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TRAVELER'S books アーカイブ

2007年12月18日

TRAVELER'S books 路上

 

先日、お取り引き先のお店の方とお話をさせて頂きました。

春にミドリ商品の特設コーナーを作っていただけるとので、トラベラーズ

ノートの陳列方法について打ち合わせました。そのお店は本とステーショナ

リーを販売しているお店で、本と一緒にトラベラーズノートを並べるという

ことになりました。 

旅関係の本と一緒に並べるとイメージが出るということで提案して頂きました。

 

「で、一緒に並べる本は何かご希望がありますか?」

「う〜ん・・・あります!」

お気に入りの旅の本と一緒に並べるなんて、 素敵じゃないですか。

 

トラベラーズノートと一緒に、トラベラーズカフェセレクションの本も一緒に

おいて、手書きのコメントのコメントを書いて・・・という感じで話も盛り上

がってきました。

その特設コーナーができるのは3月。まだ時間があるため本はゆっくり選ばせ

てもらうことにしました。

 

せっかくなので、選んだ本をここで紹介させてもらいます。

というか、ここで書きながら選んでいきたいと思います。 

 

まず、1冊目は旅人のバイブル、ジャック・ケルアックの「路上」です。

著者自身がモデルの主人公サルが、ディーンという自由奔放な友人に巻き

込まれアメリカ中を車やヒッチハイクで旅をする物語です。

とにかく留まることなく走り続けることの高揚感をスピード感あふれる文章

で伝えてくれます。

その先のことを考えずとにかく動くこと、語ること、表現すること。

まずはそこから始まることを教えてくれました。

 

あまり難しいことを考えず、この路上の世界に浸ってみることで旅の高揚感を

感じてみてください。 

最近、「オン・ザ・ロード」として新訳が出たみたいなのでそちらも近々読んで

みます。

 

 

2007年12月21日

TRAVELER'S books 東北地方

 

今日は東北をテーマに、TRAVELER'S booksを選んでみました。

もう10年くらい前になるのですが、5年間仙台に住んでいました。

営業として青森や岩手を出張でまわったり、休みの日にはバイクで寂

れた温泉行ったりしていたので、よく旅をした地域です。

そんな東北の旅をテーマにした本を3冊。

 

まずは、太宰治の「津軽」です。

 太宰治が自らの出身地である津軽地方を旅する様子が描かれています。

旧家の息子として生まれた重圧感やルーツ探しなどの要素もありますが、

純粋に戦時下の津軽地方の風物を淡々とユーモアをまじえて書いている

ところが魅力です。太宰作品では、異色な作品ですが、人間失格や斜陽、

またその人生の結末を知っているからこそ、その明るく軽い紀行文が

味わい深く感じます。

旅した時期も春のやさしい季節です。冬の津軽は雪深く、仕事で行くと

きは、後ろからトラックにあおられ、吹雪の中を泣きそうになりながら

車を運転していました。

そんな時期を知っていると、春の津軽はよりやさしく心地よいのです。 

 

続いて、井上ひさし「吉里吉里人」。

売れない小説家が電車で東北を旅していると、ある寒村で電車が止めら

れる。そこは「吉里吉里国」として突如日本から分離独立を宣言した東

北地方の小村。小説家もその独立宣言に始まるゴタゴタに巻き込まれて

いくというお話です。

東北の寒村が独立するという荒唐無稽な話ながら、農業問題や少数民族

の問題など国家主義への批判精神に満ち、さらに東北地方の美しい文化

や自然を緻密に愛情を持って描かれています。 いっきに楽しく読めます。

 

最後は、つげ義春「つげ義春の温泉」。

これは東北地方だけではないのですが、寂れた温泉を描いたら圧倒的に

No1の漫画家つげ義春の温泉をテーマにした漫画、イラスト、エッセイを

まとめた本です。東北の温泉もたくさん掲載されているので選びました。

仙台に住んでいる時は、バイクに乗ってたくさんの古い温泉を巡りました

が、そのきっかけはつげ義春の漫画です。

朽ちかけた壁や黒光りした柱、そして長い年月流れた硫黄が岩に積み重な

った露天風呂。やっぱり温泉は古くさびれたところが良いです。

ただ、行くためのお金と時間がないときは、つげ義春の漫画で温泉気分を

味わってみてください。 

 

2008年01月09日

TRAVELER'S books 無人島


小学校の時に読んだ15少年漂流記やロビンソンクルーソーは、

少年時代の幼い冒険心や旅心を刺激してくれました。

今、旅が好きなのも、その影響が少なからずあると思います。

無人島に漂着してしまうというのは、自分の意思ではない不可抗力

による冒険であるがゆえに、そんな冒険とかけ離れた生活をしてい

る自分にとって、無責任な憧れを感じさせてくれるのかもしれませ

ん。

自分の意思で旅に出られない少年時代には、その憧れもよりいっそ

う強いものだったと思います。

という訳で、無人島への漂着ものを4冊。


 

「漂流」吉村昭著

 

江戸時代に実際あった史実をもとにして書かれた小説です。

土佐の船乗り長平たちが無人島に漂着し、すさまじいサバイバル生

活を強いられます。仲間が死んで、飢えと孤独で精神錯乱に近くな

りますが、新たに漂着した人たちと流木を作り、漂着から12年後

になんとか帰ってくるまでをリアルに描いています。

とにかく絶望的な状況でも、それを乗り越えて生き抜く人間の強さ

を教えてくれます。

時代も国も違いますが、映画「キャスト・アウェイ」も同じ無人島

に漂着し、そこから抜け出すまでを描いたおすすめの映画です。


 

「蠅の王」ウィリアム・ゴールディング著

 

十五少年漂流記とほぼ同じ設定で無人島に少年たちが漂着する話で

す。ただし、十五少年漂流記は、苦難を乗り越えてハッピーエンド

で終わりますが、こちらは、重く残酷な形で話が進んでいきます。

前者は勇気や希望、後者は狂気や憎悪がテーマになっています。ど

ちらもすべての人間が持っている理性や本能であると認識するため

にも、ぜひ読んで欲しい本です。


 

「夏の朝の成層圏」池澤夏樹著

 

少し風変わりな無人島ものです。

まぐろ漁船から落ちて無人島に漂着した主人公は、その状況を受け

入れながら淡々と島の生活を続けていきます。他の無人島小説の主

人公のように苦悩や錯乱に落ち入ることもなく、漂う孤独感も絶望

的というより、都会的な洗練されたイメージすらあります。

読み終わった時に、清々しい清涼感と前向きな未来を感じさせてく

れる、そんな素敵な小説です。孤独への正しい向き合い方を教えて

くれます。


 

「ガリヴァー旅行記」スウィフト著

 

小人の国の話など、誰もが昔に読んだ事のある話だと思います。

数年前にあるきっかけでもう一度読んでみると、子供向けではなく

風刺が効いた批判精神にあふれた大人の小説でした。

小人の国、巨人の国のほかに、ジブリの天空の城ラピュタのもとに

なっている空飛ぶ島「ラピュータ」や、映画猿の惑星を思わせる知

性ある馬の姿をした種族と野蛮で下等な人の姿をした種族ヤフーが

住む「フウイヌム国」など、さまざまな映画や小説の元ネタにもな

っています。

 

2008年01月16日

TRAVELER'S books オートバイの旅


少年の頃、自転車に乗りこなせるようになったことで、急に世界が

広がったような気がしたのを覚えています。

道路はどこまでも繋がっていて、その先には未知の世界が待ってい

ました。


オートバイの旅もまた、その頃の気持ちを思い出させてくれます。

リアシートに一人用のテントと寝袋を積んで、近所の街を抜けると、

気分は少年の頃の未知の世界を自転車で走ったあのわくわくした気

分に戻ります。

その時、僕はどこにでも行きたいところに向かって行くことができ

て、どこでも泊まることができるのです。


オートバイの旅はちょっと特別です。

体中に外気を浴びて走るため、冷たい雨や暑い日差しに直接さらさ

れることになります。また、バイクを走らせるという事は、基本的

に他の人とのコミュニケーションから遮断される孤独な作業です。

それがゆえに、普段見つめ合うことを忘れがちな、風や自然、そし

て自分自身との対話をすることを思い出させてくれるのです。


そんなオートバイの旅の魅力を感じさせてくれる本を。



「禅とオートバイ修理技術」ロバート・M・パーシグ著


著者である元教授が息子を後ろに載せて、友人とバイクで旅をする話

です。ただし、著者はかつて精神病治療のための電気ショック療法で

ある記憶を失い、その息子も神経症のきざしが出てきている。そんな

なかで、バイクでの旅をしながら、哲学的な精神の世界を旅していく。

旅の間、バイクはメンテナンスされ、精神も本来の姿を取り戻してい

く。

バイクの旅と哲学の旅、この2つの旅が交互に書かれていて、正直言

うと哲学の部分はあまり理解できませんが、バイク乗りにとって、バ

イクに乗ることは自分自身に向かう最良の時間であり、それを深く追

求していくことは意味があります。



「風と旅とオートバイ」 斉藤純著


エコロジストでバイク、自転車、音楽への造詣が深い斉藤氏はバイク

と旅をテーマにした本を何冊か書いています。その中から1冊。

『オーバイ乗りは自ら風を起こして、風景のなかを走り抜けていく。』

そんな素敵なシーンがたくさん出てくる短編集です。

ミステリー的なしかけもあり、一気に楽しく読む事ができます。

彼の小説を読むと、旅に出たくなるのはもちろん、音楽や本、映画や

絵に向かいたくなります。



「熊を放つ」ジョン・アーヴィング著


ウィーンで出会った若者2人が中古のロイヤル・エンフィールドに乗

って旅をします。オーストリアの田舎の美しい風景、そしてそこでの

出会い。若い時代の純粋さ、そして痛々しい衝動を瑞々しく描いてい

る小説です。

ジョン・アーヴィングの初の長編で、村上春樹氏の翻訳です。



「俺様の宝石さ」浮谷東次郎著


23歳の若さで事故死したレーシングドライバーの著者が、18歳の

時に単身アメリカへ向かって、生活する姿を日記や手紙で綴った本。

1960年、まだ準占領下の時代の日本なか日本を飛び出し、バイク

を駆ってアメリカを放浪する姿は、眩しく読者を鼓舞します。

 
 

