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小さな本屋を開業したことを綴った本

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ウィークデイのある日、
18時を少し過ぎたところで、仕事が一息ついた。
今日はみんなテレワークだったり、
出かけていたりして、オフィスには僕ひとり。
いつもより少し早いけど、オフィスの鍵を閉めて
帰ろうかなと思っていると、ふと買いたい本が
1冊あったのを思い出した。

盛岡にある本屋、BOOK NERDの店主が本を
出版したことをフォローしていたインスタで知り、
買おうと思っていたのだ。
インスタを再度チェックしてみると、
その本を扱っている本屋が掲載されている。
その中でSUNNY BOY BOOKSという店が
ここから2キロほどの距離で一番近い。
電車に乗れば一駅分だけど、あえて歩いて
行くことにした。
グーグルマップの指示通り歩いていくと、
賑やかな繁華街を抜けて、閑静な住宅街に
向かって行った。
こっちでいいのかなと少し不安になりながら
歩いていると、薄暗い夜の住宅街の中で
ぼんやりとやさしいオレンジ色の明かりを灯す
小さな建物を見つけた。
僕は砂漠でオアシスを見つけたような気分になり
思わずにんまりして、店の中へ入った。

狭い店内には、古書に新刊、Zineが分け隔てなく
ぎっしり並んでいる。
本の背表紙を追いながら棚を眺めていると
心に引っかかるような本がいくつも見つかった。
客は他に誰もいない。
店内のBGMでは、女性シンガーがアコースティック
楽器での演奏をバックに、英語でも日本語でもない
言葉で、静かだけどじんわりと心に染み入る歌を
唄っている。
目にとまった本を手にとり、ぱらぱらめくっていると
心が落ち着き清々しい気分になっていった。
狭い店内で30分ほどゆっくり本を眺めて過ごすと、
お目当ての本『ぼくにはこれしかなかった』と、
アメリカのホーボーについて書かれた本をレジに
持っていき、名残惜しい気持ちで店を出た。
夜の少し冷たい風を浴びながら、
住宅街の人通りの少ない道を歩いていると、
まるでお風呂上がりのように
心がぽかぽかと温まっているのを感じた。

『ぼくにはこれしかなかった』は、
BOOK NERDの店主、早川大輔氏氏が
サラリーマン時代を経て、BOOK NERDを開店、
そんな中での挫折や苦悩、仕事の喜びを体験談を
交えながら丁寧に綴っている。
自分がほんとうに好きなものを人に届けることを
生業としたいと盛岡で本屋を開業することを決め、
さらにそれを生業として成立させようと奮闘する姿に
共感と憧れを感じながら一気に読み進めた。

BOOK NERDを最初に知ったのは、
3年前にトラベラーズファクトリーとして
出店したイベント アルプスブックキャンプだった。
会場内を歩いていると、ふとずっと探していた
ブローティガンの『東京モンタナ急行』を見つけ、
思わず手に入れたのが、盛岡から出店していた
BOOK NERDのブースだった。
さらにその年の夏にたまたま旅先として盛岡を訪れる
ことになり、その実店舗にも立ち寄ることができた。

『ぼくにはこれしかなかった』には、
オープンして1年が経過したあの頃の店の実情や、
その時店主と話をして聞いていたアメリカでの本の
買い付けの旅の詳細も書かれている。
それらを興味深く読みながら、BOOK NERDの
本の品揃えやレコードプレイヤーから流れるBGM、
その空間の空気感を思い出した。
また盛岡を旅して、BOOK NERDで本を手に入れ、
街に数多ある喫茶店に立ち寄り、深煎りのコーヒー
でも飲みながらゆっくり本を読んでみたいな。

『ぼくにはこれしかなかった』を読んだ後は、
ふと思い出し『本屋、はじめました』という本を
読んでみた。
こちらは、荻窪の本屋 titleの店主、辻山 良雄氏が
やはりサラリーマンを経て独立し、Titleをオープン
させるまでを綴った本。

Titleは昨年の夏、西荻の宿に泊まった時に
訪ねている。こちらはBOOK NERDと違って
古書ではなく新刊本を中心にしている。
狭い店内に週刊誌なども揃えた幅広い品揃えながら、
だからと言って薄味ではなく、思わず手に取って
しまいたくなるような未知の本の発見も多く、
端から端までじっくり棚を眺めてしまったのを
覚えている。
その後フォローするようになったtwitterでは
毎日丁寧に本を紹介していて、本のガイドとして
活用させてもらっている。

辻山氏は本好きが高じて大手書店のリブロに入社、
その後、九州、広島、名古屋、と全国の店舗で
店長などを経験しながら、池袋本店の閉店とともに
自ら退社し、Titleを立ち上げている。
『本屋、はじめました』では、その時のことが
丁寧かつ分かりやすく綴られている。
例えばいろいろ検討した上で導入を決めたレジの
システムが、トラベラーズファクトリーで使用して
ものと同じだということを発見できたりして、
リアルな共感とともに読ませてもらった。
巻末に事業計画書に初年度のPLまで掲載されていて
同じ店舗運営に関わるものとして勉強にもなる。

膨大な量の出版物が世の中にあり、
今も日々数多くの本が出版されている。
その中でどの本を選び、どんな風に店頭に置くか
ということで、書店には自然とその中にひとつの
世界観が生まれる。
一冊の本が持つ佇まいが、
その周りの本と共鳴しながら空気感を作り出し、
そこから世界と対峙していく心構えや、
生きていくための救いとなるようなメッセージ、
心を高揚させる物語の奥行きを感じさせてくれる。
僕はそんな本屋という場所が好きだ。

2冊の本を読むと、
店主はそれぞれの本屋を運営するために
パーソナルな自分自身の経験や感性を指針とし、
真摯に愛情をたっぷり込めて本に向き合っている
のが分かる。
だからこそ本屋それ自体に個性や人格のような
ものが生まれ、僕らはその場所から友人のような
温かさや親しみを感じる。

本を探すにはアマゾンは便利だけど、
僕はできる限り、そういったことを感じさせて
くれるリアルな書店で本を買うようにしている。

本を愛して、それゆえに本を紹介し売ることを
生業として選んだ方々による2冊の本を読んで、
より一層そう思った。

今年もゴールデンウィークは旅には出られないし、
自転車で本屋巡りでもしてみようかな。


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コメント (2)

136(いちさんろく):

本屋頑張れ!

Amazonプライムのcmに
Clip Number / クリップ ナンバーが使われてますね。

あの頃に戻れたらいいですね。

iijima:

136さん、ありがとうございます。
本屋はやっぱりなくなってほしくないお店のひとつ。なるべく本屋で本を買うようにしたいですね!
AmazonプライムのcmにClip Number / クリップ ナンバーが使われているんですね。知りませんでした。情報ありがとうございます!

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(株)デザインフィルでトラベラーズノートの企画を担当している飯島です。