのランダム再生で突然この曲がかかると、その時の気持ちが蘇って

きます。


2週間を富士山で過ごし、山を降りる頃には、夏休みも残り少なくなり、

心の隙間もだいぶ埋まりました。そして、次の恋に立ち向かう勇気が持て

るようになりました。

ただ、勇気があっても上手くいくわけではないということも思い知ること

になるのですが・・・。

 

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店長のプロフィール

(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。