2008年01月25日

TRAVELER'S books 旅とエコロジー


地球温暖化や環境破壊のニュースなどを見たときに、自分自身

の直接的な問題としてリアルに感じることはなかなか難しいことです。

環境問題を利用した政治的な思惑や商売としてのマーケティング的発

想が、本気で環境のことを考えていない場合が多いのも事実です。

今回の再生紙の問題はまさしくそうでしたし、CO2の排出枠が取引さ

れるというのも本質的に考えるとおかしいような気がします。


ただし、南太平洋の島々の海面上昇や北極・南極の氷河の融解の状況

など、危機的状況がせまっているのも事実です。

旅人は、その場所を実際に訪れ、目にして、体感することで、そこを

遺していきたいとリアルに感じることが出来ます。ニュースを見た時、

そこが行ったことがある場所であれば、その場所とそこで会った人た

ちが目に浮かびます。そんな身近な感覚を大切にしながら、環境を考

えることが大切だと思います。


今日は、エコロジーを考えるきっかけになる旅の本を。


「日本の川を旅する」 野田知佑著


カヌーに乗ったことはないのですが、川の水面をゆっくりと走る感覚

はいつか味わってみたいと思っています。そう思ったのも、野田さん

の本を読んだのがきっかけです。特に彼の場合は、スポーツとしての

カヌーではなく、旅の手段としてカヌーの魅力を語っていのが良いで

すね。日本の川というのは、環境破壊の影響がもっとも早く顕著に

現れた場所で、そのことによって自分の好きな場所が奪われていく

ことへの怒りとして環境問題を語っている姿は、説得力があります。


「青春を山に賭けて」 植村直己著


植村直己氏の作品はどれもおすすめなのですが、一冊選ぶとすると

この「青春を山にかけて」かな。山に登ることが好きな青年が、

大学を卒業して就職をせずに、世界中を放浪しながら、好きな山に

登るひたむきな姿が描かれています。

自然にも、人にも謙虚かつ大胆に向かう姿勢が素晴らしい。

彼が生きていたら、今どんなことをしていたでしょう?


「パパラギ」 岡崎照男、ツイアビ著


1915年、南太平洋のサモア島の酋長ツイアビが、初めてヨーロッパ

を旅したときのことを島の人たちに語った演説を本にしたものです。

未開の地の人の純粋な目線で、文明国を見たときに感じる疑問や感想

は、強烈な文明批判であると同時に、人としての本質をシンプルに

教えてくれるメッセージとなっています。

現在、地球温暖化によって、南太平洋の島々がなくなってしまうという

危機にあるのは、なんとも言えず皮肉なことです。


「顔のない国」 カート・ヴォネガット著


昨年4月に亡くなったヴォネガットの遺作エッセイ集です。

環境の話ばかりではないのですが、永遠に発展していくことを目指そ

うとする科学や経済に対して強烈な批判を投げかけながら、同時に

人間への愛情を優しく語っています。

環境を壊していくのは人間です。でも、私たち人間が地球のために

出来ることもたくさんあるはずです。


「ウォールデン 森の生活」 ヘンリー・D・ソロー著


純粋に言うと、環境問題について語っている本ではありませんが、

著者が都会から森の中へ行き、湖のほとりで自活の生活を哲学的に

書いた本です。

森の生活を冷静に深く見つめることで、自分自身や世の中のしくみ

について解き明かしていきます。

難しい本ですが、時間をかけて繰り返し読んでいきたい本です。

 

 

 

2008年01月30日

COW BOOKS

 

今日は会社の帰りに中目黒のCOW BOOKSへ行ってきました。

ここは、暮しの手帖の編集長で文筆家の松浦弥太郎氏の本屋さんです。

古本屋なのですが、その本のセレクトや並びに店主の思いが伝わってくる

ような本屋さんです。

ロゴには「EVERYTHING FOR THE FREEDOM」と書かれていますが、

並んでいる本の背表紙を見ているだけで、自由を感じてわくわくしてきます。




最近、前に紹介したBOOK246や、メジャーなところだとヴィレッジ

ヴァンガードなど新しい視点で本を売るお店が増えていますね。

本ってやっぱり、人の生き方や価値観に大きな影響を与えるものですし、

私自身も本で救われたり、勇気をもらったことがたくさんあります。

玉石混淆の出版物のなかで、素敵な本との出会いの機会を分かりやすく

与えてくれる本屋が増えるのは嬉しい事です。

 

 

 

お店で牛のロゴマークのスタンプを押すことができます。

使い始めたばかりの今年のダイアリーの扉に押しました。 

2008年01月31日

TRAVELER'S books 放蕩の旅人


前にも書きましたけど、「男はつらいよ」を見て育った私は、寅さんの

ような生活に憧れて、小学生の頃は、将来寅さんみたいな仕事をしたい

と思っていました。

あんな風に、日本中を旅しながら仕事をし、いろいろな女性と恋をした

りして気楽に暮らしている姿は、やはり今でも憧れます。

放蕩という言葉の意味を調べると「ほしいままにふるまうこと」とあり

ます。人様に迷惑をかけなければ、まさに自由な旅人の原点なのかもし

れません。

しかし、その裏には、最後には振られてしまう寅さんのように辛い局面

があるのも世の常です。

それを分かっていながら放蕩の旅に出る達人たちの本を紹介します。



「火宅の人」檀一雄著


檀一雄の自伝的な小説です。

家族を顧みず、愛人との生活をしながら自由奔放に一つの場所に腰を落

ち着けることなく生きていく姿は、まさに放蕩の旅人です。

「いつの日にも自分に吹き募ってくる天然の旅情にだけは、忠実でありたい」

女と酒と旅に溺れながら破滅に向かう生活は、やがて孤独や寂寥感をよ

り深める結果になります。それでも、そんな結果を自嘲的に受け入れる。

ひとり旅が好きな人は、きっとこの寂寥感に共感できると思います。

(沢木耕太郎著の「檀」は火宅の人の生活を檀夫人の視点で描かれています。)

 


 

「町でいちばんの美女」チャールズ・ブコウスキー著


トム・ウェイツやU2のボノが敬愛する酔いどれ詩人ブコウスキーもまた、

放蕩旅人です。

彼の魅力は、彼独特のリアルな視点で世の中の不正や疑問をえぐっていき

ながら、同時に、彼自身のコンプレックスや心の弱さを無防備にさらけ出

しているところです。

アメリカの底辺の暮らしに安住する人たち、ブコウスキーはそれを否定も

肯定もせず、自らもそこに一緒に溺れ、その生活を優しく描きます。

彼自身50代で作家として成功するまでは、その底辺の生活にどっぷりと

つかっていましたし、作家として有名になってからもその姿勢を変える事

がなかったからこそリアルにそれが伝わります。

とにかく、そんな姿勢がたまらなくかっこいい!


 

「カラマーゾフの兄弟」ドストエフスキー著


新訳が出てベストセラーになっています。私もむかし読んで途中で挫折

したくちで、新訳で最後まで読み切ることが出来ました。

とても長い小説ですが、物語の大半が、放蕩家族カラマーゾフ家の周辺

でおこる3日間の出来事を綴っています。

どろどろした男女関係と純粋な恋愛、放蕩生活をする人たちと慎み深い

人々、神の存在を否定する人と肯定する人、あらゆる人間のテーマを深

く高密度な筆致で語ってきます。

読了後、ロシアのカラマーゾフ家の放蕩生活の中を数日間、旅してきた

かのような疲労感と新鮮な清々しさを感じました。

まさしく人生は旅であると実感。



「男はつらいよ 寅さんの人生語録」山田洋次、浅間義隆著


日本で一番有名な放蕩の旅人といえば、やっぱり車寅次郎ですよね。

だらしなく女性にうつつを抜かし、定職につかずテキ屋家業で旅の生

活をおくる。でも、女性に対してはプラトニックに徹し、ヤクザ稼業

といえども犯罪や仁義に反することには手を染めない、いつもお金に

は困っているけど借金に手を出している様子もないし、実はすごくま

っとうな人だったりもします。

それがみんなに愛されている理由でしょうし、作り話だからと言って

しまえば、「それを言っちゃあおしめいよ」と身も蓋もありません。

とにかく、そんな人だからこそ寅さんの言葉は含蓄があり、心に響く

のでしょうね。

別れ際、人差し指を立てて

「行き先?まあ風にでも相談して決めるよ。」

言ってみたいなあ。



 

2008年02月20日

TRAVELER'S books 家を出る少年

 

少年の頃は、誰でも家とか両親に居心地の悪さを感じて、家出に憧れを

抱く事があると思います。自分もそうでした。

実際に家出をすることはありませんでしたが、会社に入ったときに地方

営業所への配属を希望したのは、家を出たかったというのが一番の理由

でした。

家を出るというのは、誰にとっても大事な通過儀礼なのかもしれません。

夢を抱いていたり、今の現状を打破したかったり、風来坊に憧れたり、

若い頃のそんな気持ちは旅への大きな原動力になります。

そんな気持ちを思い出させてくれる本を選んでみました。

 

 

「ライ麦畑でつかまえて」サリンジャー著

 

高校時代に産休の先生の代わりにやってきた先生は、いきなり最初の

授業で本のリストのコピーをくばり、この中から1冊読んで感想文を

書きなさいと言いました。私はその中から、この風変わりな題名の本

を選びました。

全寮制の学校を抜け出して、ニューヨークの街をさまよう主人公は、

世の中の欺瞞に嫌悪感を抱き、逆に純粋なものに愛情と憧れを持ちな

がらも、それに対してうまく対処できず、うろたえて苦しみます。 

高校時代、輝いて楽しい毎日というより、不器用に不安をやり過ごす

生活を送っていた自分にとって、この本が大きな救いになりました。

主人公と同年代の頃に、この本を紹介してくれた先生にはとても感謝

しています。その本のリストに載っている本はその後すべて読みまし

た。

そういえば、昔付き合っていた女の子に、この本をプレゼントしたら

すっかりこの主人公のことを好きになってしまい複雑な思いをした、

なんていう青臭い思い出もあります。 

また、村上春樹氏が「キャッチャー イン ザ ライ」という題名で

同作を訳しています。

 

 

「スタンドバイミー 恐怖の四季秋冬篇」スティーブン・キング著

 

小説を忠実に映像化した映画も良いですが、小説だとより感情移入して

あの世界に浸ることができると思います。

内容は、ご存知だと思いますが、複雑な家庭事情をもつ4人の少年が

死体探しの旅に出る話です。それと同時に、それぞれのどうしようも

ない現実と夢が4人を引き裂いていくのを予感させます。

旅は少年の心の中を素直にさらけ出します。そんな少年達の心の動き

が、とても美しく描かれています。

スタンドバイミーは、恐怖の四季という4つの連作の中の1作ですが、

春秋篇に掲載されている「刑務所のリタ・ヘイワース」は、名作映画

「ショーシャンクの空に」の原作です。

 

 

「家出のすすめ」寺山修司著

 

本の題名からして挑発的です。

天井桟敷というアングラ劇団を率いていた作者の世界観は、保守的な

価値観への嫌悪と挑発に満ちあふれています。

ここで言う家出とは、自由や自立、創造や反骨の象徴なのかもしれませ

ん。彼の母親や故郷青森を語る口調は、非難や嫌悪に満ちていますが、

その裏には隠す事のできない深い愛情が見えるので、とても味わい深く

伝わってきます。

この本に描かれている70年代の時代の雰囲気を感じ取れるのも、魅力

です。

 

 

「最低で最高の本屋」松浦弥太郎著

 

前に紹介したCOWBOOKSの創始者、松浦弥太郎氏の自伝的な内容を

含んだ本です。高校を中退して、アメリカへと旅するなかで仕事とし

て本を扱うようになっていく経緯が書かれています。

自分の好きな事を追求し、誠実に地に足がついた形で、強い思いをも

ってやっていけば、いつか何かを成し遂げられる。そんな希望に満ち

あふれた本です。

彼の文章は優しく暖かく読者の心を勇気づけます。

 

 

「ロッキン・ホース・バレリーナ」大槻ケンジ著

 

ロックと旅が好きならきっと楽しく読める小説です。

メジャーデビューを目指すバンドが、マネージャーの屈折した元バンド

マンのおじさんと地方ライブハウスを巡る旅に出るお話。途中、家出少

女がその旅に加わり、話は展開していきます。

くだらない部分もありますが、著者の実体験に基づいたバンド絡みの話

が全体にリアリティーを加え、本の世界に引き込まれていきます。

なにより著者の深いロックへの愛情が、ぐっと胸をうちます。

やっぱり、ロックっていいなあ。

 

 

 

2008年03月05日

All My Life For Sale

 

この前の休みにブックオフを覗いてみたら、面白い本を見つけました。

 

「僕の人生全て売ります」ジョン・フレイヤー著

 

自分の人生をリセットして新しい生活を始めるため、自分の持ちモノ

全てをインターネットオークションに出店して、売ってしまうという

企画物の本です。

そうやって売られたモノは、ガレージセールで見つけたイスや着古し

たTシャツ、さらに自分で編集したカセットテープや食べかけのタコス

など、ほとんどが駄モノ。

でも著者にとってはそれぞれ思い出深いモノばかりで、ひとつひとつ

のモノにまつわる歴史を思い入れたっぷりに語りながらオークション

で販売していきます。

さらに買った人たちとの間にコミュニケーションが生まれ、売られた

モノのその後の姿も追っていきます。

そうすると、駄モノだと思っていた品々がとても魅力的に見えてくる

のです。

モノにストーリーが刻まれた瞬間に、輝きを放ち始める。あらためて

そんなことを気付かせてくれる本です。

 

日本人の私たちにとっては、売っているモノの写真や説明は、アメリ

カの一般的な学生の生活を覗き見る楽しさもあります。

 

本と同タイトルのサイトを見る事もできます。 

http://www.allmylifeforsale.com/

 

 

 

2008年03月07日

100冊のリスト


「トラベラーズノートが選ぶ旅を感じる本100冊」


本とノートは、一人旅の必需品です。

本は、誰かの話を聞きたくなったときの寂しさを埋めてくれます。

ノートは、誰かに話しかけたくなったときの気持ちを書き留めること

が出来ます。

そうやって自分と向き合う時間を持てるのが、一人旅の良いところな

のかもしれません。


そんな時間は、旅に出ていない日常の中にも必要です。

本やノートに向き合い、じっくり自分と話をする時間を持つことは、

一人旅に似ています。

トラベラーズノートとここで選んだ本を手にして、旅するように毎日

を過ごしていただければ幸いです。


 

 

 

2008年04月22日

北回帰線


学生時代に一度読んで途中で挫折し、そのままになっていたヘンリ・

ミラーの「北回帰線」。あるきっかけで再度読んでみました。

 

ストーリー展開もなく、詩的で抽象的な文章が延々と続く話で、何度

か本を閉じたまま、別の本を読んだりしながらも、やっと読み終わり

ました。

やはり、すべてを理解するにはほど遠いですが、理解できなくても、

彼の自由への姿勢を少しだけ感じることが出来ました。

 
久しぶりにリフィル画用紙に・・・。
 
 

 

2008年04月28日

ゴルゴ13


 

金曜日の夜中、そろそろ寝ようと思いながら何気なしにテレビのチャン

ネルをいじっていると、「ゴルゴ13」のアニーメションをやっている

を見つけ、最後まで見てしまいました。

ゴルゴ13といえば、40年近く連載している超ロングランの名作マンガ

ですね。私も10年前の一人暮らしの頃には、近くの良く行く食堂に全巻

置いてあり、100巻くらいまでは読破しました。

今でもたまに読む大好きなマンガです。

 

ゴルゴ13は、世界を舞台に活躍するプロフェッショナルのスナイパー

です。

感情や状況に流されることなく、困難に立ち向かい淡々と仕事をこなし

ていく姿は、男として憧れます。

まさに、揺るがずとらわれない理想的な精神状態を常にキープしていま

す。

 

ゴルゴ13は、世界を旅するビジネストラベラーでもあるということで、

トラベラーズノートを使っている姿を想像したのですが頭に浮かびませ

ん。

そういえば、すべての情報は頭の中にインプットし、証拠に残るような

メモやノートは残さなかったような・・・。

 
 
 

2008年05月15日

Lonely Planet


Lonely Planet というガイドブックをご存知でしょうか?

欧米人バックパッカーのガイドブックとして圧倒的なシェアを誇り、

旅先でも、このガイドブックを手に街を歩く人をよくみかけます。

主要都市の日本語版も出ていますが、英語版には各都市ごとのガイド

だけではなく外国語会話集や旅写真の撮影法など旅に関したたくさん

の本があります。


先週の出張で、トラベラーズノートのプロフェッショナルユーザーの

Patrickさんのもとを訪ねたときに、こんな小さなLonely Planetを見

せていただきました。

 

 

 

高さ5cmほどで手のひらにすっぽり入るサイズ。

マレーシア・シンガポールのガイドになっています。もちろんLonely

Planetが誇る豊富な情報量を望むことは出来ませんが、こんな可愛ら

しいガイドブックならポケットに忍ばせたくなりますね。


こういう遊び心、好きだな~。 
 
 
 
 

ところで、中国四川省の地震ですが、時間が経つにつれて、その被害の

大きさが明らかになっていきます。

ミャンマーのサイクロン被害でも数万を超える人々が命を亡くしていま

す。ご冥福を祈るととも、被災地の早期の回復を願うばかりです。

 

2008年05月21日

岡本太郎とパンク

 
「今日の芸術」岡本太郎 著
 

岡本太郎がとても分かりやすい言葉で、論理的に「芸術」の意味を語っ

ている本。

「今日の芸術は、うまくあってはならい、きれいであってはならない、

ここちよくあってはならない。」

なぜなら、それらはすでに過去の模倣であり、芸術はそれらを否定し、

覆すところにあるという。

岡本太郎はパンクだった。

とても勇気づけられ、心を揺さぶられた本です。

 

 

 

ノートに描いた一節は、「きれい」と「美しい」についての説明です。

これらは、混同されがちで、きれいなものが価値が高く、本当に美しさ

が理解されにくいために軽んじられることが多いことを感じていたので、

すごく納得しました。

例えば、朽ち果てた建物の時代を感じさせる美しい情景が、のっぺりと

したきれいなだけの建物が並ぶ街に変わってしまうことが多いのは、悲

しいことです。


ブルーハーツの歌を思い出しました。

「どぶねずみみたいに美しくなりたい・・・」

やっぱり、岡本太郎はパンクなのです。

久しぶりにブルーハーツでも聴いてみよっと。


個人的な話ですが、今日(20日)は30代最後の1年の初日。

あと1年で不惑の年。

でも、きっと1年後もいろいろ迷って悩んでいるんだろうなあ。

パンクロックとトラベラーズノートから元気をもらいながら、がんばり

ます!

 

 

2008年06月17日

Travels with Charley


既に人気作家になっていた58歳のスタインベックが完全装備のキャンピ

ングカー・ロシナンテ号で、愛犬チャーリーとともにアメリカを旅するお

話です。

 


 

ノートに書いた冒頭の文章が、旅への衝動を簡潔に言い当てています。

若い頃は、旅への衝動は、大人になったら消えると言われ、大人になった

ら中年になったら治ると言われたが、58歳になっても依然熱は冷めない。

そんな彼が、旅への若々しい情熱と文学者の冷静な視点を持ってアメリカ

を旅した記録です。

1960年当時のアメリカの保守性や人種差別など、現在にまで引き継が

れている問題点を描いています。

 

ジャック・ケルアックの「路上」で描かれたヒッチハイクの旅とは対局に

ありますが、どちらも旅人の視点で見る事で、リアルなアメリカが見えて

きます。


いつか、こんな旅をしてみたいですね。

 

 

2008年07月08日

植草甚一スタイル


前に、古本屋でその著作を見つけ気になっていましたが、そのときは

けっこうな値段がして結局買わずに店を出ました。

その後、別の古本屋で彼の本を見つけ、思わず買ってしまったのが、

「植草甚一 スクラップ・ブック 10 J・J氏の男子専科」。

 

モノや服装へのこだわり、古本屋で手に入れたアメリカの雑誌や小説の

こと、散歩中に飲む喫茶店のコーヒーの味まで、さまざまことが軽妙な

文章で書かれていて、ぐいぐいその世界に惹き付けられました。

 

さらに「植草甚一スタイル」を開くと、彼の集めた妖しい雑貨やセンス

良い小物、丁寧にスクラップされた資料や日記帳などが写真付きでみる

事ができます。

レシートや名刺、チラシの切り抜きが貼られ、丁寧に書き込まれている

日記帳や雑誌からの切り抜きで作られたコラージュ作品。

 

かっこいい!

どれも、トラベラーズノートの使い方の素敵なお手本になるものばかり

です。

 


 

植草甚一は、1960年代~70年代に活躍したジャズ/映画評論家。

ジャズや映画に留まらず、雑貨、古本、サブカルチャー、ファッション、

雑学、ロックや散歩まで、幅広いコラムが残されています。

 

その集大成が「植草甚一 スクラップブック」で、全40巻あります。

1976年から1980年にかけて刊行されました。

2004年に復刊していますが、ここはやはり、古本屋で少しずつ買い

そろえていきたいな。

 

2008年07月16日

The Road by Jack London


「白い牙」や「野生の呼び声」などの動物文学で知られる

ジャック・ロンドンが、ホーボー(放浪者)としてアメリカを旅した

時のことを綴った本。

 


 

映画などで良く見られる貨物列車にただ乗りをしながら、アメリカを

放浪する人たちをホーボーと言います。その実際の体験に基づいた

記録として、とても興味深く読む事ができました。


家も定職も持たずに自由に放浪するその生活は、旅が好きな人は憧れ

ますが、実際には、寒さに震えたり、牢獄に入れられたり、権力者か

ら迫害を受けたり、厳しく辛いものであることが分かります。

 

その上で、ホーボーであることに誇りを持ち、放浪を続ける著者の姿

は、旅人であれば、必ず敬意を感じると思います。


1890年代のアメリカのホーボーの文化を分かりやすく解説してく

れるのもこの本の魅力です。


ロバート・ジョンソンも、ウディ・ガスリーもこうやって旅をしたん

でしょうね。

 
 

2008年08月04日

食人国旅行記


最近発見した渋谷駅近くの古本屋、Flying booksはいい感じの品揃え。

それほど大きくない店内にもかかわらず1時間近くも本棚を巡ってしま

いました。


欲しい本はたくさんあったのですが、結局買ったのはサドの

「食人国旅行記」とスタジオ・ヴォイスのバックナンバーを2冊。

 

澁澤龍彦やサドは学生時代に何冊か読みましたが、その社会的反逆性

や知的な世界観は、ロックに浸かっていた当時の心情にぴったりとは

まったのを覚えています。

もちろん中世の色っぽさや倒錯した性、妖しげな世界も読む大きな動機

になってました。


そのサド&澁澤龍彦の作品で、まだ読んだことのない「食人国旅行記」

をFlying booksを見つけ、いかにも妖しい題名と旅行記という部分に惹

かれ買ってしまいました。

 



さらわれてしまった新妻をさがして、冒険の旅をする主人公が奇怪な国

を訪ねるお話。

 

サドの本としてちょっと異色な感じであまりドロドロしていなく、ガリ

ヴァー旅行記を思わせる風刺のきいたお話。

当時のサドが考える反ユートピアとユートピアの国への旅を疑似体験で

きます。


2008年09月05日

空翔ぶ不良

 

タイ在住の日本人Tさん(男性)は、レストランやお店のスタッフ(主に

女性)と仲良くなってしまうのが得意。

 

タイに行ったとき、例えばレストランやカフェで待ち合わせをして、会い

にいくと必ずお店の女の子と楽しげに話をしたりしています。

 

「こういうお店では、顔が利くスタッフをつくっておかないと、オーダー

を忘れられたりするからさ~」とか言い訳がましく言ったりしますが、そ

んな風にふるまえるTさんがちょっと羨ましかったりもします。

 

 

百瀬博教著「空翔ぶ不良」は、トラベラーズカフェ・みんなのトラベラー

ズストーリーのHideさんの話「訪れた証1」で紹介されているのを読んで

以来、ずっと探していた本。

古本屋さんで見つけたときは、心の中で思わずガッツポーズをしてしまい

ました。しかも値段がたったの¥300!

 


 

画用紙リフィルに書いた引用文は、著者が飛行機に乗った際にスチュワー

デスに言った言葉。

 

初めて会った女性にこういう言葉をさらり言う、そのセンスと人柄がとて

も素敵。下心なく自然に思ったことを言ってしまう正直さと、相手に対す

る思いやりや気遣い、そして大人の知性とセンスがあって初めて言えるセ

リフですね。

 

この本には、そんな著者の人柄がにじみでた旅のエピソードが満載です。

これから年を重ねていくにあたって、素敵な人生の教科書になりそうな1

冊です。

 

ちなみに、「紅いコーリャン」の主演女優はコン・リー。

あどけなさと色気、儚さと強さを併せ持つとても魅力的な女性として描か

れています。「菊豆」もおすすめ。


2008年09月29日

京都の素敵な本屋さん

 

京都の話の続きです。


京都に着いて宿にチェックインしてから、最初に向かったのは本屋さん、

恵文社一乗寺店

ある本で紹介されたのを読んで、行ってみたいと思っていた本屋です。


路面電車のような叡山電車に乗っていき、降りた街は繁華街というよりは

学生が多そうな住宅街。小さな商店街を歩いていくと、ノスタルジックな

手描き看板が見つかりました。


本が好きな人なら、きっと何時間いても飽きない本屋さんです。

それぞれの書棚の本の並びに、お店の方の思い入れをひしひしと感じます。


北欧インテリアやエアラインのデザイン本から、都市をテーマにした本が

並び、その流れでバックパーカー向けの旅の本、さらに、ジャックロンド

ン~ヘンリーソロー~ビート文学~マルキドサドなどの幻想文学・・・。


例えば、作者のあいうえお順や出版社別にならんでいる本屋では決して見

つける事のできない素敵な本との出会いを与えてくれる並べ方。

世界観別の並べ方と呼べばいいのでしょうか、その世界観が繋がって新た

な世界へと誘い導いてくれます。


さらにお店には、素敵な雑貨やCDが並んでいます。これもちゃんと必然

的で、例えばスローライフの雑誌の先に作家ものの陶器やバッグが置いて

あったりします。


ちょっと中心地から離れていますが、本が好きな方は京都に行った際には

寄ってみる価値があると思います。

 

 

 

 

さらに京都ではいくつか本屋さんにより、こんな本を買ってきました。

わざわざ京都で買うみやげではないのかもしれませんが・・・。

 

 

 

2008年10月07日

暮らしのリ・デザイン

 

本を探すときは、いろいろなパターンがあると思います。

誰かのおすすめだったり、本で紹介されていたを見つけたり、お気に入り

の作家の新しい本だったり・・・。

本屋で何気なしに手にとった本で、特別期待もしていない本が思いのほか

面白かったりするのは、本が好きな人にとっては嬉しいものです。

 

 

 

こちらの本は、前に京都に行ったときに購入した本。

作者も本のタイトルも知らなかったのですが、感じの良い陶磁器やお椀と

並んでこの本が売っていて、自然にレジに持っていってしまっていました。

お店の思惑通りに身を任せてしまって購入した本です。


しかもレジに持っていき、その本が古本で定価よりも高い価格が付いてい

たのに気付いたのでした。

 

で、後悔したかというとその逆です。


前置きが長くなってしまいましたが、秋岡芳夫著「暮らしのリ・デザイン」

私たちが普段使う箸や茶碗やお椀などの道具には、どれも日本人の暮らし

のなかで培われた最適な重さや寸法があり、職人は巧みな技と技術で作ら

れるモノにはきちんと訳があるということを教えてくれます。


例えば、日本人のように手に持って使う汁を入れるお椀は、100グラム

がちょうど持ちやすいサイズ。さらに、プラスチックのお椀はまっぷたつ

に割ると厚みが均一になっているが、職人が作ったお椀は底のほうが少し

厚くなっている。これは、重心が下にきて手に持ったときに持ちやすいよ

うにそうなっている。


大量生産の一見似たような安物と、長年の歴史の中で受け継がれた職人の

技によって出来た良いものとの違いをとても分かりやすく解説してくれま

す。

きちんと作られたものを大切に長く使い続けるライフスタイルをロハスと

いう言葉が生まれるずっと前から推奨しています。


28年前に書かれた本ですが、今この時代だからこそ必要なモノ作りやモ

ノを使うためのヒントをたくさん見つけることができます。

 

2008年10月21日

Wouldn't it be nice /素敵じゃないか


これは発売時に本屋で見かけたときには、スルーしてしまった本。

帯に書かれたキャッチコピーは「村上春樹Xブライアン・ウィルソン」と

あって著者よりも訳者名を全面に出した売り方にちょっと嫌悪感を感じた

からかもしれません。

 

でも、ビーチボーイズも村上春樹も大好きだし、ペットサウンズは何度も

聴いてるフェイバリットアルバム。数ヶ月後に見かけたときには迷わずレ

ジに持っていきました。

 

 

 

ペットサウンズがロック史上屈指の名盤として位置づけられている理由と

して、その音楽的な美しさや革新性、そのコンセプトメイキングの完成度

の高さなどがあるのはもちろんですが、あわせてブライアン・ウィルソン

が、孤独や不安、居心地の悪さなど不安定で憂鬱な心情をを隠すことなく

表現し、それにより同じようなことに悩まされている人達を救ってきたこ

とがあるのだと思います。

 

少年時代に誰もが感じる不安感や孤独感は、純粋に人や物事に向かい合お

うとしたときに相対的にあわられる感情で、新しいモノや美しい作品、素

晴らしい何かを生み出そうとするときには、それが大きなパワーにもなり

ます。ブライアン・ウィルソンは、それを「ペットサウンズ」という圧倒

的な輝きをもつ美しい作品によって証明することで、そんな負の感情に前

向きに立ち向かう勇気を与えてくれました。

 

この本はペットサウンズを聴いたことがなくて、今後聴こうという意思の

ない人にはきっと意味がない本だと思います。

でも、ちょっとでも聴こうかなと思っていた人が読んだら、深く何度も聴

かずにはいられなくなる本です。

 

著者の思い入れたっぷりの情緒的な評論と、あわせて深い洞察力に基づい

た音楽的な解説は、もう一度ペットサウンズにきちんと向かい合うきっか

けを与えてくれました。

 

それぞれの章のタイトルが、歌詞の一節を引用したものになっているので

すが、それを読むだけでグっときます。村上春樹氏の訳す歌詞が読めるの

も魅力ですね。最後にその目次を引用しておきます。

 

プロローグ

「僕にはちゃんとわかっているんだ。自分が間違った場所にいるってことが」

第1章 「ときにはとても悲しくなる」

第2章 「僕らが二人で口にできる言葉がいくつかある」

第3章 「キスがどれも終わることがなければいいのに」

第4章 「ひとりでそれができることを僕は証明しなくちゃならなかった」

第5章 「しばらくどこかに消えたいね」

第6章 「自分にぴったりの場所を僕は探している」

第7章 「でも僕はときどきしくじってしまうんだ」

第8章 「答えがあることはわかっているんだ」

第9章 「この世界が僕に示せるものなど何ひとつない」

第10章「美しいものが死んでいくのを見るのはとてもつらい」

エピローグ

「もし僕らが真剣に考え、望み、祈るなら、それは実現するかもしれないよ」

 

2008年12月09日

バイコフの森

 
 
 

この本は、ここのパブオーナーより教えてもらいました。

前に私が旅の本を紹介したチラシを読んでくれていて、それらを知った上

で、旅の本として、この本を紹介してくれました。


この本は、第二次大戦前、シベリアとの国境に近い北満州の密林に生活し

た男の記録です。日本では北海道、アメリカではアラスカなどの北の大地

は、男が孤独に旅をする姿が似合います。

この本で読むことができるのは、ソローの「森の生活」、星野道夫や野田

知佑の本などで描かれているような男がひとり北の荒野を旅する姿です。

 

パソコンやビジネス用語ではなく、ナイフや銃の扱い方を知ることで、

自力で生きていく世界。そんな世界に憧れる気持ちは、男だったら誰でも

あるはずです。


著者、バイコフも厳しい密林で猟をしながら生きていく姿を淡々と描いて

います。

 

例えば、森の中で野営して夜を過ごすと聞こえてくる虎の鳴き声を壮大な

音楽と例えて聞き惚れる話。また、チャオルという鳥は、密林で道に迷い

離ればなれになってしまった兄弟が鳥になったから、とても悲しい鳴き声

で鳴くという話。著者の視点は自然やそこに暮らす動物に対する深い愛情

に満ちています。


また、街を追われ森で暮らさなくてはならなくなった貧しい人や、脱獄し

森の中に身を潜めている人、さらに孤独を愛するがゆえに森にこもり暮ら

している人など、森で暮らす人達との交流は、人間の本質的な生きる意味

を考えさせてくれます。

 

森の中では、人間も他の動物と同じように日常的に死があり、銃を手にす

ることで、やっと他の動物と対等に渡り合えることができる弱い存在なの

です。


ノートに書いた一節は、人食い虎と対峙し、銃を向けている瞬間です。


こういう本が好きな男は、ちょっと信用できるような気がする。

そんな本です。

2008年12月19日

HOW TO 大冒険

 

 

 

 

この本は、中学生の頃手に入れて何度も読み返した本。

エジプト考古学者として有名な吉村作治教授が、まだ有名になる前の

1974年に書いた本。自らエジプトの調査発掘の体験を交えながら、

冒険への心構えやノウハウを綴っています。


吉村氏は異国で冒険をしたいという欲求を持ちながら学生時代をすごし

ていました。そんな中で、エジプトで調査をするという学術的な目的を

見つけることで、まわりの了承を得て冒険へと旅立つことができました。

つまり、エジプトの調査は口実で、異国で冒険することが目的だったの

です。


ただし、エジプトに行ってからは、カイロ大学へ留学し考古学を学び、

さらにエジプト人の女性と結婚をするためイスラム教に改宗するほど、

その国の生活に身をひたしていました。

(現在はその女性とも別れ、無宗教を公言しています)


さらに、アラブゲリラに参加したり、クーデターに遭遇した時はその

将校にインタビューをしたり、強い行動力による冒険譚は、その時代性

を感じさせてくれるとともに、とてもわくわくさせてくれます。


この本が出版された時代は、今ほど海外旅行が一般的ではなく、若い人

が目的もなく、海外に旅立つことは少なかった時代です。

それゆえに、海外に出ることにたいして、気負いや過度の力みが感じら

れたりもしますが、その分、情報も少なく旅先での驚きや感動も大きか

ったのかもしれません。


知らない家にタダで泊まる方法、安いメシ屋を探す方法から、ラクダに

乗る方法や、肉と粘土で干し肉を作る方法まで、これらのノウハウは当時

の若者にとっては数少ない海外への冒険のための情報だったのかもしれま

せん。


もちろん今読んでも役に立つ冒険術もたくさん書かれています。

でも、今読んでなにより共感できるのは、その冒険に対する姿勢。


冒険がロマンであるなら、なにも日本を脱出し、海外を放浪するばかりが

冒険ではない、ということだ。

きみがもし、ある女性が好きになったとき、なんとかして彼女から関心を

持ってもらいたいと祈るだろう。その第一歩として、どういう形でその

女性に近づくか考えるだろう。そのとききみにとっては、それは大冒険に

なるだろうし、その行動に踏み切ることが、

この本に書かれた冒険のテーマと一致するのではないのだろうか。

               

              吉村作治著「How To  大冒険」より


決して、名作とか大作ではありませんが、中学生の頃に出会ったことで、

その後の私の価値観に少なからず影響を与えている本です。

古本屋で見つけたら、手にとってみる価値がある本だと思います。

 

2009年01月23日

輝ける碧き空の下で

 



最近の自動車産業での厳しい雇用状況は、ブラジルなど南米から

「デカセギ」としてやってきている日系ブラジル人たちの職をも

奪っています。


あまりニュースになっていませんでしたが、

昨年2008年は日本からのブラジル移民100周年でした。


第一回日本移民791名を乗せた笠戸丸がブラジルに着いたのが、

明治41年のこと。

しかし移民といっても、ほとんどの人達は、ブラジルを永住する場所

とは考えていませんでした。

金のなる木コーヒー農家で何年か働くことでまとまったお金を稼ぎ、

いずれは日本に帰り、錦を飾ることを考えていました。

 

しかし、奴隷扱いのような過酷な労働、マラリア、さらに稼げるお金も

日本で聞いた金額からはほど遠く、彼らの生活は予想以上に厳しいもの

だったようです。


ノートに書いたのは、日本人移民が土地を得て、初めて大規模な農園を

開拓を始めようとしている喜びに満ちた場面。


しかし、その後、この農園はマラリアで多くの人が命を落とし、

さらに大量のバッタの来襲、霜の被害で農作物を失い、

最後にはスペイン風邪で立ち上げのリーダーは命を落としてしまいます。


厳しいなか、移民として生きてきた日本人の姿を描いているこの小説は、

旅に生きることの意味を私たちに教えてくれます。


コーヒー好きには、もうひとつ。

コーヒー豆がこんな風に作られているんだということ、それを少しだけ

知ることができます。

たくさんの人達の思いと苦労があって、美味しいコーヒーを飲むことが

できるんです。

コーヒーを飲むときに、コーヒー農園の碧い空と収穫する人々の苦労を

想像してみてください。

 


2009年02月06日

The Americans


会社から歩いて5分のところに、素敵な本屋さんが

あります。


その本屋さん「ナディッフアパート」は、

デザイン系の本を中心に、輸入物の写真集や画集、

アーティストのリトルプレスなどがセンス良く

揃えられています。


お昼休みにちょっと覗ける場所に、そんな本屋が

あるのは、なかなか嬉しいものです。


普段は本屋で手に取ることもない写真集も

そこでは自然と開いてしまいます。


ロバート・フランクの「The Americans」は、

手に取って開いた瞬間、胸にグッとくるのを

感じた写真集でした。


そう感じたのは、

その作者をどこかで聞いたことがあったり、

序文を「路上」のジャック・ケルアックが

書いていたりしたからだけではないはず。

 

1950年代のアメリカ、

市井の人の生活を写しとった写真は、まるで

その時代のアメリカを旅したような気持ちにさせてくれます。


でも、その旅は明るく楽しい旅ではなく、

そこで暮らす人達の緊張や不安、絶望を

目をそらさずに直視していくヘビーな旅。


ジュークボックスの前で所在なく佇む男。

蒸気が漂う工場で、黙々と仕事をしている男達。

車のウインドウから、厳しい目つきで何かを

眺めている母と娘らしき2人。


モノトーンで写されたノイズが入った写真は

飾らないリアルな生活や風景を切り取っているが故

に圧倒的な美しさを見せてくれます。


ここに写されたアメリカを探す旅に出たくなる、

そんな写真集です。

 
 
 

2009年02月16日

旅の詩集

 

 

30代後半より上の人には懐かしいKAPPA BOOKSの1冊。

昭和48年発行のこの本は、昔買ったものではなく、

最近古本屋で見つけたものです。


当時も今もアングラカルチャーのヒーロー、

寺山修司氏が編集した旅の詩を集めた本です。


各章ごと放浪、望郷などのテーマがつけられて、詩が集められています。

まさに旅をテーマにした珠玉のコトバたちが詰まった本。

その各章の冒頭には、寺山氏による序文がつけられています。


青森出身の氏は、少年時代にはそこを出ることを夢見て過ごしてきました。

「家出のすすめ」や「書を捨てよ、町に出よう」などの著書で、

若者たちに家を出ることを煽り、

自らを故郷を捨てた漂泊者と認めていた氏にとって

旅は、一時的な行為ではなく人生そのものであったのです。

 

また、 

古本として買ったこの本の裏表紙の見返しページに、

最初の持ち主だった方によるものと思われる日付とサインがあります。


昭和四十八年十月三十一日(水)晴

XX川 XX子(25才)


と万年筆で丁寧に書かれています。

それを見ると、計算すると今60歳になるその女性が、

当時この本を読んでどんな風に思ったのか?

そして、その後、この本が私の手に届くまでどんな旅をしてきたのか?

と、想像してしまいます。


例えば、寺山修司的に想像すると...

東京、工場のある町の小さな喫茶店でウエイトレスをしているXX子。

田舎から家出同然で飛び出してきたが、夢である女優になることを諦めて、

望郷の念を感じながら、惰性で時を過ごしている。

そんな時、常連の工場で働く青年が忘れた1冊の本を見つける。

そして、返しそびれて最後まで読んでしまう。

青年がまた喫茶店にきた時に、その本のことを思い出し話しかける。

彼もまた、小説家になることを夢見ながら工場で働いていることを知る。

そして、意気投合し、2人で共に夢を追いかけていく... なんてね。

 


2009年04月13日

Bruce Chatwin / The Songlines

 

 

雑誌などで旅本の特集になるとよくセレクトされるのが

ブルース・チャトウィンの本。

でも、そのすべての本が絶版で手に入らない状態が続いていて、

古本屋に入るたびにチェックをしていました。


そんなブルース・チャトウィンの代表作2作を

偶然ほぼ同時期に手に入れることが出来ました。

「パタゴニア」は古本屋、「ソングライン」は、

最近やっと復刊されることになり、新刊本を購入。

今回は手に入りやすい「ソングライン」の方を紹介します。


ソングラインとは、オーストラリアの先住民

アボリジニの間に古くから受け継がれてきた歌。

その歌は先祖が歩いて来た足跡を示し、

その道は彼らにとって聖地となっています。


アボリジニは、オーストラリア中

無数に張りめぐらされているソングラインを

歌をたよりに歩き、目的地までたどり着くことが

できたと言います。


この本は、ソングラインを巡る紀行文に、

ノートに断片的に書かれた旅をテーマにした考察

が挿入されるという構成になっています。


そこで作者が描くのは、「人はなぜ旅するのか」

という壮大なテーマ。

その洞察は、人類の祖先がアフリカで誕生する時

までにおよびます。


本の最後に描かれた、死を迎えるアボリジニが

落ち着いた表情で死という最後の目的地へ

向かうことを受け入れている姿は、

厳しい自然の中で生きていた人々は

人生の旅の目的地をきちんと知っていたことを

示唆します。


良質の紀行文は、旅先の情報というよりは、

旅に向き合う姿勢やモノの見方を教えてくれます。

そして、それは人が生きていくことの意味でも

あるのです。

 

 


2009年04月21日

The Art of Travel


もう10年以上前、東北で営業の仕事をしていた頃。

その頃は、まだ秋田から仙台まで高速道路が

つながってはいませんでした。

担当していた秋田から家のある仙台に帰るには、

一度横手で高速を降りて、山道を走り峠を越えて、

岩手の北上で再び高速にのらなければなりませんでした。


秋田からの帰り道、ちょうど夕食の時間にそこを

走ることが多く、峠に入ると食堂もなくなるので、

峠の手前にある「でめきん食堂」というところに

よく立ち寄りました。


そこは、トラックがとめられる大きな駐車場が

ある昔ながらの地方によくあるドライブイン。

店員やお客さんの数に不釣り合いな広い店内には

不揃いのテーブルやイス、ぼろぼろになった

スポーツ新聞やマンガ雑誌が雑然と置いてある

そんな食堂でした。


夜の8時頃、薄暗い店内でそれぞれ離れた席に座る

2、3人の客が黙々とカツ丼やしょうが焼き定食を

食べている姿は、旅の孤独を感じさせるのに十分でした。


峠の途中にあるため、周りに人が住む気配が

いっさい感じられず、

そのことも孤独な雰囲気をさらに強めていました。




「旅する哲学」は、さまざまな文学者や画家、詩人

の視点を借りて、旅で見えることの意味を語ってくれます。


私にとっては今まで考えてきた、旅の意味を明確に

分かりやすく説明してくれる本でした。

例えば、9章ある中の2章目では、画家エドワード

ホッパーと詩人ボードレールの視点から旅の意味を

教えてくれます。


エドワードホッパーは、車でアメリカ中を旅し、

そこで出会ったガソリンスタンドやモーテル、

自動販売食堂に漂う孤独な風景の中に詩情を見つけ

描いてきました。


孤独は心を空白にし、自分にとって大切な感情や

考えに接触するところまで引き返してくれると

この本に書かれています。

ホッパーの絵は旅の孤独を客観的に提示することで

そのことを教えてくれます。


もう一度ここで書かれている旅人の視点で

でめきん食堂のことを思い返してみると、

そういえば、ひとりカツ丼を食べている時間は、

うら寂しい気分ではありましたが、

そこでしみじみといろいろなことを考えている

のは嫌いではなかったことを思い出します。


今では高速道路も秋田から仙台まで繋がって

降りずに行くことができます。

でめきん食堂は、まだあるのかなあ?

 

2009年06月01日

見よ、旅人よ

 

  

 

ひとり旅には、必ず本とiPod、そして

トラベラーズノートを持っていきます。


一人っきりの宿の部屋、iPodにつないだ小さい

スピーカーから静かに流れる音楽を聴きながら

本を読んだり、ノートに何かを書いたり貼ったり

する時間はひとり旅ならではの楽しい時間の

過ごし方。


自由なひとり旅では、自分のペースで時間を過ごす

ことができるのがなによりの楽しみです。

だから、出来る限りテレビとか新聞を見たりしない。

それより、ゆっくり本を読んでいたいもの。


松本へ旅した時に読んだ本は、旅の宿から

世界中へ連れて行ってくれました。


長田弘著「見よ、旅人よ」は、詩人である著者が

1970年代にモスクワ~ワルシャワ、アメリカ、

ヨーロッパ、東南アジアなど世界を歩いた紀行文。


冷戦時代のソ連や、フランコ政権下のスペインの

重苦しい様子、独立間もないシンガポール人の

国家に対する考えなど、その時代の空気をリアルに

感じさせてくれるのは、詩人の鋭い視線と、

旅で見たことを前向きに受け入れ、伝えようとする

気持ちがあるからなのでしょうか。


ところどころに彼の旅に対する姿勢についての

記述があります。いくつか引用させて頂きます。


「分厚い地図帳をバサリと助手席に抛りこみ、

いつものようにエンジンのキーをカチリとまわす。

そんなふうになにげなくはじめる旅が好きだ。

予約する思想がきらいである。予めなにをするか

決めて身体を動かすということが、きらいだ」


「そのほうが楽だと知った道をゆくのは、わたしの

好みではない。旅から未知への緊張を引いたら何も

残りはしないという思いが、タイヤ・チェーンの

用意がないという不安を消した。」


ちなみに、楽でない道を進んだ後、雪道に車を

滑らせて進めなくなり、引き返した先で、

作者は誰も客の居ないが気持ちの良いホテルを

見付けました。


「明日は、いったいどこにわたしは泊まることに

なるのか。しかしいまは、ともかくも一杯の熱い

コーヒーがあれば、それでよかった。」


素敵な文章です。

 

2009年06月15日

Coyote 植村直己が向かった旅の先

 

 

 

雑誌Coyoteの最新号は、植村直己特集。

彼がずっと夢見、果たすことが出来なかったのが、

南極単独横断。その夢の第一歩として、

アルゼンチン南極基地へ取材に行っているのですが、

その時の日記が掲載されています。


植村直己氏がマッキンリーで消息を断ったのは、

1984年、私が15歳の時でした。

そのニュースで、この冒険家のことを詳しく知り、

その直後に「青春を山に賭けて」を読みました。


氷河をこの目で見ようと、大学卒業後にわずか

110ドルを手に世界に旅立ち、冒険を求めて、

ひょうひょうと世界各地を放浪していく。

そんな姿を描いているこの本は、旅に憧れる

多感な高校生の心を振るわせるのに充分でした。


その植村氏が、五大陸の最高峰登頂後ずっと目標

にしていたのが、南極横断でした。

南極を最後の夢と位置づけ、北極圏一万二千キロ

も北極点グリーンランド単独行も、そのための

準備でした。


Coyoteに掲載されている日記は、

南極大陸犬橇単独横断に向けて、その偵察のために

アルゼンチン軍の輸送船に同行し、実際に南極大陸

の地に足を踏み入れた時の様子を記しています。


そこに書かれている言葉は、南極に来た喜びと

冒険への決意にあふれています。

夢を追いかけて、その夢に向かって実行している

人の言葉は、熱く勇気を与えてくれます。


「生まれて初めてみる南極大陸だ。

いま俺はやってきた、遂にやってきた。

神は私に南極の道を開けてくれたのだ。<中略>

マッキンリー登頂以来、この南極に賭けてきたのだ。

何一つ疑う心なくして。」


「わずか一ヶ月たらずの南極旅であったが、

今終わらんとしている。今回の南極偵察で

私の進めている南極横断が可能であるということを

この体で肌で感じとった。」


紙面いっぱいに細かい文字で丁寧に書かれている

日記の写真を見ることが出来ます。

単独行にこだわった植村氏にとって、日記や手紙

を書くことは、自分、そして見えない他者と向き合う

大事な時間だったのだと思います。



植村直己氏の特集とあわせて、今回のCoyoteには

トラベラーズノートが掲載されています。

作家、謝孝浩氏が旅でノートを書くことについて

語っていますが、そこに実際に氏によって実際に

トラベラーズノートに描かれた内容の写真も

載っています。こちらも、もちろん要チェック!

 


2009年06月30日

場所はいつも旅先だった。


一人旅の醍醐味は、人との出会いのきっかけが

多いことだと思います。

例えば、ずっと前の話ですが、北海道を一人

バイクでツーリングしていた時のこと...


富良野で泊まったのは、丘のふもとにある

レストランが経営する小さなゲストハウスでした。

レストランの2階のロフトのような場所に、

一人ずつ寝るスペースが仕切られただけの安い宿です。


夕食をとるため、2階からレストランに降りると、

その日一人で泊まるのは、私ともう一人だけだった

ため、一つのテーブルで相席となりました。


失礼しますと声をかけてきたのは、同じ年頃の女性。

一人旅の食事の時間が一気に楽しいものになりました。


食事が終わりかけた頃、店主が近くに温泉がある

ことを教えてくれました。話の流れで、一緒に

行こうということになりました。


私はバイクで、その女性は車で旅をしていたので

必然的に彼女の車の助手席に乗せてもらいました。


釧路で小学校の先生をしているということを

少し照れながら教えてくれました。先生という

のは、なかなか気が抜けない仕事なんですよ、

なんてことを話しながら、ドライブを楽しみました。


富良野の来る多くの旅人がそうであるように

どちらも「北の国から」のファン。

温泉の帰りには、新富良野プリンスホテル内の

ニングルテラスに行きました。

夜はライトアップされたログハウスが点在する

とてもお洒落な場所です。

(竹下景子演じる雪子おばさんが働いていた

ローソク屋さんがある場所ですね)


一人旅の途中、思いがけず訪れた楽しいひととき

は、旅をとても印象深いものにしてくれました。


 

 

こんな風に文章を書きたいな。

この本を読んで最初に思ったのはそんなことでした。


Cow Books代表で、暮しの手帖の編集長の

松浦弥太郎氏による旅をテーマにした文章を

集めた本です。


この本のなかでの著者は、軽快に淡々と

自由な旅をすることで、様々な出会いを

オープンに受け入れてきます。

旅先で素敵なカフェや本屋さんを見つけたら

まるで近所の行きつけの店のように通ってしまう。

そこでスタッフと交わされるさり気ない触れ合いや

会話を大切にすることで、旅と人生の奥行きが

広がっていくことを教えてくれます。


旅先での人との出会いを大切にしながら、

ひとりぼっちの孤独も尊重する。

素敵な女性、気持ちの通じ合える友人、

尊敬できる人生の先輩達との触れ合い。

そして、ひとり自分と向かい合う時間。

それぞれが良いバランスで、旅を彩っていく。

そんな旅/人生が理想であるのは、誰にとっても

同じだと思います。


18歳の時に、一人でアメリカに旅立って以来、

彼の旅のスタイルは、そこで暮らすように過ごす

ことなのかもしれません。


彼の文章も旅のスタイルと同じように軽快で

オープン。日曜日の午後、オープンカフェで

カフェオレを飲みながら、足を思いっきり

投げ出して読むのにうってつけの本です。


ちなみに冒頭の話、その後何事もなく別れました。

そんな一瞬のときめきもまた、一人旅ならではの楽しみ。

最近はそんなこともなくなりましたが...

 

 

2009年07月15日

Mix Tape : the art of cassette culture

 

 

 

毎年、ISOT(国際文具・紙製品展)とあわせて

東京国際ブックフェアが開催されます。

期間中はISOTの会場を抜けて、このブックフェア

を覗きに行くのも楽しみ。


この展示会は、出版業界のためのものなのですが、

出版社の各ブースでは本が20%オフで販売されて

いたりします。

さらに、洋書の特設ブースがあって、そこでは

傷モノの写真集などが結構安く売られています。


今年も荷物になるにも関わらず、重い写真集など

を購入してきました。


その中の1冊、

Mix Tape : The Art of Cassette Cultureは、

いろいろな人のオリジナルのミックステープを

紹介している本。


自分の好きな曲を録音したカセットテープ。

そのインデックスシートに雑誌から切り抜いた

写真を貼ったり、レタリングシールで文字を

貼付けたり・・・。

カセットテープを使っていた世代は、そんな

ことをした記憶があると思います。

私はけっこう好きでした。

 

好きな曲をたくさん詰め込んだテープを

付き合ってた女の子にプレゼントしたり。 

自分のバンドのオリジナル曲を入れたテープ

なんて歌詞まで手書きでびっしり書き込んだり

して、友達に配ったり。

今思うとちょっと恥ずかしいですが・・・ 

 

この本はそんな他人のミックステープを

覗き見る楽しさがあります。


今だと、デジタルファイルにしてメールで

転送とかで簡単に出来ちゃうんだけど、

それはそれで便利なのですが、

ちょっとつまらないような気がします

 
 
 

2009年07月21日

BOOKS & CO.

 

 

 

ニューヨークにあった小さな書店、

Books & Company(本と仲間たち)の物語。

本を愛して止まないオーナーとその想いに共感し

集まって来たスタッフ、そして、そんなお店を

愛するお客さんや作家達との交流を綴っています。


本が好きなだけの素人の女性が、本とそれに

かかわる人々への想いだけを頼りに本屋を作り

上げていく。そして、多くの人々から愛される

お店にしていく。その過程は、これから何かを

初めようとしている人達には、とても勇気を

与えてくれます。


90年代に入り、大手ブックチェーン店の台頭や、

店舗賃料の高騰などによって、20年の歴史に

幕を閉じてしまいます。しかし、その時に

ウディ・アレンから発せられたメッセージが、

この書店が人々にとって、とても大切な存在

であったことを伝えてくれます。


私は、ブックスアンドカンパニーのような本屋

さんで本を買いたいです。


仕事柄もあるのかもしれないけど、お店を見て

歩くのはとても好き。そんななかで、自分の

感性にぐっとくるお店を見つけたときは、本当

に胸がワクワクし、嬉しくなります。


どんなお店にぐっと来るかと考えると、

その全体をまとめる強い世界観とあわせて

売り手の想いと作り手の想いが伝わってくる

ようなお店です。


大抵のそんなお店は大手チェーンよりも、

独立系の店舗だったり、個人やチームの個性が

色濃く出た店舗のことが多いです。

その魅力は、資本力に基づいた計算された

マーケティング力や巨大な販売力による仕入れ

パワーなど簡単に飛び越えてしまうのです。


例えば、文具業界で言うと、店舗の立地が

まったく販売力に影響を及ぼさないネット通販

で成功しているお店の多くが、地方の独立系の

お店であることも、同じ理由だと思います。


昨今の不況によって、価格訴求力が求められる

割合が高くなると、必然的に販売ボリュームが

大きい大手チェーン店のシェアが高くなっていく

傾向があります。


もちろん価格訴求力やさまざまな利便性は、

小売業にとってとても大切な要素であるし、

わくわくさせてくれるチェーン店もたくさん

あります。


こんな時だからこそ、私はきちんと想いを表現し、

こちらの感性を揺さぶり、文化的な発信をしている

お店で買うようにしていきたいと思います。

すべての商品は無理でも、長く大切に使いたい

感性を刺激する商品は、好きと言えるお店で

購入していくようにします。


だって、いつまでもお店は私たちをわくわく

させる場所であってほしいですよね?

 

2009年08月03日

Cloud Collector

 

小さい頃は大抵の人がそうだと思いますが、

私も想像の世界に浸るのが好きな少年でした。


友達と近所の街を自転車に乗って走り回る時も、

頭の中は宇宙空間や、ジャングルを走っている

気分で疾走していました。


さらにそうやって見付けた秘密の場所は秘密基地

として、冒険の拠点になりました。

当時の東京の下町は、在木置き場や放置されて

雑草に覆われた空き地が多く、子供達の隠れ家に

なるような場所を見付けることは、それほど

難しくありませんでした。


図工が得意だった私は、仲間のメンバーカードや

バッジなどを作ったり、架空の国の地図を描いたり

しながら、その空想の世界の遊びに色を添えていました。


当時の私は、この空想の国作り遊びにどんどん

はまっていき、地図だけでなく、お金や国旗、

さらに国歌まで作ったりしました。

 

 

 

この本はブログを読んでくれている友人から紹介

していただきました。

クラフト・エヴィング商会三代目である語り手が

先代の祖父の古い手帳を見つけるところから話が

始まります。

その手帳には、「アゾット」という不思議な国を

旅した旅行記が書かれていました。

謎にあふれたアゾットへの旅の記録を、三代目

が読み解いていくことで、話が進んでいきます。


「ガリバー旅行記」や「銀河鉄道の夜」のように、

その旅先で起こる幻想的で不思議な現象は、

さまざまな示唆に富んだメッセージに満ちています。


ところどころに挿入されているアゾットのお酒の

ラベルやタロットカードを描いた挿絵。

さらに手帳からの引用と語り手の文章の刷色を

変えていたりする装丁。

摩訶不思議な空想の世界をリアルに作り込んでいく

ことで、独特の世界観が生まれています。


夏の夜、この本とともに、不思議な世界への旅に

行ってみてはいかがでしょうか?


そう言えば、トラベラーズエアーのスノードーム、

さらにはチケットケースやらタグなどを作ったり、

世界各地のトラベラーズカフェのステッカーを

作ったりするのは、昔やった空想の国作り遊びと

同じようなことですね。

やっぱり、好きなんですよね。

 

2009年09月07日

百年の孤独 G・ガルシア・マルケス

 

 


冒頭のシーン。

年代は明らかにされていませんが、きっと200年

くらい前、南米の奥地に静かに佇む村マコンド。

開拓されたばかりの小さな村に、毎年3月になると

ジプシーの一団がやってきます。


彼らは村のはずれにテントを建てると、

笛や太鼓をにぎやかに鳴らし、持ち込んできた

珍しい物を村人たちに見せてお金をとる。

初めて見る磁石、望遠鏡、氷。

ジプシーは、それらで摩訶不思議な演出をし、

村人達は、驚き魅せられていく。

そして、村の代表的な人物はそれらに取り憑かれ

高いお金を支払って手に入れ、家の中で妖しい

実験を繰り広げていく。

そんな過程が緻密な描写とともに綴られています。


ここで、私は幻想的で混沌とした不思議な村

マコンドに迷い込んだ旅人のような気分になり、

同時にその世界観に引き込まれてしまいました。


この感じは、インドのヒンドゥー教聖地、

バラナシを歩いた時の記憶を思い出させてくれます。


入り組んだ迷路のような狭い路地。

道の真ん中で、人々の通行の邪魔をする牛。

スパイスや穀物を売る店から漂う匂い。

生地屋に並ぶサリー用の派手な色の生地。

笛や太鼓を鳴らしながら売り歩く人。

大きなヴォリュームで流れるインド映画音楽。

さまざまな場所から手を差し伸べる物乞い。

白く顔を塗ったヒンドゥー教の修行僧サドゥー。


歩いた瞬間、その妖しく混沌とした街の

圧倒的な迫力にすっかり魅せられました。

今までの自分の日常とはかけ離れた幻想的で

非現実的な世界を目の当たりにしたような

気分になりました。


でも、それは紛れもなく現実の世界なのです。

そこには、たくさんの人々が生き、私たちと

同じように日々悩んだり、喜んだり、悲しんだり

しながら毎日の生活を送っている。

ずっと昔から、そして、これからも。


「百年の孤独」は、マコンドという物語上の村に

生きたブエンディア家の盛衰を百年にわたって

描かれた小説です。

非現実的で神話のような奇怪なエピソードととも

伝えられる一族の放蕩と混乱の日々。

エキゾチックで情熱的な南米のイメージもあって、

ファンタジックなストーリーが不思議とリアリティ

を持って迫ってきます。


この物語のなかで、生まれ、そして死んでいった

ブエンディア家の人々。彼らと同じように、

私たちもまた、日々悩み、喜び、悲しんでいる。

世界中に住む68億の人々と同じように。


なんだか、そんな壮大なことに気付かされてくれる

不思議な魅力に満ちた本です。

 

2009年09月25日

1Q84

 

 

 

村上春樹氏の小説を初めて読んだのは大学生の頃。

当時、ノルウェイの森が大ベストセラーで、

正直言うと、そのあまりの人気と、おしゃれな

イメージに食わず嫌いをしていました。

しかし、大学のゼミでその小説をテーマに

ディベートをすることになって、読み始めると

とても面白く、それまで書かれた小説をすべて

読み終わるまでそれほど時間がかかりませんでした。


初期の作品に漂う空虚で乾いたライフスタイル、

クールに悲劇や不条理に立ち向かい、それを

受け入れていく姿は、そこに暗示された意味を

理解していなくても、ただ単純に物語として

面白く読むことができました。


しかし、彼が僕たちの世代に教えてくれたのは、

アルデンテに茹でたスパゲティの美味しさや、

ビル・エヴァンスのワルツ・フォー・デビイが

月夜に似合うことだけでなく、

物事の表面的な見え方を疑い、自らの価値観を

形成していくことの大切さでした。

(もちろんアルデンテもビル・エヴァンスも

大切なことですが... )


ちなみに、ビートルズのノルウェーの森ですが、

中学時代、Nowhere Man(ひとりぼっちのあいつ)

の方をノルウェーの森だと思っていました。

どちらの曲も、ラバーソウルに入っているのですが、

Nowhere Man, don't worryというフレーズが

ノルウェーのも~り~って聴こえるんですよね。


今更ですが、1Q84です。

なんとなく発売してすぐに手に取る気にはならず、

手元にある未読の本を片付けてから読もうと

思っていたのですが、未読の本は増えるばかりで

いっこうに片付きません。

ブックオフでBOOK1を見付けたのを機に、

いっきに読んでしまいました。


もちろん、とても面白く読むことができました。

権力、宗教や世の中の風評、さらに自らの弱さなど

知らず知らずに僕達を束縛しようとしている

様々な事に立ち向かっていく宣言のような小説です。


私達は自由を求めていくと、それを妨げるものと

対峙したとき、新たな不自由に縛られてしまう。

その時に、不自由を受け入れてでも、自ら求める

自由を選んでいく強い意志を持つこと。


きっと読む人によってこの小説から感じ取れる

メッセージは違うのだと思いますが、私は

そんなメッセージを感じました。

 

 


2009年10月22日

暮らしのヒント

 

 

 

 

トルコのサフランブルという小さな街を訪れた時。

ぶらぶらと一人で歩いていると、ふと出会った

少年が手招きするので、付いて行きました。

すると着いた場所は、街が一望出来る

見晴らしのよい丘。きっとその場所を見せたくて

連れて来てくれたのです。

さらに翌日は、小さな女の子が

観光客に解放している旧家を案内してくれました。

短い滞在中に、2度もそんなことがあったので、

きっと偶然というより、この街には子供たちが

旅人を自分が好きな場所に案内するという習慣が

あるのだと思います。

旅に出ると、この時のように旅人の心を

和ませてくれる素敵な習慣に出会うことがあります。

 

例えば、タイでお店に入るとスタッフの方が

ちょっと控えめな感じの笑顔を見せながら

手をあわせて「サワディーカー(こんにちは)」

と言ってくれるのも気持ちのよい習慣です。

 

山ですれ違う時に知らない人同士でも挨拶をしたり、

北海道では、バイクですれ違う旅人同士が、

ピースサインをしたりするのも素敵な習慣。

 

旅先でそんな習慣に出合い、快い気分になると、

自分やまわりの人達を気持ちよくするようなことを

意識して生活したいと思ったりします。

しかし日々の忙しい生活の中で、そんなことも

すっかり忘れ、思い返すこともなくなってしまいます。

 

 

この「暮らしのヒント集」は、日々の生活を

豊かで気持ちよいものにしてくれるアイデアが

箇条書きでたくさん綴られている本です。

 

「きちんと作られたものを大切にする暮らし

をしましょう。衣食住すべてに言えることです。」

 

「昨日会った人に手紙を書いてみましょう。

言葉は少なくても、次に会ったときに誰よりも

親しくなれるはずです。」

 

「星を見ることを忘れてはいけません。

寝る前のほんのひとときでも、星を

見つめていると心がやすらぎます。」

 

決して新しいびっくりするようなヒントではなく

昔誰かに聞いたり、本で読んだことがあるような、

もしかしたら当たり前のことかもしれないことが

綴られています。

 

でも、最初に書いた旅先で出会った素敵な習慣も、

旅人を喜ばせる、笑顔で人と接する、

人とすれ違ったら挨拶をするなど、

実に当たり前でシンプルな気持ちから

はじまっている習慣だということに気付きます。

そんな事をあらためて教えてくれる本です。

 

普通に読むと1~2時間で読み終わってしまう

のですが、そのあと少しずつ何度も読み返して

みたくなるような本です。

この中のヒントを、ゆっくりとひとつずつ

毎日の生活に丁寧に取り入れ、習慣にすることで、

きっと人生がより豊かなものになるはずです。

 

最後に私が、一番ぐっときたフレーズを。

「腹をくくれば、たいていの物事は動きます。

腹をくくるとは、勇気で支えた強い決意です。」 

 

2009年11月09日

たましいの場所

 

 

 

よくよく考えてみると、子供の頃から本気で何かに

なりたいと思ったことがないのかもしれません。

幼少時はパイロットになりたいと言っていたけど、

それは本気でそう思っていたのではなく、

何かそういうものを用意しておかないと、

大人に聞かれた時に面倒だから、そういうことに

しておいたような気がします。


思春期になって、なんとなく文章や絵で

何かを表現するような仕事ができればなんて

考えていたけれど、ちゃんと作品を作っていたり

そのための勉強をなにもしていなかったので、

本気ではなかったのだと思います。

学生時代に仲間とバンドをやるようになり、

曲を作ったり、演奏したりすることで表現を

することの楽しさを知りましたが、

歌も楽器もあまり上手くない方だったので、

最初からプロになんてなれないと考えていました。


そして、会社に入って仕事を始めましたが、

いつもどこかで何かを表現するようなことが

したいと思っていたような気がします。



「たましいの場所」の著者早川義夫氏は、

元ジャックスのボーカリスト。

18歳から21歳までミュージシャンとして

活動をしていましたが、突然音楽業界から退き

本屋さんを開きます。

24年間普通の本屋さんとして、音楽とは離れた

暮らしをした後、45歳に再び歌手を始めます。

この本は著者が再び歌を作り、人前で歌い始めた時

のことを中心に書かれた日記のようなエッセー。


「恋をしたいから恋をするのではない。

写真を撮りたいから写真を撮るのではない。

写したいものがあるから撮るのだ。

写したいという気持ちを撮るのだ。

歌いたいから歌うのではない。

歌いたいことがあるのから歌うのだ。

自分を歌うのだ。」

こんな風に再び歌い始めたときの心情を

綴っています。


体の中から湧いて出てくる事、

言葉だけではうまく表現できないほんとうの事、

自分のなかの不完全で欠けている事。

そんな歌う事を見つけて、いざ人前歌う時

うまく歌えるかどうか不安で震えて

逃げ出したくなる。

そして、技術とか才能、上手い下手ではなく、

その人の本質から生まれた美しいものが感動を

与える事ができるんだと納得して、やり遂げる。

不安に揺れ動きながらも純粋に表現をすることに

向かう彼の姿勢は、そのまま生きていく姿勢

としても読み取ることができます。


彼が指圧師のマッサージに感動した時、

その訳を考えてこう書いています。

「先生は僕の足を踏みながら、

歌を歌っていたのかもしれない。

芸術は感動するものである。

感動しないものは芸術ではない。

それは、音楽も、仕事も、人間も、恋愛も、

何でもそうだ。人を感動させて、

はじめてそのものになれるのだ。

感動しないものは、なにものでもない。」


歌うように書かれた文章の中には、

心に響いて感動する歌が溢れています。


きっとどんな仕事や生活をしていても、

表現をすることで人に感動を与えることが

できるのだと思います。

でも、それは自分の本質の中を飾らずに

さらけ出すことでしか出来ないことを

この本は教えてくれます。

 

2009年11月10日

写真集が教えてくれること


 

 

香港に行った時に買った写真集がなかなか

良い感じなのです。正直ちょっと高かったので

買おうかどうか悩んだのですが...


旅先では、多少無理しても悩んだら買った方が

良いのかもしれないですね。買って後悔するより、

買わなくて後悔する方が多いような気がします。

その分くだらないものも買ったりするのですが、

それはそれで旅の思い出になったりします。


で、その香港の写真集。

香港の日常の風景でよく見かける街に佇む人、

古いビル、郵便ポストなどページごとにテーマが

設けられて、ページいっぱいにその写真が

並んでいるという構成になっています。

それだけでどこにでもある古ぼけた風景が

新鮮に見えてくるのです。

 

 

(写真集 MY HK / Douglas Young )

 

長い歴史のなかで受け継がれてきた、

市井の人々の飾らないリアルな生活から

切り取られた風景だからこそ愛おしく美しい。

そんなことにあらためて気付かせてくれます。


優れた写真集は何気ない風景から美しさを

見つけ出す視点を教えてくれます。


どこか旅に出ている時やめずらしいものに

出会った時には、よく写真を撮ったりしますが、

自宅の周りや通勤途中など日常の風景は

わざわざ写真を撮ろうと思いません。

でもこの写真集を見たことで、日常の風景の中に

ある美しさを残しておきたいと思いました。

例えば10年、20年経って自分が見たいと思うのは

そんな写真かもしれないですね。


休日にいつも行く銭湯をテーマに切り取ってみました。

なんでもない銭湯が愛おしく見えてきませんか? 

 

 

 

 

 

 

2009年11月18日

モーテル・クロニクルズ

 

 

 

自分自身の古い記憶をたどっていく行為は、

ひとり旅の時によくしてしまうことのひとつ。


例えば、夜の東北道をひとり車で移動中。

安っぽいドライブインで簡単に夕食を済ませ、

空いている高速道路を走っている。

ずっと流していた音楽が途切れ、なんとなく

聴くことに疲れたので、そのまま無音の状態で

走り続けることにする。

 

車のエンジン音を聞きながら、

高速道路の両脇に光るオレンジ色の道路灯が

連続して流れていくのを眺める。

そんな時、ふと頭に浮かんでくるのは過去の

古い記憶だったりします。

少年時代の記憶、学校からの通学路の風景、

大切なオモチャをなくしてしまったこと、

友達と喧嘩してしまった時のくだらない理由、

さらに記憶は、思春期から学生時代、

仕事を始めた時へと断片的に繋がっていく。

もう何年も会っていない友人との会話、

傷付けてしまった言葉や傷付けられた言葉、

あいまいな夢や小さな絶望...


「モーテル・クロニクルズ」は、アメリカの

俳優兼劇作家であるサム・シェパードによる

自叙伝のような散文と詩によって編まれている本。


最も好きな映画のひとつ「パリ・テキサス」は、

ヴィム・ヴェンダース監督がこの本を読んで

映画の着想を得て、サム・シェパードに脚本を

依頼することから生まれました。


無造作にばらまかれた記憶の断片のような文章は

まるでロードムービーのワンシーンのような映像

を読者の頭の中に浮かび上がらせてくれます。


モーテルの一室で知らず眠ってしまった時の夢。

初めて学校を抜け出し、有刺鉄線を飛び越えて

未知の世界へ向かったこと。